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『La croisade de l'ange 3:Le havre』 ⑭

La croisade de l'ange Chapter 3 『Le havre:ル・アーブル、港に詩う』

14

うっすらと白む空の元、まだ不機嫌な様子のロンフォルトと性格なのか大人しく従うブロンノに乗り、二人は街道を進み始めた。
次の橋までは速足で五分ほどの距離だ。街道の左に広がる農地と民家、細い川とそれを渡る小さな橋。山手から平野へ、セーヌ川に近づいていることが分かる。
向かう正面が東。空は白から黄色へと変化を始めていた。
夜明けの風が冷とシャルルの肩をすくませ、ケープの胸元に忍び込んでいる白イタチが眠そうに身じろぎした。
街道の脇の草地や農作業小屋の脇で、橋を渡れなかった人々が休んでいる。さっきまでは黒い影だったそれらも、ぐんぐん明るくなる東の空に照らされて、今は何なのかはっきりと分かる。
最初の橋を供に渡ったあの商人の馬車が、民家の脇にとめられているのを見た。
ああ、この家の人だったんだ。無事に魚を子供に食べさせられたんだろうな。
シャルルは幸せに眠る親子を想像し、自然と口元を緩めていた。
「橋だ。あいつらは見当たらんな。通ったか」
橋に向かって右は小高い丘のように見え、その先には星が消え行く空しか見えない。向かって左には河の流れが横切るのが見え、それは北方に向かってずっと続くように見える。林や民家、遠い地平にわずかな光の筋となって朝日を反射して輝く。
街道の先にはのろのろと動き出した人馬の列、その中にあの騎兵らしき一団は見えなかった。近くにいた男に一段のことを尋ねると、あちらの街道へ向かったと北を示された。
「ルーアン?」
左方、つまりシャルルたちよりずっと北の方角に、ルーアンの町がある。シャルルはル・アーブルへの途中立ち寄ったルーアンを思い出していた。
「早起きして損したね。ルーアンへ行ったってさ」とシャルルが欠伸をかみ殺す。振り返ればロトロアもシャルルと同じ、ルーアンの方角をぐるりと眺めていた。
「ヌーヴェルの手のものか。橋を固める増援かも知れんな」
「え、じゃあ、ますます大変になっちゃったってこと?」
「ああ、そういうことだな。誰かがいびきをかいて寝ている間にな」
「ほんと、煩くて眠れなかったよ」
「お前だろ」
「違うよ、あんただろ」
「寝顔は可愛いがいびきは獅子並みだ」
「嘘つくなってば!」
がーっとロトロアが真似をして見せるから、シャルルは届くはずもないが片足をぶんとそちらに蹴り出してみる。
丁度、ロトロアがブロンノを止めた。
空振りのつもりが予想以上にがんとロトロアの腿に当たり。「あ、ごめん」と思わず謝ってから、男の様子を見上げた。
ロトロアは正面をじっと見据え、動かない。
その視線の先は、橋の手前に並ぶ旅人や商人の列へと向いていた。先ほどの集団に寝ているところを起され、慌てて橋に詰めかけたものの、やっぱり通してもらえずに立ち往生していた。
橋は丸太で組んだ柵で封鎖されていた。検問のように兵が立ち、一人ひとり、止めては何か話しかけている。今通された農民らしい男が荷車を引く牛に鞭を入れた。柵は再び閉じられ、次の旅人を武装した衛兵が囲む。いかにも物々しいそれに人々は牧場の羊のようにわずかな困惑と恐れを見せながら大人しく並んでいる。
柵の両側には騎兵が並び、槍を構えていた。
「まずいな」
「蹴散らす?」
「馬鹿か。相手の数を数えてみろ。奥に騎兵の姿もある。シャルル、無謀な策も時には必要だが、安全な道を選べるならそちらを選ぶべきだぜ。少し遠回りだが、ルーアンに紛れ込んでみるか」
「そっちなら安全?」
「さて、行ってみなくては分からん。だが、ここから南は険しい山、パリに向かうならルーアンを経由しても良いだろう。お前も通ってきただろう」
シャルルは頷いた。「でも僕はルーアンには北から入ったよ」と、自分の記憶をたどりなおす。あっちの、とぐるりと視線をめぐらせたとき。
シャルルは覚えのある姿を見かけた。
「サール!」
それは橋の手前、検問で兵に何か言われている。あの穏やかな声が想像できる笑顔で何か答えた。不意に、兵が青年に拳を振り上げた。
「!」
シャルルの声にならない悲鳴は、周囲の人々がどよめきとして代弁した。旅の吟遊詩人を痛めつけようというのか、抵抗しない青年に数人の衛兵が蹴りつける。
「あいつらっ!」
「シャルル!」
引きとめようとするロトロアの手が届くはずもなく。シャルルはするりとロンフォルトから飛び降りると、かけていく。手にはそう、イタチの剣を構えて、だ。
「やめろー!」
怒鳴りながら飛び込んできたシャルルに、あっけに取られ、衛兵たちは動きを止めた。全部で六人ほど。その足元に、サールが半身を起こした。
日差しを受けた頬には傷と血の赤が見えた。
「だめだよ」
青年の瞳には来るなと真剣な思いがある。だけど。
シャルルは怒鳴った。
「無抵抗の人に乱暴するなんて、領主の命を受け剣を預かる兵がすることか!?お前らの行動はお前らの主君の名を汚すことになるぞ」
一人の兵がつばを吐き捨てた。
「騎士見習いの小僧か。騎士道、って奴か?笑わせるな。お前ら騎士のほうが余程貪欲だろうが。弱いものが悪いんだぜ、死にたくなきゃ強くなれ、だろう?」
そいつに合わせて数人が笑った。
サールが膝で立ち、「お待ちを」と手を広げかかる。それを側にいた兵が槍の柄で叩いた。
次の瞬間、シャルルはその兵の懐に飛び込んでいた。
槍の柄を掴むと走りこんだ勢いのまま、ぐんと引く。不意をつかれた男は槍を放し、次の瞬間にはそれで腹を突かれ苦しげに膝をつくことになる。
「貴様!」
何も考えていないのか。残り五人が一斉に飛び掛る。シャルルがするりとかわせば、額をぶつけ合ったものが三人、他の兵が突き出した槍の先に危うく串刺しにされかかって転がるものが二人。シャルルが地に突き刺さった槍を足場に飛び上がり。放った蹴りで一人が転がった。
口々に悪態を吐きながら起き上がった衛兵たちが腰の剣に手をやる。シャルルも、イタチ剣を抜き放った。
相手は四人。勝てる。
シャルルはそう感じた。
と、一歩踏み出そうとする足元を、誰かが引きとめた。
「サール?!」
「無茶はやめなよ、危ないよ」
危ないとか、今言われてもさ。
一瞬の混乱が、シャルルの判断を狂わせた。
衛兵の背後から、騎兵が駆け寄ってきていたのだ。
「逃げなさい」サールが言うそれは、正しい。馬から降りている状態では、騎馬にかなうわけはない。
だけど!今はまだ四人に囲まれている。
斬りつけてきた衛兵を一人、するりと避けて肘うちでしとめ。シャルルは状態を見極めようと身構え見渡す。
と、目の前に馬の姿、馬上の騎士、構える槍。刃が朝日に光る。騎兵は権威を見せ付けるようにシャルルに襲い掛かった。
悲鳴は、見守っていた旅人からか、自分自身か。
刃はかろうじて避けたものの、馬の脚は。
栗毛、蹄。
その瞬間、視界が真っ暗になった。
どん、と。地に打ち付けられ、気が遠くなる。
いや、だめ、だめだ。
陸に打ち上げられた魚宜しく、シャルルはびんと背に力をこめた。
起き上がらなきゃ、やられる!

意識があるってことは大した怪我じゃない、大丈夫。

重い身体を右腕でぐぐっと支え、半身を起こす。
目の前で何か、動いたように感じた。
ロトロア。
それは、一瞬シャルルを見つめ、そのまま眼を閉じた。

そう理解した時。すぐ体の脇で馬が足踏みをし、横たわるロトロアに庇われたのだと。
自分の代わりにロトロアが蹴られたのだと、思うより早く理解した。
そして今、倒れたロトロアに衛兵たちの槍が突きつけられ。
もう、どうしようもないことも。

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藤宮さん♪

おお!?
藤宮さんからロトロアへの褒め言葉が出るとはっ\(^о^)/
やつのことだから、内心にんまりです…。

ロイとの再会~むむ。
ラブ甘なことになるのかな?……むむ。

どちらにしろ~。
楽しんでいただけるといいなっ♪

暑いです~熱中症、気を付けてくださいね~!

危険な予感が……

シャルルちゃんとロトロア……ピンチですね。
どんな時も持ち前のすばしっこさで乗り越えてきましたが、今度ばかりはシャルルちゃんでもどうしようもない。

このまま捕まったら、またル・アーブルに逆戻り?
それこそ色々危険な気がしますが、そこにはロイもいるんですよね。

もしかしたら、そこで再会が待って……いたりはしないかな?

しかしロトロア、シャルルちゃんをかばうとはちょっと素敵です。
前がひどすぎなのであれですが、少し株をあげましたよー(?)

さてさて、これからどうなっていくのか気になりますが。
またこっそりじっくり追いかけさせて頂きますね♪
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