10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『La croisade de l'ange 2:Laon』 ⑬

『Laon ‐ランの風は苦く‐』

13

「あ、あの」
声を出して、やっと自分の状態と、そこにいる人間の意味を思い出した。
「ルー!?」
ぴょんと立ち上がるシャルルに驚いたのか一歩下がり、それからルーは笑った。
「あの時を思い出すね。水車小屋で。シャルル、だよね?」
立ちあがって向かい合えば、シャルルより拳一つ背が高い。ほっそりとしているものの、かすかにロイに似た面影もある。
黙ってうなずいて、シャルルは思い出して目をこすった。
「怪我をさせてしまったのだね、すまない。ベルは時々、無茶なことをするのだよ」
シャルルの腕の傷にそっと触れ、ルーは一緒にシャルルの髪をなでた。出会ったときと同じ、穏やかでにこやかに笑う。繊細な造りの目元に儚さすら感じさせるのはロイとも似ている。あの時と違い、とても綺麗な言葉を使うところが、なぜかシャルルを緊張させた。

「あの、式典は?」最上の敬語とやらがとっさに口に出来るわけでもない。しどろもどろになる手前でシャルルは言葉を区切った。
「大丈夫だよ。夕方の祝宴まではまだ時間がある。君をベルが捕らえるのを見ていたんだよ。だから、早く助けてあげようと思ってね」
ルーはシャルルの肩に手を置いた。案外、力強く。その重みにシャルルは動けない気分になる。
「何も心配しなくていいんだよ。君とであったことを誰にも話していなかったから、彼らも驚いたんだよ。でもシャルル、どうしてロイが王家の人間だって、知ったんだろう?」
少し、意味を飲み込むのに時間がかかった。
「もしかして、シャルル。君はあの後、ロイに会ったのではないかな?」
声は耳元に響く。あの後、ロイに遭った、そう、ランスで。
それは知られていいこと?
「あの、……その」
「賊に追われランスに逃げたらしい。その後がね、消息不明。ランス大司教は知らないと言い張るし」
「え!?」

誘拐のこと、知ってる!?
シャルルは緊張の中、精一杯回転させていた思考がどきどきと音を立てて崩壊するのを感じた。頭を軽く横に振る。落ち着け、当然だよ。だって行方不明になったわけだし、ロイの世話をしていた大人たちもいたはずだし。落ち着け。

「どうしたのかな?シャルル。顔色が悪いよ。君が私を呼び止めようとしたんだよ。私に何か言いたいことがあったのだろう?」
「僕は、ロイが。ルイ九世なのかと思った。だって、ほら、王様の子供って意味だって……」
「どうしてロイの名前の意味を知ったのかな。彼が自分から話す筈はないんだ」
穏やかな若い王の前でシャルルは胸を押さえ、口を押さえと忙しい。
「君は素直だね。ロイは私の兄弟だけれど公にされていない。存在を知っている人は限られている。分かるかな」
「…公にされてないって?でも継承権はあるって、あれ?」
ふとルーの手が緩んだ。眼を見開いてシャルルを見下ろしていた。
それから、ため息を吐き出すと。
「それも、知っているのだね。君は何を知っている?どうして修道院の孤児がたった二年の間に騎士見習いになり、獅子紋の立派な剣を持ち、知るはずのない知識を得ているのかな?君は、何者なのかな」
再び口を押さえようとする手は、しっかり温かい手に掴まれる。
ルイ九世は笑みすら浮かべてシャルルを見下ろした。
動けなくなって初めて、シャルルはルーの顔をまじまじと見つめた。
その目は、笑っていないのに浮かべた笑みは完璧。十二歳という年齢にそれは、どうにも気持ち悪い。そう思うとシャルルは落ち着いてきた。
こいつ、気持ち悪い。

ロイが公にされてないって。どういう意味だ!?
それはロイにとっていいことでない響きをしているし、それを当たり前のように笑いながら話すこいつって、どういう奴だ。
ロイのこと大切に思ってるなら、本当に兄弟として大切なら、違うと思う。
獅子は勘を取り戻す。その嗅覚が警戒を解いてはいけないと、警鐘を鳴らす。そうなればシャルルの思考はすっきりと答えに向かって歩み出す。先ほどの緊張とは違う鼓動が強く胸を打った。
「公にされてないって、どういうこと?ロイは兄弟なんだろ?ルーの弟なんだろ?」

シャルルはルーを睨み返した。そんな顔を誰かにされることはめったにないだろう。若き王は何度も瞬きした。それはすぐに、穏やかな笑みに戻る。
「初めて出会ったあの後、ロイは珍しく饒舌で、君の事を悪く言いながらも楽しそうだった。ロイが、君のことを気に入ったんだなと、すぐに分かったよ」


―――諦めるなんて、言うなよ。僕が助けるんだ。誰がどう思ったって、僕はロイに生きていてほしい。
「案外泣き虫だな、シャルルは。泣かないでって言ったじゃないか」
「泣いてないって!僕はお前を助けるって言ってるんだ。同じ死んじゃうかもしれないなら、僕の言うこと聞いてからにしろよ。いい?」
「ごめん。泣かせたいんじゃないんだ」
ロイの声が少し鼻にかかる。あの時。泣きたいのはロイのほうだったはずなのに。
僕らは、二人でランスを逃げ出す覚悟を決めたんだ―――

思い出せば胸が詰まる。
「ロイは思慮深くて、優しくて……」
ぎゅ、と。不意に抱きしめられた。
「いてっ!?何するんだ!馬鹿!?痛いって、言ってるだろ!放せ、同じ兄弟でも全然違う!ロイはもっと」
ますますルイの腕に力がこもるからシャルルは黙った。
蹴ったり殴ったりしていいものならとっくに蹴り飛ばしてる。王様って言うだけで、躊躇する。何で僕は。それが余計に腹立たしい。
「ロイのこと、好きなんだ?優しくしてもらったんだ?」
可笑しくて仕方ないとルイの震える肩が知らせる。
「へえ、妬けちゃうな」
「放せ!お前もっと、大人しい奴かと思ったのに!」
「…大人しいよ。穏やかで、思慮深く。でも。優しくはない」

そういう断言の仕方って、ないよ。

「優しさなど、王には不用。教えてあげようか。ロイは、弟ではないよ。兄、それも王位継承権のある第一男子、フィリップ」
ぞくりと、背を何かが這う。
兄…ロイの方が、お兄さん?
「ロイは病弱だったし、体も小さかったからね。間違えるのも無理はないけど。君は何を知っている?ランスに逃げ込んだ彼が頼れる人間は君くらいしかいない。ねえ、シャルル。知りたいのは私のほうだよ。……シャルル、なんでここ、布なんか巻いている?」
「は?」
いつのまにか上着の裾はまくられ、ルーの手が背中に触れる。胸を押さえている布をたどろうとする。
「ぎゃっ!?」
シャルルの声だったか、ルーの声だったか。
シャルルは反射的に飛び離れ、「ばか!触るな!」と怒鳴った。股間を蹴られたルーは床に膝をついて座り込んでいた。
「ひ、どいね」
「そんなことするからだ!王様だと思って我慢してれば、何するんだ!!大体、公じゃないってどういう意味だよ!」
シャルルが詰め寄ろうと踏み出した瞬間、扉が派手に開かれた。
衛兵らしき人やあの役人男、手に手に槍や剣を持ち駆け込んできた。一団の先頭にはあのベルトランシェ。
「陛下!こちらにおいでとは」
あの鞭がすでに手にある。
騎士の銀の髪が揺れるのと同時にそれは稲妻のように宙を走る。
数瞬前、シャルルは体を低くしルーの陰に隠れる。風のような鞭が唸ってシャルルのいた空間を切った。
生き物のような鞭はぐんとしなってまたシャルルを別の角度から襲う。ふわりと飛び上がり、テーブルの上に飛び乗れば、その足元に飛びついてくる。バシンと派手な音を立て書類が何枚か派手に飛び散った。
シャルルはすでに椅子の背もたれに片足立ち。
バランスを保ってじっとしている。

「こ、この、ちょこまかとっ!陛下、早くこちらへ!」
「いい、ベル。止めなさい。私は大丈夫」
「し、しかし!」
ゆっくりと立ち上がり、ルーは凛と佇む若い王に戻る。駆け付けた男たちは立ちすくんだ。
黙って彼らを見つめているだけなのに。聖像が生身に変わるのを目にしたように家臣たちは息をのんで見つめ返す。
シャルルだけは口をへの字に結んだまま、双方を睨みつけていた。
「面白そうだったからのぞいたまで。この子に部屋を用意しなさい。ベルトランシェ、職務とは言え女性の体に鞭をふるうなどしてはいけない。痕が残ってしまう。シャルルは私の幼馴染です、丁重に扱いなさい。傷をつけた理由については後で説明してもらいます」
「女性?」一斉に三人くらいが声を上げた。
「見れば分かります。ベル、いくら美しいお前でもかなわない。本物の女性には、ね」

好奇と、ベルトランシェにはある意味嫉妬の視線を浴び、シャルルはもじもじと後ろに下がる。実際のところ、シャルルはもう、どうしていいのか分からない。
ルーはあの時と印象が違う。ロイにとって、ルーは味方なのか。それすら分からない。
聞きたいことはたくさんある、だけど。

「来なさい、リオン」
ベルトランシェが手を伸ばした。
聞きなれない仇名がシャルルを現実に引き戻す。シャルルはそれをすり抜け、扉を目ざした。
「シャルル!理由を知りたければ来なさい!いつでも、教えてあげる」
そう、ルーの声が後を追いかける。
どうしたら、いいんだ。
僕は何を知って、何を知らなくて、どうしたらいいんだ!?
分からない!分からない!

聖堂の建物を夢中で走り、途中何人かの衛兵に不審者がられたけれど、振り向きはしない。
シャルルはとにかく、走った。

夢中で大聖堂の外に飛び出せば、通りはお祭り騒ぎだった。だれもとぼとぼと歩く騎士見習いの少年に眼を止める者はいない。
酒屋の軒先では何度も「ルイ陛下万歳」と杯が掲げられ、花売りも花をかごに抱えたまま踊っている。
冷たい冬の風も、彼らの熱気と温かい日差しに和らぎ。シャルルはまるで違う場所に来たように感じ、立ち止る。
大聖堂を振り返る。再び前を向いて宿へと歩き出した。
ジャンと合流できるかもしれない。
ジャンに相談してみよう。僕が冷静でないなら、ジャンならきっと。


先ほどまでの出来事とルーの言葉を反芻すれば、心は急く。いつの間にか走り出し、宿に入ると主人へのあいさつもそこそこに部屋へと向かった。階段がギシギシと鳴る。
ぐるぐると思考を繰り返していたが、ふと。それを年下のジャンに相談するというのは早計だろうかと。足が止まる。

「昼食、今なら間に合いますよ」
顔をあげれば階上からジャンが顔をのぞかせていた。木製の手すりから見下ろす顔はかすかに笑っている。先ほどのやり取りから考えれば腹を立てていてもおかしくないのに。
今更か。
戻りかけた一歩を再び踏み出し。シャルルは「よかった、もうお腹すいてさ」と笑って見せた。


無造作に包帯を巻くだけで済まそうとするシャルルに、「後できちんと治療しますよ」とジャンは念を押し、まずは腹ごしらえ。二人はテーブルについた。
香ばしい匂いをさせるパンとハム、果物と屋台で売られていた串刺し肉を焼いたものを眺めながら、シャルルは早速話し始めた。
「王様に、会った」
「ふうん」ジャンは興味なさそうな顔をしてオレンジのジュースを飲み干す。
「あの、聞きたくないなら、…話さない。巻き込むし、その」
「まずは食事ではないですか?大体、聞いてほしいから話し始めてるんでしょう?泣きそうな顔して。それを僕が聞きたいかなんて、ずるい言い方はやめてください。素直に、聞いてほしい、と言えないんですか」
ぐ、と。そのタイミングでフォークに刺してあった果物がつるりと落ちる。
「ああ、きれいに食べてくださいね、シャルル。手が痛くて持てないなら、僕が」
左手は確かに痛む。じっと手を見た。
手に余って、今の自分では何をどうしたらいいのか分からないのだと。悔しいけれど認めるしかない。
目の前のジャンは二つも年下で、まだ十一歳の子供。血を見るのが嫌な、騎士見習い。いつか、セネシャルになるんだと。勉強中だ。両親を亡くして大人に囲まれながら、頑張っている。
シャルルはガクリと肩を落とした。僕ってだめだな。
「あの、ごめん。僕には、もう。正直、何をどう考えたらいいのか分からなくて。もともと、勘はいいけど勉強は嫌いで」
目の前に差し出されていた果物に、あぐりと噛みついた。ジャンは生き物にえさを与える感覚で、次の肉を準備する。
「それは知っています。見れば分かるし。君の話を聞いて、君を手助けするかどうかは僕が決める。決めたら僕は自己責任でそうします。それでいいんじゃないですか」
ああ、なんか。敵わないところがある、こいつには。
シャルルはフォークを右手に持ち替え、ジャンが切ってくれた肉をぐさりとやっつけながら話し出した。

「始まりは、二年前なんだ」
ランスでロイに出会ったこと。そのロイを、ロトロアに目の前で誘拐されたこと。
シャルルは事情も分からずロイを助けようと逃がしたこと。
そして、自分がロトロアに捕まり。ロイは行方不明。

「その。ロイがここに逃げ込んだことをルーは知っていたんだ。だけど、ロイは公にされていない、って言うんだ。ルーはロイの弟で。ロイが、第一王子フィリップだって言うんだ。その意味がよく分からなくて」
空になったスープ皿のそこを、スプーンでサラサラとなで続けながら、シャルルは話し終えた。ふと手を止め、少年を見上げればジャンは口元を引き締め怖い顔をしていた。

「シャルル。第一王子のフィリップ様は病気がちで、五年前、九歳で亡くなったと聞いています」
「え?」
「公にされていないって、そういうことなんじゃないですか。ルイ九世は今年十二歳。だとすれば、二年前に存在したロイは少なくとも十歳以上。彼がフィリップ様なら当時十二歳だったはずです。つまり、死んだことにされている。だから、誘拐事件も表沙汰にならないし、派手に捜索もできない」
「そ、んな」
「そう考えれば、辻褄が合います」
「何で、そんなことするんだ!?」
「僕に聞かれてもそこは、分かりません」
「理由を教えてくれるって言ってた。いつでも来いって!やっぱり、大聖堂に戻る!」
「シャルル!!ちょっと!君は向こうが何を知りたいのか、分かっていますか?!」
「え?…ええと」
そうだ、結局ルイは何を知りたいって言ってたんだっけ?胸の布のこと、じゃないよな。
「うー、よく分からない」なんかいろいろと聞かれた様な。
「誰もが理由があるから行動する。君にいつでも来ていいと言ったのは決して、親切心ではないでしょう。向こうには向こうの思惑がある。これはある種の取引なんですよ。よく考えてください」
「……僕がどうしてロイの正体を知ったかを気にしてた。そのくらいだよ。大したことじゃない」
シャルルは肉を見つめるふりをする。
「軽率ですね。慎重さに欠ける」
む、とするが。確かにそうかも。
「相手が知りたいことが大したことではないのなら。君を誘うのは君自身が目的だからでしょう。ロイを知っている人間がふらふらしていたらまずい。この場合君は捕らわれ、最悪は」と首を親指で切るまねをする。

「…それもあるかも」
「分かったでしょう。ロイは結局いなかった。以前と何も状況は変わっていません。もう、ここで得るものはないはず。式典が終わるまで、シャルルは宿でじっとしているべきです。言っていた通り、君はランスに戻るべきじゃなかった」
シャルルが黙って顔を上げた。ジャンは眉をしかめた。
何を迷っている、とでも言わんばかり。
それでもシャルルには納得がいかない。ルーを見て、ロイの思い出はますます色彩を濃くした。
「僕は、ロイを助けたかった」
「出来なかっただけです。大体、その様子じゃあ、宮廷も本当の意味でロイの味方だったか怪しいじゃないですか。兄弟同士で王位を争う時代ですよ。逆にロトロア様とシャンパーニュへ来た方が大切にされていましたよ、きっと。しかもロイはブランシュ様とシャンパーニュ伯との子だと噂された長男、フィリップ王子なんですから」
「えええっ!?」
「知らないんですか?噂ですが。噂ってのは、案外、当てになる。その噂だけだって王家にとっては十分不名誉。真実ならばなおさら、ロイは。宮廷にとって不要です」
ごくり、とシャルルは肉を飲み込んだ。

「ティボー四世様ならきっと、自分の子供みたいに大切にしてくださいます」
ジャンは自慢げに、シャンパーニュ伯がかつて戦争の捕虜を大切にもてなしたため、捕虜は自国に帰ることを拒んだという逸話を語って見せた。
「……あの、もしかして。シャンパーニュ伯はロイの味方、なのかな」
ジャンは目を丸くし。それからしばらく考えた。
「敵か味方かって、本当のところは難しいですけど。ロイがどう思うかだから。ただ、ロトロア様がロイを連れて行こうとしたのは、別にロイをひどい目にあわせるためじゃないと思いますよ…あれ、シャルル?」
誇らしげにジャンが胸を張る目の前で少女はテーブルに顔を伏せていた。ぐったりと、組んだ両手に頭を預けている。
「大丈夫ですか!?」
「二年前のあの時さ、ロイはロトロアと何か話してたんだ。ロイは「お父様はそんなことはなさらない」とか庇ってたけど。あの時ロイは知ったのかな。自分が、死んだことにされているって。そうだ、ロンロンもそうやって説得してシャンパーニュに連れて行こうとしたんだ。大司教様だって、ロイに同情するからこそ聖堂参事会にかけた。ただの誘拐なら、参事会が協力する理由なんかなかったんだ」
ロイはあの時、自分が存在を消されてしまったことを、知ったんだ。
自分を要らない人間だと言っていた。死んでもいいようなことさえ。
病気のことだと僕は思ってた。違うんだ。
あの時ロイは迷ってた、生きるか死ぬかとかじゃなくて、事実を知らされてどうしたらいいのかを。
大丈夫、助けるって。
僕は、ロイの本当の気持ちなんか、何も知らずに。それでもロイは、優しかった。

「ロトロアは。シャンパーニュに来て欲しいって、言ってた。そうすれば、ロイは今頃元気で、大切にされてた」
「シャルル…」
「僕のせいだ。ロイにとってシャンパーニュに行ったほうがよかったなら、それを邪魔したのは僕だ。そのせいで、ロンダが死んで、ロイは行方不明で」
テーブルとの隙間から漏れてくるシャルルの声はかなりの鼻声。
ジャンはどう慰めようか思案する。
「その、シャルル。君は知らなかったから、仕方ないです」
どんっと派手な音が遮る。
シャルルがテーブルを殴りつけ立ち上がっていた。
「分かった!僕、もう一度ルーのところに行ってくる。それで理由を聞いてくる。大体、難しくしてるのはそこなんだ。僕はロイを助けたかった。ロイだってどうすればいいのか分からなかったんだ!自分が死んだことにされてるって聞かされてショックだったはずだし、あの時のロトロアはどう見ても悪役だったし!本人の気持ちを無視してさ、周りがロイにひどいことするからいけないんだよ!もう、腹が立った!ルーに問い詰めてくる」
ジャンが止める間もなく、シャルルは素早く上着を羽織ると、飛び出していく。
ジャンは慌てて後を追った。

「シャルル、それじゃ何のために僕に相談に来たんですか!」
走りながらシャルルは振り返った。
人混みは午後になって酒が入ったのか、熱気とむっとするような匂いに満ちている。気だるい日差しは人とざわめきをすべて影にして揺らしている。
シャルルの髪がふわりと風に逆立った。獅子の子。そんな例えを誰が始めたのか。
かすかに涙を残す瞳は強い意思に満ちていた。
「僕は。あの時の償いをしなきゃいけない。危険なんか、冒すしかないだろ」
笑い、ジャンに手を伸ばす。
「僕、一人じゃ混乱する。ジャン、来て欲しい。僕は理由を知りたい。そうして、どうするのがロイにとって一番いいのか、考えたいんだ!」
「危険かもしれませんよ!」
「大丈夫!ジャンは僕が守ってやるからさ」

言い放つ自信に根拠はなさそうなのに、どうしてそんなに真っ直ぐ、言えるのか。
シャルルが笑うと、なぜかそうなるようにジャンには思える。
「分かってないんですから。危険なのはシャルルだけで、僕は平気です」
ジャンは目の前を遮ろうとした酔っ払いを押しのけ、手を伸ばした。
シャルルが言っていることが随分無謀で。権力の怖さをまったく理解していない、子供っぽい行動なのだと分かる。それでもジャンはその手を掴まずにはいられなかった。

つないだ手は暖かく、冷えてきた午後の風にも負けないほど力強い。
二人は走り出す。大聖堂へ、ルイ九世が待つそこへ。
関連記事
スポンサーサイト

kazuさん♪

ロンロン!
むふふ。
昨日、第二章をやっとエンディングまで書いて。(←遅…)
にまにま~っと、kazuさんが喜ぶ姿を想像してしまう私。
ロンロンの活躍(?)をお楽しみに♪

ジャン君もいいんだけれど、やっぱり恋愛対象にはならないですからね♪

いろいろと複雑な人間関係に突入予定ですが♪シャルルはまっすぐ、わかりやすく突っ走る予定です♪

年末、いろいろ忙しいですね~。
大掃除疲れで、筋肉痛です(><;)
kazuさんのコメントにいつも元気をもらっています!!
また来年も、ご期待に添えるよう。頑張りますねっ♪
よいお年を~♪

ジャンくんいいな~

今現在1位ロンロン・2位ジャンくん・3位ロイくん、というランキングを心に抱いているkazuです。おはようございます^^
ロンロンぶっちぎり(笑
登場を心待ちにしています~♪

ロイくんの秘密が、あらわになってきましたね。
まさか、ロイくんのあの時の言葉がそういう意味だったなんて。
ロンロンが、実はそこまでの悪いことをしていなかったなんて。
シャルルちゃんの心うちを考えると、やりきれない思いでいっぱいです。
それでも前を向いて、ルーくんに問い詰めにいく。
それでこそシャルル!!
ジャンくん、頑張ってフォローお願いします~!!

今年も更新、お疲れ様でした!!
来年もまた追いかけていきますので、よろしくお願いします^^
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。