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『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ⑫

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』

12

セーヌ川を右に取り、道ではない林の中を進んでいたシャルルたちだが、まだ日の高いうちに留まることになった。
身を隠してくれる林は次第にまばらになり、遠く見えていた台地が今はすぐ近くに見える。川沿いの平地は遡るにつれ狭くなり、左手の街道が川に迫れば必然的にシャルルたちの隠れる場所はなくなっていく。
林間にちらちらと見えていた街道と右手のセーヌ川とはその先の橋で出合うべくしてつながっている。橋が封鎖されているためか、商人や農民らしき人の荷馬車が街道にひしめいていた。

「ロンロン、どうするの?橋は、ほら、衛兵が封鎖しているし、でも街道を渡れば目立っちゃうし」
「夜、だな」
「ここで、待つの?」まだ日は高い。
「通してって頼んでさ、ダメだったら、力づくとか」
ロトロアは黙ってシャルルを見下ろした。
獅子はタテガミをくるくると指先でかき混ぜ、首をひねると「怖いの?」と、笑った。
その挑戦的な視線にわずかに溜息を漏らし、「それだから、売られるような羽目になる。短慮にも程があると。ま、ここにリシャールとローレンツがいたら言うだろうな」と。にんまりと笑った。
「て、ことは?」
「橋を守るのがどの程度の者たちかは分からんが、通常、騎士がそんな仕事をするとは思えんな」
「じゃあ、下っ端だ」
「ほら、見てみろ。街道の封鎖で、大人しく戻るものもいるが多くは不満げに残っているだろう。商人や農民にとって、街道の封鎖は死活問題だ。そう簡単に従うものばかりじゃないのさ。行くぜ、シャルル」
「おうっ!」
「お前、もう少し可愛い返事は出来んのか。昨夜みたいな」
「うるさいっ!」
イタチの剣を振り上げるシャルルに、ロトロアは笑って、馬を駆る。
街道では進まない人々を掻き分けて、大柄な商人が一人、馬と荷物を引きながら強引に前へと進み始めた。
それを迷惑そうに見送る農民の親子がいれば、自分もと、乗じて後に続く若者もいる。
「どうなっているんだよ。邪魔だぜ、お前ら」
怒鳴りながら集団の先頭を切る商人に、脇から騎馬が二頭加わった。
商人は驚いた様子で身構えたが、ロトロアが「橋が封鎖されているらしいな、昨日までは通れた橋だろう?」と笑いかけたので、商人は怒らせた肩を下げて鼻息を荒く吐き出した。
「そうでさ、俺は今朝この橋を渡って港に商品を届けたんだ。今日のうちに売り上げを持って帰らなきゃならん。家で子供が待っているんだ。港で買った新鮮な魚を食わせてやると約束したんだ。腐っちまう」
「ほう、それは困ったことだな。我らも急いでいるのだ。多少、強引な手を使ってでも通るつもりでいるが。その隙にお前がすり抜けたとしても、誰も咎めはしないだろうな」
男は、馬上の騎士を見上げ、それから大きめの口から歯を見せて笑った。
「そりゃいいや。あんたらより先に橋を抜けたとして、恨みっこなしですぜ」
「ああ、もちろんだ」
「それなら、僕も」と、ついてきていた若者が、手を上げた。
ロトロアが振り返れば、多くの真剣な視線を受け止める。
「いいか。我らは我らの好きなようにする。お前たちもお前たちの責任で行動しろ。お互い干渉はなしだ。結果、損をするものも得をするものもいる。納得できる奴はついて来い。巻き込まれたくない臆病者は、ここに残って近づかないことだ」
彼らの返事を待つこともせず、ロトロアは馬を正面に向かせた。
遠目にも馬上の騎士二人は目立つ。
向こうで橋の手前に立ちはだかる衛兵が、慌てて槍を構えた。

衛兵は五人。橋の手前で槍を構える彼らから見れば、大勢がまとまってこちらに向かってくる。先頭に白馬と栗毛の馬が二頭。騎乗しているのは騎士とその見習いに見える。
「待たれよ!この橋は通れませんぞ!ご領主ヌーヴェル様のご命令です!」
ロトロアの前で長槍を交差させる二人の衛兵。その背後に立つ年長の衛兵が叫んだ。
「さて、俺にヌーヴェルが命令など下せるものなのか、まあ、お前に聞いても仕方ないなぁ?」
すらりと剣を抜き放つロトロア。手にしたのは戦闘用の幅広の剣。シャルルもしっかりイタチ剣を構えている。並べば華奢なそれは、体の小さい騎士見習いには妙に似合い、その肩にいた本物の白イタチが慌てて荷物袋に逃げ込んだのを視界の端に収め、ロトロアは馬の腹を蹴った。
地上では誰よりも素早いシャルルも、馬上ではまだ素早いとは言えない。
それでもロトロアの動きに合わせ、ロトロアに向けられた長槍の一つを剣で叩き。折れはしなかったものの、持ち主は手を痺れさせ取り落とした。武器のない衛兵が慌てて腰の剣に手を伸ばすときには、目の前に馬の脚。避けるのが精一杯で、地面に転がった。
すぐ次に切りかかってきた兵の槍は、一瞬馬から落ちたかと見違えるほどぐるりと身体をひねり、避けた。と、すぐさまその手元を狙って剣で薙ぎ払う。叫び声と供に生暖かい渋きが頬に散った。手首を切っちゃったかな、うへ、と一瞬ひるむが、左方を見ればロトロアは剣で突き通した兵の身体を、煩そうに蹴りつけて血に濡れた剣を抜いたところだ。
その野蛮さはぞくぞくとシャルルの心をあわ立たせ、ぎゅと自然握る剣に力がこもる。
と、脇を先ほどの商人が、荷車を馬に引かせ駆けぬけた。ロトロアに切りかかろうとした衛兵の最後の一人は、それに驚き、街道に尻餅をついた。
座り込む男の周囲を、橋に向かう農民の親子が足早に駆け抜ける。無意識に伸ばした衛兵の手が一人の子供の手を掴んだが、その脇に立つ父親が慌てて殴りつけ。わが子を取り戻すとまるで何事もなかったかのように先を急ぐ。
殴られ、地に転がった衛兵を、五歳くらいだろう少年が振り返る。
その視線がシャルルの脳裏になぜか印象的だった。

街道は比較的なだらかな丘陵地を通っている。橋を渡ってからはしばらくセーヌ川は唸る鞭のように北へと湾曲し、街道からは見えなくなった。いくつかの村を過ぎたムーリノーというところで、再びセーヌ川の存在を認めたときには、シャルルたちは台地の上から夕日を弾く川面を見下ろす位置にいた。ロトロアの説明ではセーヌ川はこのル・アーヴルからルーアンにかけてが最も蛇行が激しいらしい。
はるか崖下のセーヌ川。左岸には高い崖が続く。その先は遠くて見えないがロトロアの話ではルーアンの方角へと続くらしい。ルーアンに延びた川はまたぐるりとシャルルたちの街道に近づき、街道の少し先にあるオワセル村で再び橋をわたることになる。

「遡上する船よりは馬の方が断然速い。先ほどわたったダンカル村の橋から次のオワセルまで、馬の速足なら半日ですむ。遡上する船なら一日はかかるだろう」
「じゃあ、ブルターニュの軍もまだずっと下流ってことだよね」
「ああ、これで一日は稼いだな」
「稼いだって?」言葉の意味というより。シャルルはロトロアが何を目的にしているのか、今更ながら理解していない自分に気付いた。
「あのさ、あんたはシャンパーニュ側の人間だよね。今パリに向かうのってさ、いいの?ルイの敵になってるんじゃないのか?」
ふん、とロトロアが馬鹿にしたように笑う。予想の範囲内の反応なのに、腹立たしいのはなぜだか。
「べつにさ、いいけどさ。どうだってさ!」
「ああ、ほうっておけ」
シャルルは夕日に目を細くし、渋い顔で口を尖らす。納得は出来ない、だけど、教えてくださいとも言いにくい。ロトロアとはいつもこうだ。どこかでいつもはぐらかされる。
「この先の橋もやっぱり封鎖されてるんだろ。どうやって行くつもり?」
強引に話題をそらした。
「なんだ、さっきの勢いはどうした」
「僕はそんなに急ぐ必要ないのにさ、一日稼いだとか、あんたの都合で急いでいるんだろ。理由も教えないくせに、僕をそれにつき合わせるつもり?お腹すいたし、休憩だよ。もうすぐ日も暮れるしさ」
巧みに話題を元に戻した少女に、ロトロアは肩をすくめ。
「やけに理屈をこねるな。まあいい。ほら、見てみろ。松明を焚き始めたから見えるだろう?先ほどの橋にはまだなかったが、ここには土嚢と柵が張られている。周囲は崖だし、そう簡単には通れないぜ」
「だから、休憩。なあ、お前もお腹すいたよな」
胸元にしがみついてじゃれるイタチにシャルルは味方を得ようとする。
ロンフォルトまで不意に立ち止まり、鼻を鳴らした。休憩だ、といわんばかりに。
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藤宮さん♪

うふふ。ありがとうございます!
ロトロアの思惑…うまくいくといいのかどうか?

ただ今ロイとのシーンを書いていまして。
なんていうか。にやにやとしながら…。
あま~いのが、いいなぁなんて。
日々の暑さをさらに倍増させるくらい~?

もう少し、ええ。もう少し、再会まで待っててね~!

色々ありそうな予感…

表面上は、元の調子に戻った感じがしますね。
ただ、何となくシャルルちゃんの言葉が空元気のような気がするのですが……気のせいかな?

何にしても、一日稼いだというロトロアの言葉が気にかかります。
何を目的に、パリに向かっているのか……。
正直予想がつかないのですが、そこはロトロアのこと。予想つかない思惑が動いているのかと思ったりしているのですが。

とにかく、これからのシャルルちゃんの戦いに期待して、じっくり追いかけていきます。
あとはどう再会するのか……そこももちろん楽しみに、次をお待ちしてますね♪
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