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『La croisade de l'ange 4:Paris』④

La croisade de l'ange Chapter 4 『Paris:天使の聖戦』




その日から、ジャンはルイ九世の側にいるようになった。ジャンを気に入っている様子のルイに、ブランシュは始め驚いたものの、「お友達ができるのはいいことです」と、ジャンにシャルルと同じペンダントを与えた。
それを見ても、ルイは兄弟みたいだと喜び。ジャンは誇らしい気持ちもあるがどこか複雑だった。ルイは真の兄弟については誰一人として認めていなかったから。
ジャンも同様に兄弟を持つ。それを話すと、ルイはジャンの兄弟ならば聡明で楽しいだろうと、自らの弟妹の無能ぶりをいくつか挙げて非難した。彼らはただ、護られるだけの存在だ。無害だけれど有益でもない、と。
国を背負う身としては、そういう見方になるのかもしれない。ジャンも家名を継ぐ意義は理解していたが、目的が家族を養うためであるジャンに比べ、家=国家であるルイが兄弟を足手まといだと感じているのも、単純に悪いことだとは決められずにいた。
ルイが自室の近くにジャンの部屋を用意させ、朝となく昼となく側にいるようになると、ジャンはルイの様々な部分が見えてきた。幼い頃から騎士の訓練をしていると言うのに、犬が苦手なことや。ワインや魚の酢漬けのような大人が好むようなものは平気で口にする。いくつかの国の言葉を話し、宗教の教えについては詳しかった。それなのに、気に入らない虫や動物と言った生き物には嫌悪に近い反応を示し、虫と同じくらい軽蔑する大人たちにその処理を任せる。
それらを当たり前のように行うのが、育ちの違いを思わせてジャンは憧れた。そうできたらいいのにと思うところを、ルイはいつでもはっきりと大人相手に口に出し、時には論争に勝利した。その筋の通った物言いと堂々とした態度が、王である証かのように思えた。
ルイの周囲には、ジャンがシャンパーニュでは得られなかった別世界が感じられた。やはりパリが国の中心で、ルイ九世がこの世界の頂点にいるのだ。
父の跡を継ぎセネシャルとしての出世を望んでいたジャンが、より大きなものを相手にする生き方を目の前にして、憧れないはずはなかった。
そうして一週間ほど、ルイのそばで過ごした後。ジャンは、オルレアン開戦の報せを受けたルイを励まし、ノルマンディーの援軍を迎えるべく北に発つ軍隊に同行することになった。
シャルルがルーアンを出た日のことだ。
ルイ九世を含む国王軍は壮麗な隊列を北に向けた。半日進んだ先。パリ郊外に街を護るために布陣している警備隊へ、合流する。
その日、早朝からシャルルが感じた心地よい日差しとまだ肌寒い風は、同じようにシルベルトに乗るジャンにも感じられた。
ルイの馬車の脇で、葦毛のシルベルトを操りながら、ジャンも空気の冴えた良い天気だと、そう感じていた。


ヘンリー三世の一行と別れ、シャルルたちが南に下ること半日。日差しの見え隠れする明るい林の中で昼の休憩をとる。
荷物から干し肉や燻製、ハムなんかを嬉々として取り出すシャルルに、ロトロアが「悲惨な斬り方するなよ」なんて嫌味を言うから、シャルルは余計に緊張して予定よりずっとたくさんの切れ端を作り上げた。その大半はロトロアに。見た目の良いいくらかがロイの前に置かれ。
ロイは首をかしげてシャルルを見上げた。腰に手を当て、にっこり笑う少女は「足りなかったらもっと切るよ」と、意味もなく得意げに肩に乗るイタチと同じ。
憮然としたものの、量には満足なのかロトロアは黙ったまま切れ端の数枚をパンに挟んだ。
「相変わらず、豪快なんだね」
ロイはくすくすと笑い出した。
「それが美味しいんだって。ほら、ぼうっとしてるとクウにとられちゃうよ」
いつの間にかロイの座る横に近寄り、白イタチがロイの前に置かれた皿を覗き込む。ロイはああ、といいながら、一切れちぎる。イタチはそれを受け取ると嬉しそうにシャルルの側に駆け寄って背に隠れた。
「クウ、礼ぐらい言えよ」
言えるはずもないが。
「何だかんだ言って、ヘンリー三世陛下はいい人だよね。だってさ、パンもハムも、ワインも、ほら、酢漬けとか干し肉とか。まるでパリが大陸の果てにあっても大丈夫なくらい、たくさんの食糧が積まれていたんだ」
「お前のためじゃないさ」
シャルルがロトロアをじろりと睨むと、男は肩をすくめながらワインを口に運んだ。
「なんだよ」
「ヘンリー三世陛下は、それだけノルフェノのことを大事に思っているってわけだ。パリへ行って、ル・アーブルまで戻れるだけの食料を用意してあるんだ。調子に乗って食い尽くすなよ」
「ル・アーブルに、戻るのか?」
「さて。それはノルフェノ次第。いや、ルイ九世次第というところか」
ロトロアの視線を受け、ロイは口に入れかけたハムをとめた。
「ロトロア、パリに行った後どうするかは私が決める。シャルル、君は側にいてくれれば良いよ」
側に。
シャルルは二度、大げさに頷いて、パンを口にする。
顔が赤いぞお前、とロトロアがからかうのも許せる。
「僕がちゃんと、側にいるから」
言ってから照れる。でも、ロイは「嬉しいよ」と応えてくれる。
胸がいっぱいだと言うのは、このことをいうのだ。シャルルは手にしたパンとハム一切れを胃に収めるまで異様に時間をかけ、その間ずっとノルフェノを見つめていた。目が合えば相手はにこりとし。それで慌てて目をそらすがまた、つい。目で追っている。

「シャルル、食べ終わったら少し、歩こうか」
「うん、うん!」
ロイの誘いにシャルルは慌てて、口にパンを突っ込む。
むせるシャルルの背中をロトロアがあきれて叩き。ロイは水を差し出した。
むせて苦しい以上に目の前のロイの優しさに、涙が出てしまいそうになる。


「少し、ほら。肩の力を抜いたほうがいいよ」
歩き出してすぐ。ロイはシャルルの肩に手を廻す。
それがまた、余計にシャルルを緊張させるのに、まるでそれを分かっていてやっているかのように。真っ赤になるシャルルをロイは目を細めて笑う。
ついでにその視界には、二人を見送る騎士が一人。
わずかにロトロアに視線を流し、それからロイは再びシャルルを見つめ歩き出す。

背丈の差は以前よりもっと開いていた。
「なんかさ、こんな、その。大きくなってさ、大人みたいになって」
「変かな」
「き、緊張する」
「私も緊張しているよ」
「そんな風に見えないよ」
「シャルルも変わったよ。この辺とか、こんなに色が白かったカナとか」
この辺、ってのがどこなのか。シャルルは見つめるロイにきょろきょろとし、どうやらそれが襟元らしいと分かって慌ててストールを巻きなおした。
「どうして隠すの?」
「え、何となく」
「服装が男の子だから、かえって目立つね。襟元とか、ほら、胸とか」
む、と。シャルルは慌ててストールの端でいろいろ押さえてみる。
「男っぽくしているのに結局君は可愛らしいから。以前もキスしたら泣いてしまったね」
「あ、ああああ。それ、言う?」
「共通の思い出はたくさんはないから」
そこでシャルルは真顔になった。
そう、たくさんはない。それが少しさびしい。
「今思えばほんの、少しの時間だったよね。水車小屋で出会ってから」
「そうだね。私に出会わなかったらシャルルは今頃、あの人と結婚して子供がいて」
「そ、それはないってば!」
「普通にランスで生活していた。幸せにね」
「今も幸せだからさ。ほら、言ったじゃないか、幸せそうだったって」
「うん、そうだね」
「ジャンと友達になったんだ。年下のくせに、落ち着いていて、頼れるやつなんだ。でも立場は僕のほうが上なんだよ。一回勝ってるから」
「勝っている?」
「そう、喧嘩に」
言ってから、シャルルは慌てて咳払いする。
「そのっ、そんなに乱暴なことじゃないんだよ。だって、あいつが悪いから」
「そう。シャルルはいつも本当に幸せそうだ」
ふう、と。シャルルは息を吐き出した。
ずっと、思っていたことを口にしたい。
今がそのときだと思う。
「あの。ロ、あっと。ノルフェノは幸せじゃないのか?ランスから、あの後何があったんだ。僕はノルフェノがヘンリー三世陛下に可愛がられているのは嬉しかった。よかったなって。でも、それだけじゃ、幸せじゃないんだよね?なんか、そういう顔している」
ちょうど、小さな小川がきらきらとした水面を見せている。その前で二人は立ち止まった。さわさわと風が草をなでる。鈴のような水の音。枯れた金色の草の中に頭を出す岩に、ロイはトン、と昇った。
目の前がロイの胸元。シャルルは眩しさに手をかざし、見上げた。
丁度背にある太陽で、ロイの表情は見えなかった。
「幸せなんて。考えたことがない。君のように何にでも感謝するなんて芸当は、私には出来ない。神がもし、人に平等に命を与えたなら。人生がそれぞれ平等だと言うならば、私はこれまでの代償に何か大きなものを得なくては納得できないな」
シャルルは眉をひそめ、ヘンリー三世の言っていた「いつも悲しそう」の意味が分かった気がした。
「大きなものって、なに?」
「さあ。まだ分からない。シャルル、君とランスで別れた後、私はあのドレス姿で北に向かったよ。子供が一人で生きていくためには、代償が必要なのだと、つくづく思った。ランスを封じる兵には女装することで捕まらずにすんだけれど、逆に危険な目に遭うことも多かった。北のル・アーブルに辿り着いたのは、誘拐されたからだよ。とても、自分の意志で北に向かえる状態ではなかったからね。残念ながら私を男と知ったそいつが、何とか高く売り払おうとル・アーブルまで連れてきた。君も持っているあのペンダントはね。男の子の服と、乾いたパン一つとに替えてもらった。そうしなければ、死んでしまう気がしたから。そうして。私は自分から、王家の一員である証を失ったのだ」
ロイの口調は穏やかで。シャルルは余計に胸が苦しい。
ふと、額に落ちる髪をロイがなで上げた。
「泣かないで。ペンダントを買い受けたのがヌーヴェルだった。おかげでヘンリー三世陛下と出会えたよ。私は私自身で選択した。名を失ってでも生きることをね。だって、そうだろう?なぜ生きているのか、なぜ生まれてきたのか。意味を知らないうちに死ぬなんて、あまりにもひどいから」
シャルルは目の前の身体を抱きしめた。
笑う振動が胸に響いて、次にはもっとしっかり頭をなでられる。
「僕、のせい、だよ」
シャルルの言葉にロイの手が止まった。
「僕が一緒に逃げようなんて、しなければ。きっと、ロイはシャンパーニュで大切にされていたんだ。僕、全然そんなこと知らなくて」
「シャルル。私は、知っていたのだよ。あの時ロトロアに告げられ、自分の立場を知った。同時に状況も理解した。けれど、それを受け入れる器がなかった」
再びロイの手が、優しくシャルルの前髪をなでた。
「認めたくなかった。家族が、両親が。自分を捨てたなんて信じたくなかった。だから君と逃げることを選択した。罪があるなら、私に。君は何も悪くないよ。君に知らせなかったのも、私の判断。言っただろう。知らないほうがいいことが、世の中にはあるんだって」
思い出していた。ランスで。ロイは、最後まで自分の正体を飽かさなかった。

「それは、僕のために黙ってたんだろ」
「多くを知っている人ほど、多くの責任を抱える。道をたくさん知っていれば、知らない人より近道を選べるかもしれない。けれど、選択肢が多いことは、間違える確率も多くなる。選んだ先で何があるかはやっぱりその人の責任。物事を知るということは、そういうことなんだよ」
「それでも人は智を求める。足があるから歩くように」
振り返ればロトロアがマントを手にして立っていた。
「そろそろ行くぞ。シャルル、馬の準備はできているのか」
「わっ!そうだ、僕の仕事!」
ロンフォルトー!と叫びながらかけていくシャルルが、木立の中姿を消すまで、二人は黙って見送っていた。
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chachaさん♪

ありがとう~♪
やっと、ちゃんと話ができた、そんな感じですね♪

実はロイとシャルル、家族を失っているということでは同じなのですが、育てられ方や環境のためにロイの喪失感はシャルルでは理解しきれないほど、なのです。
常に自分を抑えている。
ロイの言葉、多くを知ることで、人は迷い、時に間違える。
シャルルは今、様々な人とかかわって多くを知ってきています。
これから何を迷い、何を選択していくのか。
うん~。
楽しんでいただけると嬉しいです♪

あ、「小説家になろう」、今日、再びログインを挑戦してみたけれど。
思い出しました。
当時、登録していたメアド。ケータイを変えた時に変わってしまって。
登録内容を変更しようかと思った時には、もう、無効だったみたいで、ログインできなくなっていたんです。
気づくのが遅かったんですね…。問い合わせとかしてみたけれど、ダメでした。作品もさらしっぱなしなのに何もできません(笑
屍状態ですが、のぞいてやってください(泣

こんにちわ^^

ロイとシャルルの二人っきりな時間。むふふ♪と読み進めていたけれど…
ロイの傷は深く、いたたまれなくなりました。
だからロイ、私の頭も撫でて!(え

シャルル、ずっとずっと気になっていたことを、ちゃんと本人に聞くことが出来て良かったね。
ずっと謝りたかったこと、伝えられて良かったね。
あとはロイがどう取るかだけれど、したかったことが出来ずに後悔するよりかは、ずっとずっといいことだと思うのです。

ロイの言葉。私の胸に響きました。

>多くを知っている人ほど、多くの責任を抱える。道をたくさん知っていれば、知らない人より近道を選べるかもしれない。けれど、選択肢が多いことは、間違える確率も多くなる。選んだ先で何があるかはやっぱりその人の責任。物事を知るということは、そういうことなんだよ。

すごく、すとんと頭に入ってきました。とても納得するし、なるほどと感心(?)です。
ロイもジャンもシャルルも。そして王であるルイも。
大人の中で子供が生きていくことって、とても大変で辛いことも多いと思うけれど…
ロイとルイが特に気になります。
二人を支えるのがシャルルとジャンになるのか、それとも…

歴史に疎い人間ですが、らんららさんの小説ではそれを忘れてしまうほど没頭しちゃいます♪楽しいのです^^
そうそう、「小説家になろう」にはアルファポリスに登録してすぐ、そちらも登録しました。なんだか皆さんそちらのURLが多く…しかも縦読み機能があったものですから^^(旦那が縦読みなら読んでくれると言ったので。笑

ID・パス忘れとか、ありますよ~!
私は魔法のiらんどが一時期思い出せなくて放置していましたから(笑)
そうか、らんららさんもあっちサイトに登録されているんですね♪
ちょっと覗きに行こうっと☆

長々と失礼しました><

楓さん♪

家族サービス真っ只中に(←でしょ?)
ありがとうございます!

ルイ九世、本当に12歳で王となった人物です。
ブランシュがほとんどを取り仕切っていたという話らしいですが、実際に反対勢力は多々ありましたし。
公式の場でも嫌な想いをすることが多かったと思います。
けれど、そう生きるように育てられれば、そう育っていくのかもしれません。
ロイやルイ。そしてジャンも、大人世界に身をおく一人。
彼らなりの考えで、突き進んでいきます。
最終話、どろんどろんとしてきますが(笑
じっくり楽しんでいただけると嬉しいです♪

どもども

こんばんは。
王族というのは、何とも生きにくい種族ですよね。
王は孤独だなと常々思うのです。
ましてやまだ少年の王ともなれば、周りの大人どもなど魑魅魍魎にすら見えることでしょう。何が正しく何が不正か。それを見極める目を持つには、あまりに幼い。
それはまた、故会って廃嫡されたロイにも言えることなのでしょうか。
彼もまた自分を憂いている。
やっかいな種族だな。と思うのです。

三角関係?なシャルルもさることながら、ジャンですよジャン。
彼はこの先どうするのでしょうか。
いよいよ決戦の時近し、ですかね。
マイペースでその時を待ちたいと思います♪

藤宮さん♪

ラブです~♪ちょっとまだ、もどかしいですが(^∇^)
この後はどうなるか…

二年前の二人。あの時をきっかけに二人とも、それぞれ違う成長をしてきたのだと…描きたいです。

いろいろなことが動き出していますが…。
うむ。
楽しんでいただけるよう、がんばります!

語らいが……

少しだけ、ラブですねー。

シャルルちゃんとロイ、近づいているようでまだ遠い。
よく考えれば、接点があったのは本当に少しの時間のことで。
想っていた時間は長いけれど、その距離が埋まるのはなかなか難しいのかな、と。

でも、語らいは少しだけ二人が出会ったころを思い出させます。
ああ、あの頃から考えると、二人とも確かに大人になったんだなと思いました。

うーん、でもだからこそ、昔のようにとはいかないのかもしれませんけど。

色々ありますが、徐々にパリに近づいていきますね。
戦乱のこととかルイのこととか、気になることは満載ですが。
どきどきしながら追いかけていきます! 頑張れ、シャルルちゃん!
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らんらら

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