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『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ④

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』



吟遊詩人はサールと名乗り、シャルルを焚き火の隣に座らせてくれた。鋭くとがらせた木の枝に魚が三匹串刺しにされ、香ばしく食べごろ。一ついただいて、シャルルは上機嫌だ。
「寒いからねぇ。私の生まれた街じゃ、雪なんか見たこともなかったね」
「雪が降らないの?すごいな、暖かいんだ!」
「そうさぁ、日当たりのよい斜面には一面にオリーブが植えられているよ。風にさわさわとね、海には新鮮な魚介、レモン畑には白い花が咲く。真っ青い、ほら、空のように青い海と」
「今日は曇ってるけどね」
「ああ、そうそう。この分だと雨になるね。降り出さないうちに街に着かなきゃなぁ」

のんびりした口調はどこか面白く、シャルルは魚も御馳走になってすっかりサールが好きになっている。
アーサー王の物語を歌ってくれ、「リシャールとは大違いだ。本物はすごいよ、やっぱり」と、魚に釣られて戻ってきた白イタチに語る。
「私にはこれしかないからね。お貴族様のお庭でも、城の井戸端でも。街の街道でもなぁ。うまく行けば宿の客の前でね。そうすれば宿賃はただ、旨い酒も飲めて歌いたいだけ歌える。幸せだねぇ」ポロンと手にした小型のハープが伴えば口調は歌うように優しくなる。
「ふうん。僕、昔はランスの修道院にいたんだ。吟遊詩人は街に来たことがなかったな」
「あはは、修道院には嫌われるんだよぅ。ほら、時には男女の恋も歌うからねぇ。禁欲の徒には可哀想だねぇ」
「可哀想?」
「そりゃそうさぁ。人間、誰でも欲がある。修道女だって修道僧だって中身は普通の人間だろうよ。お前さんだって好きな子の一人二人、いるだろう?手も握れなきゃそりゃ、じれったいよなぁ」
「そ、それは」
口を尖らすシャルルに、サールは目を細めて笑う。
「なんだい、好きな子いるんだろ。どんな子だい?人それぞれの人生は、色とりどりの河原の小石、丸かったり尖っていたり。一つ一つを歌いあげれば詩は清んだ流れとなる。ほら、話してごらん、聞いてあげるよ、可愛い騎士見習いさん」
魚にかぶりついたタイミングで頭をポンポンと叩かれてシャルルはむせた。
慌てて差し出された水筒を口に運び。それが慣れないワインだったからまたむせる。
「おいおい、坊や、ワインも飲めないのかい?赤いワインは聖なる血液。天にも昇るってのはこのことだよねぇ」
どうやらサールも先ほどから随分飲んでいるらしい。埃で汚れた頬はすでに赤い。
「あんまり、あんまり好きじゃないんだよ、だって苦いし酸っぱいし」
嫌いでも飲めば酔うのは誰でも同じ。焚き火のせいか、ワインのせいか。一口くらいじゃそんなはずはないと思うけど。と思いつつ、汗をかくほど熱くなってシャルルはケープを脱いだ。
「その、好きな子を探してるんだ。吟遊詩人ってさ、あちこち旅をするんだろ?その子はさ、ランスで行方不明になってどこに行ったか分からない。僕と同じくらいの年で、首飾り、ほら、こういうのしているはずなんだ」
襟元にコロンとしているそれを、持ち上げて見せる。
サールはふうん、と首をかしげた。
「立派なもんだね。お前さんもそうだけど、貴族様だろう?」
「僕は違うよ。だけど、探している子は本当に貴族様。身体が弱くてさ、こう、優しく笑ってさ」
「顔が赤いぞ?」
「ワインのせいだってば」
「恋しいあの子、かぁ。いいなぁ。人探しなら港がいいよ。商人が大勢集まるところには、旅で知った情報を僅かな金で売る奴もいるからねぇ。少しばかり、危険かもしれないけど」
「平気さ。だから、ル・アーブルに行くんだ。サールは?」
「ああ、私は好きなところに好きなように。ル・アーブルの港町かぁ。お前さんの恋の話も知りたいしね、一緒に行くよ」

少し変わった道連れができた。

サールはローマ帝国の中部、海岸沿いの街に生まれたという。ずっと旅をしながら北上しているらしい。
「いつか、北の果てってのに行ってみたいんだよ」
そんなところには歌を聴いてくれる人なんかいないんじゃないかと、シャルルが笑えば「誰もいなくても歌っているからね、気にはならんよ」と笑い返す。


シャルルとサールがル・アーブルの街に到着したときには、雨が降り出していた。
午後の時間は市場も閉じているらしい。歩く人も少ない街の中をがらんとした広場まで来るとさすがにずぶ濡れで、二人は広場に臨む酒場で休むことにした。
「坊や、先に一人で入りな、私のことは気にしちゃだめだよ」
「え?何言ってるんだよ」
シャルルが店の扉を開くと、がらんと真鍮の鈴が鳴った。
「へいー」と、陰気な感じの痩せた主人が顔をあげた。
シャルルを見ると、「いらっしゃい、暖炉の側にどうぞ」と少し笑った。シャルルの肩に乗るイタチを見たのかその目が二回瞬き。続いて眉をひそめた。
「おい、あんたは御免だよ、歌うなら外でやってくれ」
え?
シャルルは背後にいたサールを見つめた。
どんどんと足音を響かせて主人がシャルルの脇に立ち、「従士様はどうぞ、温まりますよ」と店の奥へと押す。サールを外に置いたまま、扉を閉めようとする。
「あ、でも、サールも一緒でなきゃ」
じろりと主人が表情を変えた。
「吟遊詩人とご一緒、ってんなら」


結局「なんでだよっ!」と怒鳴るシャルルを主人は店から追い出した。
「ちゃんと代金も払うし、悪いことないだろ!」
最後に店の扉を蹴ってみたけれど、古びた木の扉ががりっと音を立ててきしんだだけだった。真鍮の鈴にも無視された。
「ばかだねぇ、リオン。お前さんだけでも中で休めばいいのさ。私みたいなのはそう入れてもらえるもんじゃないのさ。ほら、今からでも」
「いい、僕もここにいる。納得できない」
くく、と面白げに笑うサールは慣れている様子。穏やかに目を細めるとシャルルの肩をぽんと軽くたたいた。
「優しい子だねぇ」
だってさ、とふてくされて座り込むシャルル。サールもその隣に座った。
店の窓の下には遮る屋根もなく、瞬きするたびに雨粒がまつげから落ちる。
お互い濡れているから意味はないのかもしれないが、と言いながらサールがシャルルの肩を抱いて「少しは温まるだろうよ」と笑う。
「いつも、こうなのか?吟遊詩人の何がいけないんだ」
「お前さん、私の代わりに怒ってくれるのはいいけどねぇ。そういうものだと分かっていても、歌い続けている私も悪いんだよ。そりゃ、流れ者の外国人だよ。それだけでも嫌われるんだ、中には盗賊みたいな奴もいるから物乞いより扱いは悪いのさ。入れてもらえなくても仕方ないさぁ」
「サールは盗賊でも物乞いでもないのに」

―――寒い朝には冷たい白。染まる街は遠い異国。
凍え震える旅人を温める人の心。
綺麗な心と温かい声の優しい少年。
お聞きよ、道行く人。
お聞きよ、窓辺に雨を見つめるご婦人よ。
神は皆に命を与えたもうた。
同じ重さの命を下さった。
同じ人でありながら、ここにいる少年の温かいこと。
優しいこと、美しいこと―――

「わ、やめろよ、恥ずかしいよ」
シャルルが抗議すると、サールはあははと笑った。それから、シャルルを抱きしめると、「少年、はないねぇ。君、女の子だ。背中も肩も柔らかい」
「あ、…」
「ますます気に入った」
ぎゅうと抱きしめられ。シャルルは思わず、ひじ打ちを。
鼻を押さえるサールに、「ごめん、つい」と謝る。
「いいさぁ。大切な人がいるんだよねぇ、そう言ってたね。ここでこうしていても仕方ない、港に行ってみるかい」
「あ、うん!」
「ようし、人探しだね。どんな子だい?」
「ええと。ロイって名前の、僕と同じくらいの男の子で」
柔らかい茶色の髪で、色白で。綺麗な言葉を使う、優しい子。

サールに話しながら、思い出す。
水車小屋で出会ったとき。二度目には、熱を出していた。ロトロアに捕らえられ。
ああ、今思い出すと、あの時ロイを捕まえたのは、キ・ギだ。髭の騎士がロイを馬に乗せた。
だとすれば、一緒にいた騎士たちは、リシャールとローレンツ。
忘れていたわけじゃない、記憶と今をつなげてみなかった。改めて考えると、当然気付いていいのに。


僅かに風が穏やかになり、雨粒も服の上からでは感じられないほど小さくなった。
港へ向かいながら、シャルルは自然と黙り込んでいた。
雨にぬれ、あの晩のことを思い出した。あの時の悔しさも、悲しさも。
ロイは、どんな気持ちでランスを離れたんだろう。一緒に行こうって、約束したのに。

「大丈夫かい?」
「あ、うん」
サールが声をかけ、顔をあげると目の前は海。
灰色のドロドロと渦巻くような波が揺れ、石造りの桟橋に時折ざぶりとはみ出してくる。まだ夕暮れには早いと思うのに、空は海と同じくらい重い灰色をしていた。にわかに痛いほど大粒になった雨粒に、時折目をつぶり、立ち止る。
「こりゃ、たまらない」
サールの声も遮るくらいの雨。
「わ、わわ!!サール、こんなんじゃ、商人なんかいないんじゃないか?」
「そうかもしれないねぇ」
「そうかもってさ、とにかく。あそこに行こう!」
海岸沿いにつづく石積みの波止場。そこには船が何艘もつながれていた。
雨の中、船の上で網をたたむ漁師や、帆を繕う船員が見える。
反対側に並ぶ船小屋にも、幾人か人影が見えた。
「こっちだよ」
シャルルは一番近い船小屋の前に立ち、扉のないそこの中を覗き込んだ。
「すみません、ちょっと雨宿りさせてください」
言いながら、すでにシャルルは雨を逃れて屋根の下。
背を打つ雨粒がないのは、ほっとする。

「あれ、旅の人かい」
人のよさそうな老婆がにこりと笑った。土間に据えた木箱の上に座り、網を繕っている。
「ごめんなさい、邪魔して。雨がひどくて」
「ああ、いいよ、いいよ。こんな時化じゃあたしらも暇でねぇ。話し相手ができて丁度いいやね」
老婆はシャルルの後ろに立つサールを見て一瞬目を開いた。それまで閉じていたわけではないが、落ちくぼんだ目は細く、笑みに眼を細めるのに似ていた。だから、それが開くと少し違う印象を与えた。さっきまでも笑っていたわけではないのだと気づく。
「ああ、吟遊詩人かい」
その言葉にサールは踵を返しかける。
シャルルの手がしっかりつかんで引き留めた。
「あの、この人悪い人じゃないです。すごくきれいな声で歌ってくれるんです。少しだけ、ここで雨をしのいでもいいですか。お礼に何か物語を歌います」
深々と頭を下げた。
驚いた老婆は腰をあげ、老婆は二人の顔を見比べた。それから網を一つめくり、その下に隠れていた木箱を一つ引き寄せた。
「ほれ、座んなさいよ」
愛想のない口調でも、シャルルは満面の笑みで「ありがとう!」と礼を言う。

「騎士見習いさんかね、元気がよくていいねぇ」
「それだけが取り柄だからさ。お婆さんは一人なの?大変だね」
「息子がいるんだけどね、今は漁に出ているんだよ」
「え?この天気で?」
「遠い海なのさ。何日も帰ってこない。いつ帰ってこなくなるかとねぇ、気になると家にはいられないからさ、ここにこうして。ひと目ひと目、無事に帰れって願いながらね、繕うんだよ」
「ふうん。すごい、網目が広い畑みたいに綺麗だ。きっと叶うよ。元気で帰ってくるよ」
老婆はふふ、と照れくさそうに笑う。
「あんた、いい子だねぇ」
「違うよ、いい子じゃないけど。僕も無事でいてほしいって思う人がいるから」
「その年でかい?親か何かかい?」
「親じゃないんだ、友達。二年前にね、生き別れになったんだ。一緒に街を出ようって決めたのにすれ違ったんだ。見つからなくて」
自然視線が足元に落ちるシャルル。老婆の堅い手が肩をさすった。
「冷えきってるよ、あんた。今、火をおこすよ」
「ありがとう」
黙って座っているサールに、老婆が視線を合わせた。
「あ、サール、何か歌って」
「そうだねぇ。じゃあ、北の海の伝説だ」

―――荒くれ波の向こうには、誰も知らない島がある。
白い砂、青い海、髭と牙の海獣がいる。
ずっしり重いそいつには、手も足もない。
大きな体を右に左にゆすりながらはいずりまわる。
そんな島に俺たちは流れ着いた―――

サールは北の海賊から聞いたという、海の物語を歌った。
海賊たちが見知らぬ怪物を倒すと、真っ白い魚の体の女が出てきて宝をくれるというのだ。シャルルは初めて聞く物語にわくわくし、時間も忘れ聞き入った。

荷物にあった干し肉はすっかりふやけていたから、火であぶって口にする。老婆が小屋に置いてあった酒を取り出すと、サールが「おお、素晴らしい!」と喜んで、老婆も「詩には酒がつきものさ」と。詩も嫌いではない様子。その内二人は酔って酒盛りになった。
酒の飲めないシャルルは一人、小さなかまどの炎を見つめる。

ロイ。

酔って寝てしまった二人が目覚め、シャルルもすっかり乾いた髪を改めて結びなおした頃、日は暮れて外は真っ暗。強い海風が雲を吹き飛ばした空には、静かに星が輝いていた。暗がりの海に目を凝らすシャルル。闇と音とについ、見入ってしまう。
そんな景色は見慣れているのか老婆は大きな欠伸と共にぐんと伸びをした。
「あれあれ、遅くなったね。坊や、探し人なら市場に行くといい。何かいいことがあるよ、きっと」
そう励まし、老婆は丘の上の自宅にと帰って行った。
「市場か、市場なら明日だね」
見送ったシャルルはそう言いながら、またしばらく風景に見入っていた。
「それなんだけどねぇ。そうでもないんだ」
「え?」
「夜にもあるよ」
風向きが変わり、少し生温かい位の東風の中、シャルルはサールの指差す先を見つめた。

波止場の奥、この港で最も奥まった入り江の周辺に明かりが見えた。
転々と松明が燃え、照らされる暗がりには人が大勢いる様子だ。
「すごい、行こうよ!」
「リオン、お前さんには黙っていたけどね、心当たりがあるんだよ」
「え?」
「探しているっていう、子供。いや、その子がどこってのは、分からないんだけどね、この辺りじゃ拾われた子供はあの市場で売り買いされる。二年前ってことは十歳そこそこなんだろう、一人で生き抜ける年齢じゃない。それに、このノルマンディーではフランク人を拾って育てようなんて奇特な人間はいないんだよ」

売り、買い?
「奴隷、みたいに?」
サールは振り向いたけれど、暗がりでその表情は見えない。でも楽しげな口調はそのままだ。
「売られた子供は元締めが引き受け、売り手との仲介をする。分かるかい?元締めに聞けばお前さんが捜している子供を覚えているかもしれないんだよ。でもね、危険だからね」
「じゃあ、会いに行こう!」
「あのさ、私も知らないんだ。会ったことはない。試しにお前さんを売ってみれば、あんたは元締めに会えるかもしれないけど、でもそれじゃ、嫌だよねぇ」

元締め。
「僕を売るって、どうやるの」
「本気かい?」
「……やっぱり、売られたらまずいかな」
うふふ、とそこでサールは笑った。
「ほら、無理だよ。今日はやめておこうよ、また考えてからだよ。この街に来たってことはお前さん、何か手掛かりがあったからなんだよね?そっちから探したほうがいいさ」
サールの言うとおりだ。
売られてしまったとして、元締めがロイのことを知らなければ意味がないし、そこでロイの行方が分かったとしても自分が自由になれなきゃ元も子もない。
手掛かりと言っても、この街のバイイに会うくらいしかない。バイイが元締めと知り合いなら探してもらえるかもしれない。どちらにしろ、まずはこの街の役所だ。
「だよね。バイイ(地方代官)のヌーヴェルさんに会うんだ。どこに行けばいいか、知ってる?誰も知らないっていうんだ」
「バイイ。ああ、王領の地方代官ってのだね。リオン、ノルマンディーはノルマン民族の土地だよ。考えてごらん」サールが遠く闇の中の海を見つめ、話しだした。

このノルマンディーにはノルマン人が住んでいる。イングランド王が治めていたのを、少し前にカペー王朝が奪い取った。当然、住民は反発する。パリからフランク人が来ても収まりがつかないから、ノルマンディーではその土地に代々根付いている領主にバイイを兼任させる。
その領主も「バイイ(地方代官)」という呼び方はカペー王朝への従属を意味するから使わない。だから誰もが「領主」を知っていても「バイイ」は知らない。領主様の御屋敷って尋ねれば知らない人はいないだろう。そう、サールが説明してくれた。
戦争を経験したことのないシャルルには、まったく思いもよらないことだった。

「そうか、ありがとう。明日、その辺の人に聞いてみる。そうだね、領主の御屋敷を知らない人なんかいないもんね。ブリュージュではバイイと領主、ランスでもバイイと大司教、そんな風に二種類の統治者がいたんだけど」
「そうだね。税を納める人は大変だね。バイイに通行税や港の使用料、領主に租税、教会にお布施。あちこちに払わなきゃならないんだからね。私は、領主の屋敷は一緒にはいけないんだよ」
何となく淋しげに笑う。淋しげ、と思ったのもシャルルの勝手な感覚だ。吟遊詩人だから行きにくいのだとそう結論付け、シャルルは気にしない風を装って笑った。
「うん、大丈夫、僕一人で行けるよ」
じゃあ、明日の朝でお別れかな。
そう思うと、シャルルは自然と思いついたことを口にした。
「ねえ、サール。僕はこの土地のこと、よく知らないし、世の中のこともあんまり分からない。だから、正式に手伝いをお願いしたいんだ。サールにも都合があるだろうし、無理なら断ってくれてもいいんだ。ただ、この街でロイの手がかりを見つけたい、その手伝いをお願いしたいんだ。報酬だってちゃんと払うよ」
ふうん、と吟遊詩人はシャルルを見下ろした。澄んだ瞳は僅かに緑を帯びた薄茶。長い睫毛が気になってシャルルは目をそらした。
「そんなの、いやだねぇ」
「そう、そうか。サールも忙しいし」
「お前さんなんかに雇われなくても、可哀想で困っている子供の手助け位するんだよ。詰まんないことは言うんじゃないよ」
「サール」
「ほら、あの岩場で今夜は休もうよ。腹も膨れたけど、とにかく風が気持ち悪い。あそこなら少しはましだろう」
「うん。あの、ごめん。気に障ること言ったね」
サールの手がうつむくシャルルの髪をぐしゃぐしゃとなでた。
そのまま肩を抱き、「まだまだ、人を見る目がないんだよねぇ。しょうがないさ。あんたがあの婆さんに頭を下げてくれた時、なんていうか。嬉しかったけど情けなかった。ちょいとね、ひねくれてしまうのさ。お前さんが悪いわけじゃない。お前さんの気持ちに感謝しているんだよ、だから、手伝わせてほしいよ」と笑った。柔らかで綺麗な声はシャルルの胸に沁みた。
「ありがとう」
いい人に出会った。
ジャンの言葉をまた、思い出す。
僕にもあいつみたいな真似が、できるのかもしれないな。

風でゴミが入ったといいながら、シャルルは何度か目をこすった。
サールの提案で、シャルルは岸壁の下で一晩休むことにした。
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chachaさん♪

ありがとうございます!
サール、お気に召しましたか♪
とにかく、彼の声はきれいという設定です。
きれいな声の人というのは、とても憧れなのですよ~♪
男性も女性も。
ここは、ぜひ。chachaさんの耳元に何かささやかせてみましょうか。

シャルルの道行きも、これからまたバタバタとなっていきます。
ふふ、楽しんでいただけるかなぁ~?

ふぉぉぉ♪

きたこれ!またもやイイ匂いのする男性が登場しましたね~くんくん♪
こりゃ~イイ男の匂いだよっ!(誰だよ
サールさん、私的には仲良くなりたいタイプです~いいな~♪
シャルルも一人じゃやっぱり心配だったし。良かった、いい人そうだからこれで安心ですね☆
吟遊詩人って毛嫌いされている場所も多いみたいで…なんだか勝手に、自分の作品のアモーガスとダブって見えたりして…
うん。参考にさせてもらいます(笑)

ロイ、見つかるのかな、ロイ。
何だか危なげな話もちらちら見えましたが…売買に関わったりしてなければいいのだけれど@@;
ロトロアの言動にもひやひやしつつ…
あ~!また来ますっ!><

藤宮さん♪

ふふ。そうですね、サール。
不思議な人。
見知らぬ他人をこんなに簡単に信用してしまうシャルルも、可愛い性格をしているのだなと(苦笑)思います。

ああ、作者が一番腹黒いな…(笑
ロイの行方…もうすぐ、ええ。後ちょっと。

そういう展開ですか!?なんて、驚かせられたら嬉しいのだけど~。なにしろ、凡庸な回路しかもてない頭脳なので(笑
楽しんでいただけるかな~。(どきどき…)

おおー

サール、なんだか不思議な人ですね。
歌う声は、人を惹きつけるようなのに、普段のしゃべり口は何というかな。まったりしていて、そのギャップが素敵だというか。

シャルルちゃんも、道連れができてよかったですー。
何も知らない土地で一人っていうのは、結構大変なものですし。

しかしロイは、一体どうなってしまったんでしょう。
そもそも目指したのは違う場所だったはずなのに、ル・アーブルにいたんだとしたら……はい、見つかって終わりなんて、簡単な話じゃないのでしょうか。

もっと情報が集まれば、わかることもあるのか……。
うう、先行きがちょっと不安ですが。
こっそり、じっくり、次をお待ちしておりますー!
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