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「音の向こうの空」第二十八話⑥

第二十八話:牢獄の天使



監獄内に入るとリエンコはまるで知っているかのようにズレンの前を歩いた。中庭、礼拝堂、牢番は怪訝な顔をしたが、ズレンが「司法大臣が新しく雇った外国人傭兵だそうだ、怖い男らしいから怒らせるな」と耳打ちすれば、慌てて姿勢を正した。

扉を開けば、夕日が最後の赤をめいっぱい室内に注ぎ込んでいた。
その影、寝台の上でオリビエは丸くなっていた。
寝台の脇に小さなテーブルがあり、乗せられたトレーにはスープとパンが残されている。
ズレンが眩しさに立ち止まっている間に、リエンコがオリビエに駆け寄っていた。
その素早さにズレンは男に対する警戒心を呼び起こされる。

「あれ、どうしたの」
オリビエが間の抜けた声を上げ起き上がるとリエンコの緊張は一気に解け、それを見るズレンも深く息を吐く。
リエンコはオリビエの肩に手を置き、顔を覗き込み、それから食事をしていないとまるで母親のように注意した。
「…あんたは、なんなんだ」
ズレンが呆れた声を上げても、リエンコは聞き流す。
先ほどズレンと向き合っていたあの緊張感は消えうせ、ああ、今ならリエンコがオリビエの従者だといわれれば頷ける。

ふとオリビエと視線が合い。そういえば、こいつに腹を立てていたのだと今更思い出した。
それを察するのか。オリビエは視線をそらした。
「ズレン、あの」
「俺を信じなかった、というわけか」
オリビエは膝を抱え縮こまった。

それを見てリエンコは非難めいた表情でズレンを振り返るが、ズレンは立ったまま腕を組んで見下ろしていた。
「俺がお前を助けようと奔走している間に、お前は俺を疑った。馬鹿な取引をエリーとしたんだろう?」
「馬鹿じゃない」
「死ぬことがどういうことか、能天気なお前には分かってないんだ。格好つけて町を救った英雄のつもりか?みっともなくとも生き抜いて欲しいと、願う人間がどれほどいるのか、お前はちっとも分かっていない」
「ズレン…」
「もともと、お前はそういう性格じゃないはずだろう。そんな勇気は要らなかったんだ。音楽を続けるためなら、名誉も恋愛も、人生をも捧げるんじゃなかったのか!」
オリビエはゆっくり立ち上がる。

「あの、ごめん。僕は、どうかしてるんだよ。僕はやっぱり政治の裏側とか、取引とか苦手なんだ、よく分からなくなった。だから。僕が選べる最良のことを……」
飛び掛ったズレンを、リエンコは止めなかった。
襟元をつかまれオリビエは壁を背に押し付けられた。

「ふざけるな!何を犠牲にしても生き延びて欲しいと、俺が願ったことが間違いだとでも言うのか!」
街を犠牲にしてでも生きろと。ズレンのそれに胸が詰まった。

「だけど…侯爵様は、死んでしまったんだ。侯爵様は、エスファンテを護ろうとして、自ら死を選んだんだ!僕がそれを、その気持ちを無駄になんか、できるわけない!」

つかみ合ったままの二人を、まるで包むようにリエンコが抱きしめた。
「もう、いいです。二人とも。手を離してください。私が助け出します。それこそ、何を犠牲にしてもね」
低く囁くリエンコの口調は、妙な迫力がある。
涙をこぼしていたオリビエは慌てて拭い、ズレンは派手にため息をついて肩の力を抜いた。

「……確かに、オリビエ。俺は、リエンコのように全てを投げ出そうとは、考えなかった。お前や侯爵様のために自分を犠牲にするつもりなど、悪い。今もないんだ」
オリビエは黙って首を横に振った。
「僕も、ズレンのこと信じきれなかった。立場を悪くしたかもしれないね。ごめん」
「お前、馬鹿か。お人よしが。俺は、結局自分のために行動していたんだぞ」
「それでも、助けようとしてくれたんだろ。僕に、生きていて欲しいと想ってくれた」
「……馬鹿」
ズレンの瞳に涙が浮かんでいた。珍しいそれをオリビエは笑ってみていた。
「リエンコも、僕のために危険なことは」
「その話は終わっています。私は好きなように行動します」
リエンコはにっこりと笑い圧倒的な態度で遮ると、「いずれ誘拐しますから、その時には素直に私のいうことを聞いてください」とオリビエの手をぎゅっと握り締めた。

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