08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ⑪

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』

11

わざわざ船で運んできた黒塗りの四頭立ての馬車に、ヘンリー三世はヌーヴェルを招待した。新しいばねを利用した車体はフランク王国のどこのものより乗り心地が良いのだと話した。
「まこと、これは素晴らしいですな」
ヌーヴェルが髭を撫で、感心したように眼を細める。その視線が傍らの従者に向けられていると気づき、ヘンリー三世は小さくため息を吐いた。
「二年ぶりか、お前のおかげで私は貴重な同胞を得た。ノルフェノ、かしこまらずともよいぞ」
「はい。陛下。ヌーヴェルさん、あの時はお世話になりました。貴方のおかげでこのように、素晴らしい主君にお仕えできます」
フードから顔をのぞかせた青年、ノルフェノは穏やかに笑って見せた。
ヌーヴェルが目を見開き、
「ああ、声が変わられたんですね。ちょうど、そういうお歳でしたね。あの時は随分弱っておられて、それこそ歩くこともままならないご様子でしたが。お元気そうでなによりです。先日の戴冠式にもお出になられたとか、いかがでしたか。私のようなものは、それこそ噂で耳にするくらいしかありませんので」
ああ、と。それはヘンリー三世が話を継いだ。
「これのために連れて行ったのに、熱を出したのでね。人ごみは避け、自室で休ませていたのだ。代わりに私は麗しい乙女を傍において観覧できたけれどね」
「麗しい乙女とは、羨ましい限りでございます」
「共にイングランドにと誘ったのだが、惜しいことをした。ノルフェノも憶えているだろう?ジャン・ド・ジョワンヴィルと同行していたリオネットという少女だよ」
「ええ……」
「リオネット(獅子の子)、ですか?」
ヌーヴェルが声を大きくしたために、ノルフェノの声は遮られた。
「なんだ、ヌーヴェル」
不機嫌に眉をひそめたヘンリー三世に、ヌーヴェルは顔を近づけた。
「あの、リオネットとは、リオン(獅子)とも呼ばれる、騎士見習いの少女のことですかな」
国王とノルフェノが顔を見合わせるから、ヌーヴェルはさらに続けた。
「数日前、リオンと名乗るベルトランシェの使いが参ったのでございます。ロイと言う少年を捜していると」
ヌーヴェルは馬車が城に到着するまで、シャルルのことを語って聞かせた。
「なぜ、私に売らなかったのだ」と憤るヘンリー三世に慌てて弁解をしつつ、ヌーヴェルはまだ、この近辺にいるはずだと告げた。


この城で最も広く、清潔な客室に通され、ヘンリー三世は身の回りの世話をしようとする数人の女中を追い払った。
荷物を片付けようとするノルフェノに、「お前も何もしなくていい。こちらへ。聞かせてもらいたい、ノルフェノ、いや。フィル。なぜリオネットがお前を探すのか。ランスで出会ったのも、偶然とは思えない」
と、厳しい表情で青年を見つめた。
窓辺に立ちつくす国王に、ノルフェノは膝を折る。
それでも、思いつめた表情のまま、ただ床を見つめるだけ。
「言いたくないのか?フィル、お前が宮廷の保護から逃げ出し、この街に逃げ込んだ、その理由は聞いていない。亡きものとされたお前のことは不憫に思う。だから、こうして傍に置いている。私に隠し事はするな」
真っ直ぐに見つめるヘンリー三世の瞳を、数秒間黙って見つめた後。青年は語り始めた。
二年前の秋。自分に何が起こったのか。

シャンパーニュの騎士に追われ、逃げ込んだランスの街。そこで知り合ったシャルルという少女。捕らえられ、自らがすでに亡き者であること、王位継承権も奪われ公の場に姿を現すことも出来ない存在なのだと、知らされたこと。
詳細を知るはずもないが、シャルルは捕らわれの身の自分に同情し助けようとしてくれた。一緒にランスを出ようと約束したものの、果たせずに一人旅立った。
「探しているとは思いませんでした。先日、ランスで彼女の存在には気付きました。ですが、私はもうロイでもフィリップでもありません。敢えて名乗ることもないと思い、黙っておりました。陛下に隠し事をしようとしたのではありません」
語り終え、静かに視線を自分の膝に落とす青年。その手をヘンリー三世がとり、立ち上がらせた。
「ノルフェノ(孤児)だなどと、冗談めかした呼び名を好んだ。私はお前が不憫でならない。お前がリオネット、いやシャルルを望むなら、手に入れてもいいのだよ」
自分と十以上も歳の離れたロイを、ヘンリー三世は弟のように可愛がっていた。
家族の愛情に恵まれないのは、互いに似ているように思えた。
ランスから真っ直ぐ、一人北に向かったという少年。熱にうなされ、やつれた様子のロイが、決してパリには戻りたくないのだと懇願した。自分を捨てた王国に残りたくないのだ、だからイングランドへ渡りたいのだと。その姿を今も鮮やかに思い出し、ヘンリー三世はその髪をなでた。
「お前、また熱があるね。良いから休みなさい。シャルルのことは調べればすぐに分かるはずだ。中々腕の立つ子だよ。お前にもあの施療院での戦いを見せたかったな。リオネット、獅子の子の呼び名に相応しい」
「陛下」
珍しく、声を少し大きくし主君の言葉を遮ったノルフェノに驚き、ヘンリー三世は言葉を飲み込んだ。
「私には、陛下のご紹介くださったエリン嬢がいらっしゃいます」
真っ直ぐ、穏やかな美しい笑みを向けるノルフェノにヘンリー三世は一つ息をついた。
「生真面目な。どうせまだ会ってもいない。少し早すぎたかもしれないと考えてもいる。第一、リオネットとは結婚するわけでもない。まあ、いい。お前は自分の体のことだけを考えていれば良い」
深々と頭を下げ、ノルフェノは隣接する自室に退いた。
しなやかに細い身体は十五歳という年齢の少年にはそれほど特別という感じはないが、幼い頃からの病弱を思えばやはり健康な子供とは違うのかもしれないと、ヘンリー三世は思う。時折見せる思いつめた表情に、もしや自分の境遇を呪う憎悪が隠されているのではないかと感じられた。幼い頃から死と隣り合わせに生きてきたその感覚はヘンリー三世には理解しがたい。周囲の勧めるまま遠縁のエリンと婚約させたが、今は多少の後悔と迷いが顔を覗かせていた。
リオネットを思い出した。
言いたいことを言い、笑い怒るだろう少女は、ノルフェノには少し眩しすぎるのだろうか。
あるいは逆に、影を振り払い心の闇に明かりを灯す太陽になりうる可能性もある。その暗がりに何があるのか、照らしてみなければ分からないではないか。
ヘンリー三世は女中を呼び、着替えをさせながらどうやってノルフェノに太陽をプレゼントしようかと思案を始めた。
関連記事
スポンサーサイト

楓さんo(^▽^)o

こんばんは(^-^)/
そう、まだ再会は…?
ロイはシャルルと対比させてますので、
寡黙です。でも、美少年設定です(?)

ヘンリー三世は本当にフランス人を重用していたので、
役立ってもらうことにしました( ´ ▽ ` )ノ
どう活躍するかは、お楽しみ~。
うふふ、ありがとうございます!

こんにちは

今日はあまり時間がないので、少しだけ読みました。
ああ、
またすれ違い、ですか。

ロイの心情が知りたいですね。何かこう、まあ昔からそうでしたが、決して本心を語らないというか、人に対して距離を取ろうとしているというか。

さて、再会まで秒読みでしょうか。
それともまた、離れてしまうのでしょうか。
ヘンリーの策謀?に期待します♪

藤宮さん♪

ありがとう~♪
シャルルがロイを思い続けたように、ロイにも何か…。
同じ想いだと、いいんですけど~♪
二人が別々に過ごした時間はどんな壁を作るのか…。
状況も、変わっていますし~。

再会…。
うふん。
楽しみにしてくださいね~♪

それぞれに……か

ロイも色々と思いを抱えているのですね。

だからシャルルに気づいても声をかけなかった。
どこまでもすれ違う二人。心までもすれ違っているのかは分からないけれど、それは出会わなければわからないかな?

太陽みたいなシャルルちゃん。ヘンリー三世ではありませんが、ロイの心を照らす光になれるのでしょうか。

でも、始まりのランスの時とは二人とも変わってしまっています。
だからただ、笑って再会できることはないかな……と思ったり。

色々悩むことはありますが、再会が二人にとって幸せなものになればいいと思っています。

ではでは、ゆっくり物語を思い返しながら、続きをお待ちしてます。
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。