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『La croisade de l'ange 1:Reims』 ⑦

『Reims ‐ランス‐』



ランス大司教座、ノートルダム大聖堂。
十九の司教領と六つの地方貴族の領地からなる大司教座は、このフランク王国北部で最も力のある聖職者が治める土地。その大聖堂に、シャルルたちはいた。
夕刻が近づく。窓からは外陣の尖った屋根が見える。規則正しく並ぶ先に月が小さく光っている。
下を見ても突き出した彫像のおっぱいが見えるだけでとても降りられそうにない。
敷地の向こう、司教たちを乗せてきた馬車だろう、厩舎の前にずらりと並べられている。夜になれば聖堂参事会が開かれる。そのあと、きっと、何か。

シャルルはくるりと振り返る。
ロイはベッドにうつぶせに寝転んでこちらを見ていた。
「無理だと言っただろ。のぞいてみたけど、高すぎてくらくらした」
「ちょっと待ってろ。絶対に、何とかする」
返事など聞かない。
シャルルは扉をガンガン蹴って兵を呼び、「修道院に用事がある」と兵を押しのけるように飛び出していった。
衛兵は呆れた顔でシャルルを見送ると、室内にロイが残っていることを確かめて、扉を閉めた。ロイは毛布を抱えたまま閂の冷たい音を聞いていた。


シャルルは修道院に駆け戻ると真っ先にアンのもとへ。厨房は丁度夕食の準備で数人の使用人が忙しそうに動き回っていた。ジャガイモのスープの匂いを横切って、シャルルはかまどの前のアンの背中をたたいた。
「!!シャルル!あんたどこに行っていたのよ!」
大声に思わず目を閉じた。が、次に見上げたアンは満面の笑みを浮かべている。
「?あの、あのさ、服……」
「いらっしゃい、院長様があんたに用事があるって」
聞き返す間もなく強引に引っ張られ、院長の部屋へ。
「ま、待って、あの、ちょっと!」
「アデレッタ様、シャルルが戻ってきましたよ」
アンの声に慌てて立ち上がる派手な音で返事をし、「アン!逃げられないようにしっかり捕まえておきなさい!」と叫びながら、院長が扉を開いた。
怒鳴るから怒っているのかと思えば、違う。
気持ち悪いくらいにこにこと院長は笑った。
「待っていたのよ、シャルルー」
薄気味悪い院長の態度。
「あの、僕、用事が」
「いいから、いいから。貴方は何も言わなくていいの」

嫌な予感も、それどころじゃないんだけど、というシャルルの真剣な気持ちも、二人には全く通じない。
アンは何を言っても放してくれないし、院長はにこにこしながら奥の部屋から何やら大事そうに抱えてきた。
それがシャルルの目の前にふわりと広げられたのだ。
白い、衣装。

ふわふわとした小さなドレスは、シャルルの視界を妨げる。眼前のそれは見たこともないくらい薄い布地でよくよく見るときれいな刺繍がされている。ゆるく絞った袖、背中が妙にあいている気もするし、ギュッと閉めるようになっている窮屈そうな腰のリボンが大きい。
たぶん。花嫁衣装だ!
「ほら、ぴったりじゃない」
「あの」
「お前は何も言わなくていいのよ。明日にはお迎えが来ることになっているから」
明日!?
「なんだよ、それ!!」
豪農とやら?それとも商人だとか?そんなの勝手に決めて、絶対に逃げてやる。
シャルルは睨みつけた。

「いいのよ、お前が黙っていたのは許してあげるわ。まさか、あのロンダがねえ」
ロンダ!?え?
つまり?
「ロンダのお父様がね、正式にお前をとお話に来られたのよ。こんなじゃじゃ、いえ、元気のいい子を嫁にしてくれるなんて、ロンダも物好き……優しい子だわ」
「あのさ!勝手に決めるなってば!僕は」
「僕じゃない!私!」鋭い平手打ちを寸前で座り込んでかわすと、シャルルはアンの後ろに回り込んだ。
「いい加減にその男言葉はやめなさい!お前みたいな子をもらってくれるなんて後にはないのよ!」
この前言ってた二つはなんだったんだよ。
ロンダ、よりによって、あのロンダ…。
シャルルは少し考えた。
ロンダは優しい。ちょっとばかだし。僕の言うことを聞いてくれる。でも。

「やっぱり嫌だ!ロンダと結婚なんかしない!」
「もう決まったことです!」
「いやだ、それに、そのドレス大きいよ。絶対、僕には似合わない!」
「似合うわよ!ぴったりじゃない」
「着てみなきゃ分かんないだろ!」
「だめです、汚したらいけないでしょう!」
「じゃあ、やっぱり似合わないからいやだ。ロンダに返して」
「…仕方ないわね」
まあまあ、院長様、着てみたいというのだから。とアンがにらみ合う二人の間に入って、衣装を受け取る。「さあ、シャルル、こちらで」とシャルルを別室へと引っ張り出した。


アンの寝室には、大きな鏡がある。
シャルルは夕焼けとランプのうす明りだけの室内で、白いお化けみたいな自分の姿を睨みつけていた。乱れた金髪はたてがみが逆立ったみたいに見えるし、白い肌に白いドレスはなじみ過ぎて気味が悪い。
「なんでさぁ、勝手に決めるんだよ」
「あんたは知っているのかと思っていたのよ。ほら、ちょうど院長様が結婚の話を出して飛び出したでしょ?そのタイミングでロンダのお父様が来られたからね、あんたが縁談を嫌がってロンダのところにでも泣きついたのかと思ったの。いつの間にか好きな人を見つけてさ。院長様とね、男の子みたいなあんたでもやっぱり女なんだねぇって、感心していたのよ」
「違うよー、ロンダの思い込み。分かった、あいつこの間フランドルに出かけたから。このドレス、フランドルで買ってきたんだ、多分」裾をぴらりと持ち上げる。スースーするのを通り越してくすぐったい。
「あいつ、って。シャルル。未来の旦那様にそんな口調はだめよ」
ぎゅ、とリボンを絞められ。息が止まりそうになってシャルルはうめいた。
「フランドルで僕にって、きれいな剣を買ってきてくれたんだ。ほら、そこにある」
「あら、まあ」とアンは興味深げにシャルルの荷物からはみ出した、あの蒼い短剣を取り出した。
「きれいねぇ!それでなのね。シャルル。東の国では男性が女性にきれいな彫り物をした短剣を贈って求婚するのよ。これは、あんたに結婚の申し込みだったのよ」
「そう?」そんなはずはないと内心笑いながら、シャルルは剣を受け取った。蒼い石と絹糸を織り込んだ模様が、ぼこぼこと手のひらに当たる。
お土産がほしいかって聞くから、僕がかっこいい剣がほしいって頼んだんだ。
ロンダはお人好しだから嬉しそうに……。
女らしくしろと抱きしめられたけど、でも。
ふと脳裏にはロイの、あの時の顔。目の前にあったきれいな目。強引にキスしたくせに、困ったように謝った。
違う、違う。
首を横に振るシャルルに、帽子をかぶせようとアンが押さえつける。
「なに、これ、かぶるの?」
レースでできた帽子を頭に乗せ、脇のリボンをあごに回して縛ってみる。
「髪をきれいに洗わないとねぇ。可愛らしい花嫁さんになるわよ」
顔を隠すにはちょうどいい。
「何?」
「あ、なんでもない。あの、ちょっとトイレ!」
「駄目よ!我慢なさい!」
「嫌だ!」
慌てるアンを無視して、シャルルは部屋を飛び出した。




シャルルは走っていた。修道院をそのまま飛び出し、ランスの町を走り抜ける。
目標は大聖堂。
夕方の通りは賑やかだ。見知った商店の主人が声をかける。適当に手を挙げて応える。
ランプが揺れる軒下を走り、聖堂前の広場を横切って大きな門へ。
聖堂参事会が開かれる夜は、門の前に司祭が立つ。
顔見知りの司祭がシャルルを引きとめた。
「おやぁ、シャルルじゃないか。珍しい恰好して、やっぱり女の子だね、似合うよ」
「ごめん、通して」
「今日は参事会があるからね、奥の階段は使ったらだめだよ。裾を踏んで転ばないようにね」
ひどく真剣なシャルルが拍子抜けするくらい、穏やかに笑って見送る司祭。こんな時にのんきに笑っている。

「誰にも話してはいけません」大司教の言葉をふと思い出す。

つまり。誰も、知らない?

シャルルは立ち止り。ふと振り返る。先ほどの司祭が笑顔で手を振った。
知らないんだ。
向こうに見えるランスの街。小さく星が流れるような家々の明かり。二階建ての建物がほとんどで、三角の屋根の向こうの空は夕焼けの残りと深い青。
普段と変わらない。何も変わらない。皆にとっては。
なのに、僕はこんな衣装で。
ロイは閉じ込められていて、殺されちゃうかもしれないんだ。

僕が助ける。僕しか、ロイの味方はいない。
絶対に、助ける。

改めて胸元に抱えた短剣を握り締めると、シャルルはゆっくりと歩き出した。
シャンパーニュの騎士たち、ロンロンを入れて四人が敵で。後は衛兵二人と大司教様。
そう、それだけのことだ。
彼らの目さえ逃れられれば、大丈夫。聖堂参事会には大司教様も、ロンロンも出席するんだろう。だとすれば、敵は騎士が三人だけ。この広い大聖堂、僕のほうが詳しい。
大丈夫。


シャルルは息を整え、ゆっくりと外陣を歩いて行く。途中、裏庭に通じる出口から外に出ると、馬車がたくさん並ぶ厩へと立ち寄った。
「クウ・クル!」
呼ぶと白イタチが馬の背を三頭分ぴょんぴょんと渡りながら、シャルルの肩に飛び乗った。
「馬とじゃれるのは後で。お前は重要な役なんだからさ」
すでにシャルルの帽子にまとわりついて遊んでいるイタチに例のごとく一人話しかける。


厨房ではいい匂いが立ち込めている。
さっきまでシャルルの背中を規則正しくたたいていたクウ・クルの尻尾がぴたりと動きを止めて、周囲に興味津々だ。鶏肉の皿に気づいて近づきすぎないようにシャルルはぴたりと止まった。クウ・クルは皿が射程圏内に入れば遠慮なく飛びかかろうという仕草だ。
「だめだよ。後で」
「おや、シャルルじゃないか。どうしたんだい、それ」
顔見知りの焼き場の監督アンリが真っ赤にほてった頬をにこにこさせながら、焼きあがったばかりの鶏肉を大きなグリルパンに乗せて持ってくる。クウ・クルが鼻を突き出して匂いをかぐとアンリは笑って「ほれ、熱いぞ」と、小さくちぎった肉を差し出した。
「ありがとう、あの、夕食を」
「ああ、お客人の分だね。ちょいと待ってくれよ、参事会の前の会食が始まったんでね、そっちが優先なんだ」
「うん、いいよ」
シャルルは厨房の隅に積み上げられている野菜のかごの脇、酒の木箱の上に座った。
ドレスを着ていることなどすっかり忘れている。
クウ・クルは肩の上で手に持った鶏肉と格闘している。白いドレスはしっかり汚されているのに、シャルルは気づかず、頬杖をつくとぼんやりと忙しそうな男たちを眺めた。


ここ数日、そう、あの朝シャンパーニュの騎士、ロンロンに出会ってからだ。いろいろなことがいっぺんに起ったんだ。
ロンダが短剣をくれた。ロイとお兄さんのルーに出会って。僕が大人になって。院長様は僕を結婚させようとするし。僕は水車小屋でまたロイに出会った。
水車小屋。
鍵はずっと、シャルルが持っている。首に下げたそれはシャルルが水車小屋の管理を始めてもう、二年ほどずっとシャルルの胸元を飾っていた。

「おい、どうしたシャルル。ぼんやりして。シャルルらしくないな」
アランが二切れめの鶏肉をクウ・クルに差し出しながら、シャルルの頭をなでた。
「あ、うん、ちょっと疲れたんだ」そう、眠いような体が重いような。
「ほら、準備できてるぜ。重いけど大丈夫か?」
「大丈夫。僕、力は自信ある」
ふふ、と鼻で笑いながらアランの差し出したトレーを受け取った。

「ああ、シャルル、もしかしてお前、それは花嫁さんか?」
「そう、これはね、花嫁さんだよ」
そう呟きながら、振り返らずにシャルルは歩き出した。
重いトレーと料理の匂い、肩のイタチは嬉しそうに右に左にと行ったり来たり。
そんなことより。シャルルは考え込んでいた。


階段を上り、部屋の前では衛兵が二人、シャルルの姿を見ると目を丸くした。
「おや、どこの貴族様かと思ったぜ」
「お前、女だったのか」
胡坐をかいて座り込んでいる二人はシャルルのドレスの裾をつついた。
「めくったらスープを顔にぶちまけるぞ」
からかう二人を睨みつけ、早く扉をあけるようにとあごで示す。
「威勢がいいなぁ、お前面白いなぁ」
一人が笑いながら、鍵を開ける。重い扉が開かれる。ランプも灯されていない暗い室内の空気を深く吸い込んで、シャルルはぐっと腹に力を込めた。
「あ、そうだ。厨房でアランさんが、夕食が出来たってさ。交代で食べにおいでってさ」
ああ、わかった。そう答える衛兵の声を聞きながら、シャルルは静かに部屋に入る。背後で扉が閉まった。
暗がりのそこは窓からの街の明かりだけが見える。月だけがベッドに座るロイの姿をかすかに照らした。そこにいるのに振り向く様子もない少年。この静寂をシャルルは破る。
「夕食、持ってきた」
少し間があった。
「…来たんだ」
もう、来ないのかと思ったのだろう。
「何言ってるんだよ。僕はお前のお世話係だからね。約束したし」
ロイの声が沈んでいる気がして、シャルルは落ち着かない。
何かあったんだろうか。
また、体調が悪いんだろうか。
テーブルにトレーを置いているすきに、白いイタチがつるりとロイのほうへと駆けていく。
「わ、お前も来てくれたんだ」
嬉しそうなロイに少しだけほっとし。シャルルは暖炉に残る種火を火かき棒で引っ張り出すと、ランプに火をつけた。
持ち上げてテーブルへと移動する。ロイの顔が見えないのは不安だった。
「シャルル、その格好」
照らされたロイはこちらをまっすぐ見ていて、シャルルはなぜか照れくさい。
「見るなって」
「可愛い」
「あー、そういうのは聞きたくない」
ほら、食べよう。と、シャルルは一人先に席に着く。
「じゃあ、きれいだ」
「違う、それも聴きたくない」
ロイがゆっくりと歩いて、正面に座る。
引かれる椅子、それを持つ手。肩から降りてきたクウ・クルが二人の間のテーブルに後ろ足で立って左右を見比べる。
「じゃあ、もっと、ちゃんと見たい」
ぶ、と。飲みかけた水を吐き出して。シャルルはむせる。
「それはいいからさ、食べよう。急いで。時間がないんだ。食事の後に参事会が開かれる。たぶん、あと二時間くらいだ」
「まだ、そんなこと言ってる。僕のことは忘れるんだよ。忘れることができるって言うから、だから」
「だから?」
「……なんでもない」
視線をスープに落としたままの少年に、シャルルは派手にため息をついた。
「あのさ。僕は、たぶん。お前のことは一生忘れられない。この短剣も、きれいなドレスもさ、ロンダっていう幼馴染がくれたんだ。僕と結婚したいんだってさ。でも僕が思い出したのは、ロイのことなんだ」
「シャルル」
「助けるって決めたんだ。これで何もしなかったら、僕は一生後悔するし、それこそ思い出しても悲しいだけになるし。だからさ」
「君、何を言っているか、分かってる?」
「分かってるよ。僕はお前を助けるって言ってる」
「無駄だよ。もういいんだ。どうせ、いつか人は死ぬんだ。乳母がよく、僕に言うんだ。どんな人も、生まれたときに約束されるのは死ぬことだけだって。それが、早いか遅いかだけだって」
「自分こそ、何言ってるか分かってないね」
そんな風に覚悟するのは間違ってる。そんな覚悟をさせる周囲も間違ってる。だって、今ロイは生きてるんだ。
少年は首を横に振った。
「分かってるよ。私は要らないんだ。大勢いる兄弟の中、体の弱い私一人だけ北の王領で乳母に育てられた。両親にもほとんど会ったことがない。ルーだけは歳が近いから、時々パリから遊びに来てくれる」
「それでこの間は二人で抜け出したんだな。僕の剣も盗んだり……」
そこでロイが笑った。
「ごめん……本当は私も騎士の叙任なんて、されてない。見習いにもなれないし、剣に触れたこともない。それで、君のが羨ましくて」
「盗むことないだろ。僕だって初めての自分の剣なんだ」
「うん、ごめん。結局周囲に隠しておかなきゃいけなくて、ずっとマントにくるんだままだったんだ。悪いことはしちゃいけないね」
だよ。と頷きながら。シャルルは立ち上がりロイに背を向けた。
「?怒ってるのかい?シャルル」
シャルルはもぞもぞとドレスの裾をまくっている。ドレスの裾から細い足が出ていて、思わずロイは目をそらす。
「他に隠すところがなくてさ。はい」
ことり、と。テーブルに乗る堅い音でロイは顔をあげた。
シャルルはにっこり笑い、あの蒼い短剣を二人の間に置いていた。
「叙任式って、見たことあるよ。主の名において、我、汝を騎士に叙する。天則を守るべし、祈りかつ働く人々すべてを守護すべし。かなり古式で簡略だけど」
「え?」
見ている間にシャルルの細い指が水の入ったコップに吸い込まれ。あの短剣にぽたぽたと滴る滴。透明なそれについ、みいっているロイの首をぱん、と。手の平で思い切りたたく。
「わっ!?」勢いにロイは椅子から転げ落ちた。
「はい。騎士には、剣が必要だよ。馬はここのを借りればいい」
シャルルの差し出した短剣はランプに照らされきらきらと光る。
ロイは両手でそれを受け取った。
「…ありがとう」
「諦めるなんて、言うなよ。僕が助けるんだ。誰がどう思ったって、僕はロイに生きていてほしい」
シャルルは自分の生い立ちを重ねていた。貴族の母親は自分で子を育てないものなんだとアンが慰めてくれた。ロイも同じなのだ。名を失った僕と同じ。
ぎゅと胸が苦しくなるからシャルルは慌ててフォークを手に取った。
「とにかくさ、食べよう」ロイの視線を避け無理やり口に含んだ鶏肉は、涙の味がする。
「案外泣き虫だな、シャルルは。泣かないでって言ったじゃないか」
「泣いてないって!僕はお前を助けるって言ってるんだ。同じ死んじゃうかもしれないなら、僕の言うこと聞いてからにしろよ。いい?」
「ごめん。泣かせたいんじゃないんだ」
ロイの声が少し鼻にかかる。
本当に怖いのは、泣きたいのはロイのほうだ。僕が泣いてちゃだめだ。
シャルルはぐっと涙を拭うと話し出した。
「いい?ロイのことを知っているのは、僕と外にいる衛兵と、この聖堂のどこかにいるシャンパーニュの騎士たち。それと大司教様だけだよ。後の人は、ロイのことをお客さんだと思っているんだ。だから、騎士たちにさえ見つからなければ、あとは味方なんだ。僕も、ここにいたらきっと、ロンダと結婚させられちゃう。それは嫌だ。言っただろ、僕は騎士になる。だからこのランスを出る」
ランスを出る。
とっさに口をついて出た。それは、勢いに任せたものだったかもしれない。でも、声に出してから意味を反芻してシャルルの気持ちは落ち着いた。
うん、それでいいんだ。それでいい。
ロイはじっとシャルルを見つめている。シャルルがかみしめる鶏肉を水と一緒に呑み込むのを待って、口を開いた。
「一人で?」
「ロイがいる」
また、ロイは黙った。
「ね?」
念を押すと、ロイは頷いた。
「分かった」

続きは8月24日公開予定です♪

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chachaさん♪

うわ~、なんか照れちゃいます!!

シャルルのセリフ、彼女のまっすぐなところを、ロイやロンロンと対比させています。
立場や状況が違うと、人の考えは変わるものです。家族や周囲に気を使って生きていくロイやロンロンに比べ、シャルルは孤独だけれど自由。
そして、何のよりどころもない孤児という立場では、自分の生きる理由に対して、なにかしら考えを持っていないとつらい。
生きることに対して、まっすぐです。

だから、ロイたちには、シャルルは強烈に映ります。

こういうまっすぐで強い性格は、実は、私の憧れでもあります♪

さて、シャルルたちの冒険、どうなるのか…

楽しんでいただけるといいなぁ~!!

おおお

だ、大丈夫かな。どきどき。とりあえず、無事に二人で抜け出して欲しいと願っちゃいます><
まずはここが、最初の難関だろうから…

らんららさん。私は時々、らんららさんの書く小説の中に、どきりとする一節を見たりします。
今回はこれ。
「そんな風に覚悟するのは間違ってる。そんな覚悟をさせる周囲も間違ってる。だって、今ロイは生きてるんだ。」

すごく、胸に響きます。誰かに言いたくなるような台詞。こういった言葉をシャルルに渡す辺り、らんららさんってやっぱり、素敵だなぁと思ったり^^

あーでも。手に汗握るなぁ…どうなるのかドキドキしっぱなしです@@;
また来ますね♪

藤宮さん♪

こんばんは!
お久しぶりです!
真っ直ぐな主人公は描いていて楽しいものです。
シャルルが天使♪うふふ~嬉しいです!男の子っぽくしているから、どういう印象なのかな、と心配していまして♪

二人がどうなるのか…うむ~。
楽しんでいただけるといいなぁ♪(…どきどき^^;)

天使…ですね

お久しぶりです~、忘れた頃に現れますが(汗)

留守にしているうちに新作が!
シャルルちゃん、素敵すぎます。花嫁衣装はまさしく天使という感じで。さて、ロイ君と無事に逃げだせるのか…。

今からドキドキしてますよ~♪
流されずにまっすぐ自分の生き方を貫こうとするシャルルちゃん、ロイ君と幸せな未来をつかめるよう祈りながら。

じーっくり追いかけさせて頂きますね♪

kazuさん♪

こんにちは!夏休み、満喫しました?
またブログに遊びに行きます!

さて、シャルルたち。
子供らしく、突っ走ります!
ご期待に添える結末かな?
お楽しみに~♪

NoTitle

やっぱりシャルルちゃんは突っ走ってくれないと^^

ロンダくんが結婚相手とは!
でも、シャルルちゃんはロイくんと一緒にランスを出て行くこと決めちゃいましたもんね^^
ロイくん、心中複雑そうだけど嬉しいだろうな。
頑張れシャルルちゃん!

松果さん♪

うふふ、ロンダ君。いい子なんです~是非婿にしたいくらい♪
自分の居場所…うん。大人になると分かるよね(←しみじみ)
このコメント見たらシャルル、どんな顔するんだろう~♪
「よ、よくわかんないけど、決めたんだからっ!」
って感じかな(笑)
決めたからには。
がんばってもらいます♪
お楽しみに~♪

花さん♪

なむなむっていい!(^∇^)
ロンダ、好青年だけにもったいないと思うのに。そこで手を打っておいたら主人公は務まらない(笑)
あくまでも突っ走るのみです!!
花嫁強奪戦線で勝ち残るのは…むふふ。
私も、なむなむ♪

シャルルちゃん!

なんと、ロンダが結婚相手に……
でも、ロイの所に戻ったシャルルは、自分の居場所を選んだんですねえ。
食事しながら大事な気持ちを告白しちゃったってこと、自覚あるのかな?
さて、これからですね。二人が無事に脱出できるかどうか、ドキドキしながら見守ります。

駆け落ちッ!!
…違った、ついに脱走&新天地へ!(笑
大人社会は辛いけど、明るく元気なシャルルちゃんに励まされるばかりです。
ロンダ君には可哀想だけど、シャルルちゃんの自由な発想と生き方に憧れちゃうなぁ=3
さて、花嫁強奪逃避行(違、成功するんでしょうか?
幸せな未来を祈りつつ。なむなむ。
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らんらら

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