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『La croisade de l'ange 4:Paris』⑧

La croisade de l'ange Chapter 4 『Paris:天使の聖戦』



日が暮れたので、陣営は少し南に下った村で一夜を明かすことになった。
祝宴らしき声が、シャルルのいるところまで聞こえてくる。
ロイとルイ九世のために借りられた民家は、この村で一番広い家だ。その一室に、シャルルはロイのためにと扉の前に陣取って、近衛騎士が時折からかうのも無視していた。
うとうとしながら、窓から入る野外に寝泊まりする兵たちのざわめきを聞いていた。あちこちで、喜びの杯が交わされている。心地よい歓声は夜の風に乗って、子守唄のように思えた。
ロトロアが援軍を引き連れてこなければ国王を失うこともあっただろう。ノルマンディー軍からルイを避難させ、シャンパーニュを味方につけ。ロトロアが宮廷のためにしたことは、臣従礼を結ぶに相応しい働きだったのだ。
そうでなければ地方貴族の青年が、国王と直接臣従礼を結ぶなどできるはずはなかった。
以前、国王と臣従礼を結んで見せると豪語した自分を思い出し、シャルルは肩をすくめた。今。僕は、どうせならロイと結びたい。ずっとロイを護るって、そんなふうに誓う。それはまるで、なんていうか。結婚に似ている気がして。意味もなく鼓動を高める。
そんなこと。叶うはずもない、あと一日くらいで、僕は。ロイと離れなきゃいけないんだ。
また切なくなって、シャルルは一つため息をついた。

「そんなところに、いつまでも座り込んでいるつもりなのかい」
びくと顔を上げれば。背後の扉が開いて、ロイが顔を覗かせていた。
「部屋に入って、側にいればいいのに」
シャルルは口を結んで首を横に振った。
「シャルル」
「ここで、護るから」
側にいたら悲しくなってしまう、だから。
もう、泣かないと決めたのに、そんな決意なんかきっとすぐに壊れてしまう。
だから、側にいたいけれど、背中を向ける。
その小さな背中を、ロイが抱きしめた。
「わ!?」
背後からのぬくもりにびくりとして、シャルルは顔を赤くした。
「おいで、寒いだろう?折角暖炉がある部屋を借りたのに。君が風邪を引いたら、それが私にうつってしまう。わかるかな。私のために、中に入ってほしい」

たん、と。別の部屋の扉が音を立て、廊下にランプの明かりが一つ増えた。シャルルは顔を上げた。

「おや、お邪魔ですか。ノルフェノ様。少しばかりシャルルに話があるのですが」
ノルフェノ。ここでその名を口にするのは、ロトロアだけだ。
シャルルはいっそ、と立ち上がる。
「ごめん、僕行かなきゃ」と、ロイの手を解こうとする。
不意にロイの手に力がこもった。引き留められた形のシャルルは自然背後の少年を振り返る。ロイはじっとロトロアを見つめていた。

「ノルフェノ様、そのような薄着ではまた、お風邪を引かれますよ。貴方はヘンリー三世陛下からお預かりした大事な方。女のぬくもりが欲しいならばそんな騎士見習いではなく、ひらひらしたドレスの女をいくらでも用意させますよ」
酔っ払いか、こいつ。シャルルが噛み付こうとロトロアを睨みつけた時。
先にロイの声が廊下に響いた。
「女性の価値を見極めるくらいできるつもりです。お前こそ、話をするならいくらでもいるその女性たちとすればいい」
口調はひどくトゲを見せる。
あの大人しいロイが。
驚いてシャルルが口をあけたままでいる間に、強引に扉の中に引っ張り込まれた。
扉を閉め、ロイは肩で息をしていた。
「ロイ、どうしたんだよ、怒ってるのか?」
怒りを露にしたくせに、今はもう貝のように押し黙っている。
扉を背に突っ立ったまま。
うつむいた顔を覗き込んでみようとすると、不意に肩をトンと押され。シャルルはよろめいて座り込んだ。
丁度敷物が敷かれていたから、痛くはないが。ロイらしくない。

ロイはしばらくシャルルを見つめていたけれど、不意にそっぽを向いて自分のベッドへと歩き出す。
それを口をあけたまま見送ったシャルルは、暖炉の薪がパチと音を立てるのと同時に我に返った。
「あのさ。何をそんなに怒ってるんだよ」
「なんでもない。君はそんなこと気にしなくていい」
いいながら、毛布を被って隠れようとする。
意味が分からない。
シャルルは一度、扉を振り返り。
それから、立ち上がってため息をつく。
「あの、寝るのか?」
「お休み」
つれない返事に、シャルルは意味もなく悲しくなる。
ロトロアが何の用事だったのか気にもなるし、なのにロイは強引に引っ張りこんでおいて、今は無視するのか。
「あのさ、そんな態度とるならやっぱり廊下にいる。ロンロンが話があるって言ってたし、それに」
「だめだよ」
「何が?」
「ここにいて欲しい」
「どうして」
くぐもった返事は、毛布の中で誤魔化されたようで聞き取れない。
シャルルはベッドに隠れるロイのそばに歩いていった。
「あのさ。そりゃ、パリまでしか側にいられないんだから、今は離れたくないけど、でもロイがそんなじゃ、ここにいても仕方ないだろ。だから、扉の外にいるって決めたんだ、なのに」
「嫌だよ」
はっきりと、ロイは毛布から起き上がって言った。
「なに……が?」
「あの男と君がいるの、は」
言いながら勢いは急降下。ロイはまた視線を毛布に戻すと、柔らかい影に逃げ込んだ。
「ちょっと、何言ってるんだよ、ロイ」
固まりになっている毛布の端を、握り締めた。
返事がない。
「いい加減にしろってば!」
毛布を引き剥がそうと引っ張る。
と。ふわりと舞い上がった隠れ蓑から、ロイが起き上がり。そのままシャルルに抱きついた。
「わわ!?」
勢いと重さに、二人とも床に転がった。
「おも、ロイ、ばか。危ないだろ!僕剣を持ってるんだぞ、重いよっ!」
見上げれば、暖炉の炎に照らされて、ロイの瞳がゆらゆらと揺れている。炎の赤を映した瞳は、冷静な普段とは違って見える。
そういう、目は。
シャルルはあの夜の、ロトロアを思い出した。
ぎゅ、と胸が切なくなるのは。あのときを思い出したからか、目の前のロイが。そんな風に自分を見つめているからか。
今、大好きなロイが側にいて。自分の肩に触れていて。それを意識すればするほど、涙が溢れてくる。
だって、側にいられないんだと。突き放したのは、ロイだ。

「そんな、目で見るな」
涙をぬぐったとき。その手がロイの手に包まれた。
「いやだってば!」
反射的に、シャルルは目の前の顔を叩いた。
手のひらの感触、痺れ、痛み。
驚いたような顔のロイは、ふらっと立ち上がった。
シャルルも起き上がり、その場で泣き出していた。
どうしていいのか、わからない。
「ごめん、また、泣かせてしまった」
ロイの声が側に聞こえて、抱きしめられる。
あの昼間の出来事を繰り返している気がした。それでも、涙は止まらないし、ロイは同じように抱きしめてくれた。
「わかんない、ロイ。なんでそんなことするのか分かんない。側にいさせてくれないくせに、ここにいて欲しいとか、そんなの。つらいよ」
ぎゅと。抱きしめる手に力がこもる。ロイの心臓の音は、とくとくと優しく。シャルルは頬を擦り付けた。
「……きっと。私は邪な獣のように、君に触れたいと願っただけなんだ。悲しませるのが分かっているのに、泣かせてしまうのに。ごめん」
シャルルは黙って聞いていた。
好きなんだから、触れられるのは嬉しい。こうして、抱きしめられているのも、嬉しい。
ロイの言葉はどこか空虚だった。
何か言葉を続けようとし、ロイは咳き込んだ。
シャルルは抱きしめたまま、背中をさする。
「すまない、こんな。身体なのに。情けないくらい、痩せて弱くて。君はいつも真っ直ぐで元気だから……」
「だから?」
「なんでもない」
そのまま黙ってしまう。
何かを胸に押し込んだままのロイ。
不意に、ロトロアの言葉が思い出された。
何もかも素直に出していたら騎士になどなれない、と。
だからロンロンが何を考えているのかシャルルにはちっとも分からないし、同じように今のロイも分からない。
それを知りたいと思うのは我侭なんだろうか。
ロンロンのことはどうでもいいけれど、ロイの気持ちは知りたい。
「あの。僕のこと、どう思ってる?」
はっきりと、ロイの鼓動が耳元で音を立てた。
それは、どきどきと早くなっている。
それに合わせてシャルルも自分が何を問おうとしたのか理解して、頬が熱くなった。
「その、あの」
「言えない。ごめん。でも、今は側にいて欲しい」
ゆっくり言葉を紡ぎながら、だんだんロイが落ち着いていくのが分かった。
肩の力が抜けて、今はシャルルの頭をそっとなでてくれている。
そんなふうに、誰かにされたことがないから。
シャルルはどきどきとし。唯一、柔らかい胸で泣いたブランシュを思い出していた。
そう、僕はあの人に、ロイを会わせたいと願ったんだ。それが、ロイのためになると思ったから。胸に押し込んだ悲しいこととか苦しんだこととか。そういう固まって凍り付いてしまったものも、ブランシュ様に会ってみれば溶けるに違いないんだ。
ロイと同様、シャルルも冷静な思考が戻ってきていた。
何のために、パリに向かうのか。
ロイのためだ。僕のためじゃない。
だから、僕は自分の気持ちとかそんなの、我慢しなきゃいけない。

しばらくそのままだったけれど。
ロイが一つくしゃみをしたから。
「暖炉の火が消えそうだよ。ほら、ロイはベッドに入ってさ。僕はここにいるから。火が消えないように、部屋が冷たくならないように」
そう、シャルルが話しかける。実際、ロイの身体は少し熱っぽい気がして、そう思えば心配になってくる。
ロイはやはり体調がよくないのだろう、黙って頷くと、一人大人しくベッドへともぐりこむ。シャルルは毛布を整えてかけてやる。
小さく咳き込む気配を背中に感じながら、暖炉に薪をくべる。
二人きりのこの空間は、ぬくぬくと暖かい。
そんな時間が、ずっとずっと続いて。
朝にならなければいいのにと。膝を抱えたまま、シャルルは願っていた。
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藤宮さん♪

身分違いの恋はなかなか…(;^∇^)
シャルルの元気と素直だけじゃ乗り切れない雰囲気です♪
ハッピーエンドかな、どうかな?(笑

パリ。ええ。
ルイもいるし、ロトロアもいるし。ブランシュもいるし。
いろいろなことが起こりますが。

生ぬるい目で見てやってください(^_^)/

切ない感じ……

一つ戦いを越えて、少し近づいた感じのする二人……ですが。

なんだか読んでいて切なくなりますー。
どんなに近づいても、完全には触れられない幻みたいに。

確かに近くにいるけれど、ずっとそばにはいられない。
いつかは別れなければならない。そのいつかは、すぐそこに迫っているからまた切なくなります。

ロイの語らない言葉が何なのか、はっきりとはわからないけれど。
シャルルちゃんと同じ気持ちなら、少しは救われるかもしれないなんて思ったり。でも、やっぱり切ないです……。

もうすぐパリ。ロトロアの動きとか、ルイの考えとか色々気になりますが、じっくり読み進めます。

シャルルちゃんの恋と戦い、こっそり見守っていきますね♪
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