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『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ⑧

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』



やけに高い笑い声に、シャルルは口を自然に尖らせていた。ロトロアの真意など分からない。だけど、なにか変な方向になっている。ロトロアはシャンパーニュ伯を裏切ろうとしている。冗談めかしているものの、シャルルを残すということはそういうことらしいと分かる。

なんでだろう。
僕は、ただの孤児だったのに。

不意に悲しい気分がせり上がるから、もう一度ワインを口に運んだ。
結果的にまたむせているものの、それでも今度はちゃんと飲み込み。それが胃の中でくすぶるように熱くなるから、ついでににじんだ涙にも、うるさい黙れと更にもう一口。
シャルルは苦い顔をして自分自身と戦っていた。ただの、つまらない存在の自分と。

肩をとんと叩かれ、顔をあげればロトロアが笑っていた。
「お前は俺の側に置く。そう決めたのだ。シャルル、ロイのことを話せ。どうせベルトランシェに報告するんだろう」
それがやけに優しげで、余計に顔が熱くなる。
シャルルは慌ててサールに視線を逃し、話し始めた。

ロイが現国王のルイ九世の兄であること。死んでしまったことになっているフィリップだということ。彼はランスで行方不明になったが、この街の領主ヌーヴェルの手によって、イングランド王ヘンリー三世へと身柄を移されたこと。
ロトロアもそれには、ほう、あのタヌキ爺め、と呟いた。
「同じ売買でも、王子様ともなると違うんだね。僕、てっきりどこかの奴隷船で働かされるとか、農場の下働きとかになっちゃったら、ロイじゃあ耐えられないなんて心配していたんだ」
「お前は短絡的だな。売り手が商品の価値を知れば、おのずとそれに見合った買い手を探す。お前をジャンヌの子だと噂しただけで、この市場に集まる下賎な仲買人が躊躇したのと同じさ」
「やっぱり、あんたが噂を広めたんだ」
「ああ、悪いか?お前が先にそれをヌーヴェルに言っていたら、あの場所には出品されなかっただろう。賭けだったんだが幸運だった」

シャルルは黙った。言うわけがない。それが真実じゃなかったことくらい知っているんだ。僕は、知ってるんだ。ただの孤児だって。
シャルルはやりきれない気分で手元に残っていたワインをぐんと飲み干した。

「さてと」
立ち上がったのはサール。
「まさか、ここで泊まるおつもりじゃないでしょう?」
「ああ、宿を取ってある。サール、お前は」
サールは肩をすくめた。
「吟遊詩人ですからねぇ」
「詩をやめればいい。旅人に扮するのに吟遊詩人である必要はないだろう。商人でも流れの騎士でもいい」
ロトロアも立ちあがる。並ぶと丁度同じくらいの身長だった。年齢もほぼ同じくらい。サールはふふふと笑った。
「詩が好きなんですよ。それにねぇ、こういう商売は相手の態度で人柄がよく分かる。シャルルはジャンが言うとおり、情の深い優しい子でした」
んあ!?と、半分酔いかかっているシャルルは立ち上がると同時によろけた。
「確かに、ロトロア様。シャンパーニュ伯に届ければ、何に利用されるか分かったものではありませんね。ジャンヌ様のお子様では」
「そうだな、では、サール。気をつけて。テオによろしく伝えておけ。俺が何をしようとも、いずれお前の役に立つはずだとな」
「ええ?」
先ほどと言っている内容が随分違う。サールは困ったように頭をかいた。
「両方伝えておけ。俺の行動を裏切りと取り、オマージュを解消するのならそうすればいい。判断はあいつに任せる。ただ。俺の方から忠誠の誓いを取り消すことはない」
はぁ、と笑いながら溜息をつきサールは「結局、ロトロア様。突き放すようでいて背後で支える、だからティボー四世様も信頼するのでしょうねぇ」と笑った。


そんな様子を半分閉じかけた目で見つめ、ロトロアに促されるまま馬に乗り宿についたシャルルは、心地よいベッドに身体を預けてやっと「はぁ」と心から安堵の息をついた。
「ああ~いいなぁ。やっぱり。これでお湯に入れたらもっといいのになぁ」
「パリに着けば、何とかなるだろう。お前の臭さには俺もまいるが、我慢してやる」
「なんだ、その理屈。偉そうだな。それに、いつパリに行くって言ったんだよ!僕はイングランドにいるはずのロイを探すんだ」
酔いの勢いか、シャルルは仰向けになったまま天に手を伸ばす。まるでその先に、ロイの姿が見えているかのように。

脇に人影を感じ、横を向けばロトロアがベッドに腰掛けていた。
マントを取り、上着を脱いで今は絹の服。実際はかなり逞しいはずなのに、それを着ていると華奢に見えるから不思議だ。その下に憎らしい位しっかりした筋肉を持っているのにさ。睨むついでにシャルルは憎らしいそれをツンツンとつついて見る。
「なんだ?」
「なんでもない」
言いつつ、つつく指は止まらない。
「くすぐったいだろ」
「あ、そう」
そう言ってごろんと背を向ける。拗ねた様子のシャルルに、ロトロアは眉を下げ笑った。
「お前、酔っ払いか。靴は脱げよ」
「脱がして」
「威張るな」
言いながら、酔って舌っ足らずなシャルルが面白いのか、ロトロアはシャルルの足首を捕まえる。
紐をとき、靴を脱がした。ベッドに落ちた泥も払い落す。
大した品ではないが、せっかくのドレス姿、泥に汚すのはもったいない。
ロトロアはふと、無邪気に伸びをするシャルルを見つめる。そのねじった腰のあたり、尻の丸み。転じて華奢な肩から首、胸元に視線が流れる。
獅子の子は睡魔に任せて髪を無造作にかきむしると、枕を敵のように乱暴に抱き寄せる。傍にいた白イタチは迷惑そうに飛び退いて、荷物の袋に身体を丸めた。
尻尾をふらふらさせる生き物をしばらく眺めたロトロアは、「なんでさ、嘘つくんだ」と。小さく呟いたシャルルの声に振り返る。
「なんだ?俺に言っているのか?嘘?」
「知ってるんだ。僕は、ジャンヌ様の子供じゃないんだ。ただの、価値なんかない子供なんだ。生まれた時に誰も祝福しなかった。誰も喜んでくれなかった。だから、捨てられた。そういう子供なんだ」
鼻声になっているのは、シャルルにも分かっていた。
酔っているのも確かだが、どこかでちゃんと考えているのも確か。だからこそ、いつもよりずっと素直に言葉を並べる。
「リシャールに聞いたんだ。僕がただの孤児だってのは、あんたも知っているんだって。知っていて、どうして傍に置くんだ」

放った言葉は自分の立場を確かめるため。返事によっては足元にあった基盤すべてを失いかねない攻撃。相手をも傷つけるかもしれない、同時に自分が傷つくのも覚悟の上。
だからだ。だから涙が出る。
別にロトロアに「お前など要らない」と言われたって平気なんだ。もともと強引に連れて来られたんじゃないか。敵だったんだ。憎んだことだってある。なのに、これを言い出すのに時間がかかり、言ったら言ったで涙なんか出ちゃうのは、分からないけど僕が弱いからだ。ロトロアがいなくたって、ロイを探すんだ。それは変わらないんだ。

分かっていた。ブリュージュに帰ってからふてくされていたのも。自分の迷いが何故なのか分からず、それに苛立ってリシャールに八つ当たりしたんだ。
ロトロアがいなくても平気、そう信じ込もうとするのに、リシャールはいつも逆のことを言うんだ。会いたいんだろうとか、恋しいんだろうとか。
ぎゅ、とまた涙が溢れそうになる。

返事がまだなのに気付き、シャルルはごろりと身体をロトロアの方へと向けた。
泣いているのに気付いたのか、ロトロアは目を細めた。
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わ~っ!!♪花さんっ!!

ひゃ~お久しぶりですっ!!
よかったぁ、新生活、いろいろと楽しそうですね♪
一番楽しい時期ですよ~時間もお金もない時期だけど、ファイトと知力、何より心が新鮮だもん~♪

ブログ、作品も楽しみだけど、新生活のどきどきをちょっぴりのぞかせてくれると嬉しいなぁ♪

ここまで、長かったでしょう?ありがとう!
最近はドロドロと内面も書いてしまうので長くなってしまう。推敲したら削るところたくさんあるはずなんだけど(笑

ラブな展開?…うふふ。
期待しているのかな~?
期待にこたえられるかな~?

どちらにしろ♪
楽しんでいただけると嬉しいっ!
またいらしてくださるのを楽しみにしてます~♪

超絶お久しぶりです!!

ようやくここまで読ませてもらいました!
シャルルちゃんの切ない気持ちと、ロンロンの複雑な心境が遺体ほど絡まって伝わってきて。
でもきっとこの2人だから、ラブな展開にはならないんだろうな…だったらどうなるの!?と自分の中でぐるぐるしてます=3
うわぁ、気になる気になるぅ!

永らくご無沙汰しちゃってスミマセン。
今は新生活に慣れるのにいっぱいいっぱいで、自ブログの方も放置中です><
ブログを閉じるつもりはありません。でも、失礼ながら、まだ放置したままの日々が続きそうです;;
もう愛想尽かされちゃったかも知れませんが、またひょっこり顔を出した時には、気まぐれに相手してやって下さい。
長文乱文失礼しました。

藤宮さん♪

うわわ~(←!?)
シャルル、痛々しい…(笑。

キャラには(人には)必ず二面性がある、と思っているの。
だから、表の顔と心のうちとは違うキャラクターが多い。
その中で、シャルルは一番素直に行動や顔に出るかも。

実は、リシャールが言う「ロトロア様がいれば元気になる」というのは、あながち間違いでもないのです。
ロトロアの軽い態度やいい加減な行動で、シャルルはいつも怒ったり怒鳴ったり、すねてみたり。発散しているんですよね~。
自覚はないけれど…。

さて。
ロトロアと二人きりです。

受難…。

次回…

怒られたりして…!?

嵐の前は静かにしているのがいいです、

ということで、悪者作者は口を閉じよう…

なんとなく

考えれば考えるほど、シャルルちゃんには自分の出生がのしかかってくるのですね。

いつもは強すぎるくらいなのに、ふとした瞬間に弱くなる。
そういう強さも脆さも合わせてシャルルちゃんなんでしょうが……何というかな。

ジャンヌ様の子供じゃない。その言葉がいまだにシャルルちゃんを縛っている。それくらい信じていた。

ロトロアがどう思っているのかはわかりませんが、今のシャルルちゃんは本当に痛々しいですー。

苦難に受難、きっと乗り越えてくれると信じていますが、今は早く元気になってほしいですよー!

先が気になりますが、ゆっくり追いかけていきます。
続きを期待しながら、またお邪魔させて頂きますー!
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