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『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ⑨

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』



「どうしてだよ。ただの孤児なのに。どうして側に置くんだ?」
その鼻声が憐れみを誘う。
ロトロアの笑みが消えた。
いつもどこかにやけた顔がそうでなくなると、真っ直ぐ見つめられると。どうしていいかわからず、シャルルはむくりと転がり枕に顔を押しつけた。
「僕に利用価値があるから、捕まえたんだろ。連れて来て契約まで結んで。だけどもう価値がないって分かったんだろ」
「手放して欲しいのか」
低い声に顔を上げる。
振り返ればロトロアの手が頬に触れていた。
温かいそれが涙を拭ってくれているのだと思い目を閉じた。
「ちが、そうじゃなくて。その、理由を知りたい」
「側にいたいのか?」
だから!
「そういうんじゃなくてさ!僕はあんたの気持ちを知りたいんだ!シャンパーニュ伯まで裏切って、僕をそばに置くってどういうことだよ」
「知ってどうする。俺がそばに置きたいといえばずっといるのか?いらんといえば去るのか?お前はそんなことに左右される人間か」
「に、人間って、あの。そうじゃなくてさ。僕は騎士になりたいし、そばにいればロイのこと探せるし。正直、修道院の孤児じゃ絶対に出来ない生活をさせてもらってるし」
「だったら、聞くな」
「へ?」
「俺の考えで左右されるようなお前でないなら、俺の気持ちなど気にするな。俺はしたいようにしているだけだ。それが矛盾して見えようが、間違っていようが。すべての結果を俺は受け入れる。だから俺は好きにさせてもらう」
「わかんないよ!僕はあんたの気持ちを知りたいって言ってるんだぞ!相手の気持ちは分かった方がいいだろ。そうでなくちゃ、友情とか恋愛とかそういうのできないぞ?」
「お前と恋愛したいとは思わない」
恋愛!?
静かな黒い瞳が、そばに。
動こうとし、ロトロアの手はシャルルの顎を捕らえている。
「な!?」
キスで言葉をふさがれる。
突き放そうとした右手は男の手の中。うう、と呻けば侵入する舌に返って後悔する。押しのけようと思うのに、信じられないくらい重い。
好きなように、するって、これか。
怒りとも悲しみともつかない、荒々しい感情が腹に生まれる。納得できない。
恋愛ではない、というくせに。
好きだからそばに置くなら、愛しいから抱きたいと言うなら分かる。
好きなようにしたいからこうする、それは身勝手って言うものじゃないのか!?
「っん、ばかっ!放せ、ばか」
膝蹴りもただもがくだけに終わる。温かい手のひらが頬に触れていて。見上げればロトロアはどこか焦点が定まらないような、陶酔した眼差しをしていた。そう、獣、のような。
嫌な予感にシャルルはギュッと目を閉じた。見たくない、こんなロンロンを、こんな現実を。
「いやだ!馬鹿、やめろ!」
すっかり馬乗りのロトロアに抗議を繰り返す。身をよじっても、足をばたばたさせても腹の上にしっかりと脚を据える男はびくともしない。
両手は束ねる枝のように押さえつけられ、哀れな獅子の子は得物と化していた。
「今日は、イタチはいないんだな」
余裕とも思えるロトロアの台詞に、悔しくなって「ばかばかばかっ!助けて、誰か、リシャール、ジャン、ロイ……」
「暴れるな」
耳元、囁くそれにぞくりと。体のどこかが震えた。
「やだ」
気付けばそれしか呟けない。情けない鳴き声。
哀れなそれはロトロアを増長させるだけなのかもしれない。じっと、押さえつける大きな体が拍動を伝え。それが自分なのか、ロトロアなのか分からなくなる。

「誰の子供かなど、どうでもいい。いずれ誰もが一人で生きて行く。そうだろ?そこに拠り所を求めるのはお前の弱さだぜ」
さらけ出される肩、そして胸元。小さく抗議するが。返ってロトロアは嬉しげにシャルルのまぶたに口付けた。
「悔しければ強くなれよ。俺のものにしたいと思うから、そばに置く。お前がどう思ったとしても、周囲が何を反対しようとも。俺はお前を」
そこまで言って、ロトロアは黙る。
「なに?」
尋ねてどうするとも、考えがあるわけではない。
わけの分からないロトロアの思考が少しでも理解できるかと、その試み。
「いや。ロイに会いたいなら、探せ。見つかったなら、そのとき真にお前をあいつから奪ってやる」
「じゃ、じゃあっ!その時まで、こんなのしないでさ…っ」
びくりと。体が反応し。
「だめだ。目の前の得物を逃すほど、お人よしではないな、俺は」
触れられるたび、小さく抗議するシャルルに「初めてだろう。こんな風にされるのは」と楽しそうに笑いかける。
悔しいのも腹立たしいのも、すべて温かい涙と吐息に変わる。それを唇で吸い取られれば、もうシャルルにできることなどない。
哀れな獅子は、小さな爪を突き立て鳴いた。



許さないんだから。
絶対にさ。
呪いの言葉をぶつぶつと呟きながら、シャルルは目覚めても毛布から出ようとしない。
一晩で人生の半分を経験してしまったような疲労感と、不思議ながら達成感に似たものもある。女である自分をこれほど呪ったこともないが、それがそういうものだと知ると僅かに諦めに似た心地にもなる。
何をどう頑張ってもロトロアに敵うことがなかった。
それは自分の髪の色を憎んで変えたいと願っても、変えることなど出来ないのに似ていた。目の前にあるチーズとパンが果物でないことを呪うのに似ていた。
呪われたとしても、チーズに罪はないのだ。

僕が女であることは、罪じゃない。

変な発想になったものの、なぜか涙がこぼれた。
これまで自分が女であることがいやだった、そのために捨てられたのだと信じていた。それがそうでなかったのだとしても、中々その感覚は捨てることができなかった。
なのに女扱いされ、男との違いを見せつけられれば納得せざるを得ない。
僕は女だ。
悔しいけど女だ。
でも、だからなんだ。それの何が悪い。
どこの誰とも分からない人間だ、しかも女。それを認める強さが欲しいのだと、ロトロアの言葉がなぜか理解できた。
そう、何が悪い。僕が僕で、悪いことなんかない。
反発にも似て、自然とシャルルは現実を受け入れようとしていた。

「ほら、起きて食べろよ。すぐに街を出るぞ。ヌーヴェルがそこまでするかは分からんが、街道を封鎖しようとするかもしれない。戦いになるぜ」
うーと唸るだけの少女に、ロトロアは顔を覗き込む。
「どこか痛いか?」
そう気遣う顔が神妙で、シャルルは顔をしかめた。
「許さないんだからな!」
「痛いなら言えよ。それとも、もう一度確かめたいか?」
「何をだよ!ばか!」
ロトロアが毛布を取り去ろうとするから、慌ててそれにしがみつき、シャルルは柔らかな蓑虫のまま起き上った。
窓からさす日差しと風が、ふわと髪を揺らした。
テーブルでチーズに手を伸ばす白イタチがこちらを振り返り、早くおいでと首をかしげる。
「……お腹すいた」
そう吐き捨てて、シャルルは立ち上がることにした。
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楓さん♪

おはようございます♪
ほ~。男性の反応はやはり違うんですね!!
女性目線だと、「なにをする、ばかぁ!!!」となりますが(笑

倍増、倍増…v-405
書いていて一人「やばい、これ」と思いつつ。
流れとしてはロンロンを止められなかった、私の気持ち。ばれてます?
なるべく、シンプルにさせていただいております(^^;)
ご想像にお任せします。

女性の場合、男性の一線を越えるという感覚より、重く受け取られがちです。
ただ、人さまざまだと思うし。初めての相手や自分の気持ちでかなり左右されます。

なんだ、という感覚の人もいるだろうし、
目からうろこ(!?)で人生観や性格まで変わってしまうかもしれない。

シャルルの場合はどこか、吹っ切れる感じかなぁ(笑
女、というものに対する、嫌悪感。大人になることに対する嫌悪感も混じったそれを。こうなったら乗り越えるしかないわけです。
自覚としては、「こんなことがあっても僕は僕だ、」なんて程度でしょうが。

ま、まだまだ、リノーラの域まで行きませんが…。
リノーラみたいな女性を主人公にしてみるというのも、面白味があるかもしれません~。
それこそ、自分自身の内面を表現してしまいそうで、ちょっと怖いですが(苦笑)

男性としてはロンロンの行動は、ま、当然、ということなのかしら?
そこ、気になります(^∇^)/

よしきた!

ふむ。思いのほかさらりと朝が明けました。
残念(をい

僕は男なので、押し倒す側の気持ちは分かっても、処女を失った時の女性の心理はよく分からないのです。想像はできても、所詮それは男目線の一方的な押しつけ妄想でしかないんです。なので、是非もっと克明に字数を割いていただければ今後の参考になるのです。
というわけで、もう一度推敲して倍増して下さい(だからをい

ここ、凄く重要なターニングポイントですよね。
少女から女性へ。
ロトロアに対する考えも変わりそうな気がするし、ロトロアだけじゃない、シャルルを取り巻く男性すべてに対する考えも変わるかも知れない。もっと大きく、自分を取り巻く環境・境遇についても研ぎ澄まされるかも知れない。そして、何かを失うのかも知れない。妖怪が見えなくなってしまうように。

松果さん♪

こんなです~(><)
世のお母様、お父様ごめんなさい。

この時代。うん。男尊女卑、という言葉すらない。

騎士の叙任で「未亡人」「孤児」「神に仕える貧しきもの」を護ります的な宣誓をさせるのも、裏を返せば現代的な倫理観なんかないから…。

もともとロンロンは「女など一皮向けばどれも同じ」と豪語する人間ですので…。彼の性格上、目の前のご馳走を無駄にはしなかったわけです…。
(あんまり優しいとシャルルが惚れちゃうかもしれないし。まずいと思いまして…作者のひねくれた先読み&先手です…笑)

立ち上がったシャルル、はい。ご期待通り、逞しく生きます♪
小さなエピソードでばたばたとしながらも、話的には大きな展開もしていかなきゃと思っていますので。そろそろ。じっくり、楽しんでいただけると嬉しいです!!

藤宮さん~

うは~ごめんなさいっ(@@;)
こんな展開です。迷った末に…(殴)

ロトロアの理由…うむ~(笑
いろいろと企む人だけに多くは語らないのです。
いずれにしろ、ロトロアという人物は、多分こういう人間なのというところで、今回は悪いことしちゃったし、いずれ……。

ロイとの再会がますます複雑な心境になります、そこも狙いだったり(ひどい?)
でもシャルルの真っ直ぐさは変わりません♪ますます頑張ります。ロイとの再開を目指してっ!楽しみにしていてください♪もうすぐ、ですっ!!(←本当かな?)

久しぶりにコメントです…って ひゃ~っ!

ロンロン、キサマってやつは~!まだ食べちゃだめだろ~!
でもこの時代に、シャルルのような立場で夢を叶えようとすれば、誰かの庇護を受けねばならないわけで、だからいつまでも無垢でいられるとも思えないわけで……
同年代の娘を持つ親の一人としては、胸の痛む展開ではあります。でも時代も社会も今とは大きく違いますし。
チーズは果物にはなれない。だからって望まない扱いを受ける云われはない、と。現代人ならそう主張できますけど、まだ権利意識すらなかった頃ですからね(涙)

普通ならこんな強引に迫られるとますます自分が女性であることを呪うところですが、逆に自分の性を肯定して「女で何が悪い」と逞しく立ち上がるあたりがシャルルらしいです。
どんな状況に置かれても、獅子は獅子。
がんばれシャルル!

うむむ……

おや……こういう展開になってしまいましたかー。
シャルルちゃんとはもう言えないかもしれませんね。まあ、何にしてもじめじめ悩むのは似合いませんが。

ロトロアがシャルルをそばに置く理由は、何なのか。
好きとかそんな単純な理由ではないのでしょうが、言いかけた言葉の先が気になります。

……が、普通には明かされなさそうですねー。
何にしても、私はロイ派なので(笑)、ロトロア何してくれたんだーと思ったり思わなかったり。

なんだか本当に嵐の後みたいですが、これからどうなるのでしょう。
予想がつきませんが、ロイとの再会を願って! またゆっくり追いかけていきますね♪
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