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『La croisade de l'ange 4:Paris』⑨

La croisade de l'ange Chapter 4 『Paris:天使の聖戦』



「おや、もうお休みになったかと。私ももう休むところでした」
言いながらまだテーブルに先ほどまでのロトロアの杯を残したまま、リシャールが笑った。
「振られたんでね」
「シャルルにですか?」
肩をすくめるロトロアを、椅子を引いて迎え入れたリシャールは、面白そうに笑った。
「あれがしばらく会わないうちにやけに色香を身につけていたのは、そういうことでしたか」
ロトロアはリシャールが注ごうとしたワインのビンを強引に奪い取り、自らの杯にたっぷり注ぐ。その勢いのまま、面白がる親友の杯も満たした。
「シャルルを女にしたのは俺だが、女らしくさせたのはロイだぜ。俺の出番などない」
「拗ねていらっしゃる」
「そんなことはないさ。あれはヘンリー三世に売り払った。もう、俺の手を離れている」
「それでも誘いに行かれたのでしょう?しかし、貴方がシャルルを手放す気になるとは驚きました」
誘いに行ったのではないとロトロアは口を挟もうとするが、反論の余地を与えずリシャールは続ける。
「ティボー四世様が聞けば、怒りますよ。伯の命令には逆らい、手元に残したのに」
は、と。ロトロアは笑った。
「リシャール。お前、俺がどういう人間か知っているだろう。ル・アーブルに着くまでは、お前を残すためにシャルルを差し出すつもりでいた。だがノルマンディーとブルターニュ、ヘンリー三世の動きを知り計画を変えた。それを餌にルイと取引できると踏んだからだぜ。北部の情勢に宮廷は疎い。シャルルを送ることで何か得ようとしたくらいだからな。だとすれば情報を持ち帰り、ルイに恩を売っておくのはシャンパーニュにも悪くない話だ。叔父上から全てを奪い返すという、俺の望みもかなう。そのためなら、リシャール。俺はあの戦場で、お前を殺してもかまわないと考えた」
脚を組み替え、リシャールの顔を眺めるロトロア。どうだといわんばかりのそれに、リシャールは笑顔で答えた。
「私も、貴方が目的を果たすためならこの命を捧げてもかまわないと思っておりました」
は、と。ロトロアは一気にワインを飲み干した。
「お前、平然と言うなぁ」
「真実ですから」
「かなわんな。お前には」
「先ほどから、ロトロア様。腹いせに私を苛めようとなさっていますよ。ワインの量も多いですし」
「腹いせとはなんだ」
「シャルルを本当にヘンリー三世に、いえ、ロイに与えるおつもりですか」
「……さあな。ロイが望むかどうか。相変わらず体が弱い様子で、あの分では成人できるかどうか。本人も分かっているからシャルルを突き放そうとしているが」
「健気ですね」
「いらんというなら、もらうまでだ」
「貴方も素直じゃないですね」
「素直で馬鹿なのはシャルル一人だ」
二人は目を合わせ、それから噴出した。
ひとしきり笑い、ロトロアはさらにワインをと差し出したリシャールの手を止めた。
その顔は真顔で、リシャールは首をかしげる。
「まだ、痛みますか。随分ひどく打撲していましたから」
「いや、お前の薬草でよくなった。それもそうだが。お前のおかげだ、リシャール。お前、叔父上をそそのかしてルイを襲わせただろう」
リシャールの冷静な顔にわずかに朱が走る。
「まさか、そんなこと」
「気にするな、叔父上の側近たちの口は塞いでおいた。これで、俺たちの願いは叶った。父も母も喜ぶ。リシャール、礼を言う。これまで俺を支えてくれた」
肩に置かれた手に、リシャールははにかんだように笑った。
「私もご両親には優しくしていただきましたから。敵を討てて幸せです」
「ああ。お前と俺は兄弟のようだとよく言われたな。実は本当にそうではないかと、俺は思っていた」
「ロトロア様」
リシャールがこれほど表情をころころ変えるさまは滅多に見られない。楽しむようにロトロアは目を細めた。
「誰にも真実など分からん。だが、俺は。お前が弟であればそれほど嬉しいことはない。迷惑か」
リシャールは派手に首を横に振った。
その仕草は普段のリシャールと違う様子で、ロトロアは笑いながらリシャールの手を握り締めた。
「ではそういうことにするか?理由などいくらでも創れる。臣従礼など結ばずとも」
「お側に」
リシャールが不自然な瞬きを繰り返すのも、ロトロアは笑顔で受け止めた。
かつて、噂があった。
リシャールが母の面影を残すと。身元の知れない子供を、遊び相手としてロトロアの側に置いた両親。二人をともに兄弟のように可愛がっていた母親。それを勘ぐり、噂したものもいた。
あるいはリシャール自身は真実を知っているのかもしれなかった。だが、リシャールがそれを語らないのだから、ロトロアも黙っていた。
カタチなど、どうでもいい。
支えあうと決めたのだから。
ふと、ロトロアは口にした。
「真実などわからん。それは、シャルルも同じだな」
「フランドル伯、ですか」
「女伯は笑いながら否定した。で。俺に言った。誰の子にしても、あなたの手元にあるのであれば安心だと」
「安心、とは」
「さあ。戴冠式で渡された手紙にも、シャルルのことが書いてあった。いつか会えるのを楽しみにしているとか。関係がないはずなのにやけに興味を持っている、それがどうも気になってな。中々シャルルに手を出す気になれなかった」
「それが原因ですか!」
「おかしいか?女伯の顔がちらつくんだぜ。やりにくいさ」
頭を抱えるリシャールに、ロトロアは首をかしげる。
「なんだ、なんだと思っていたんだお前?」
「女性を大切に出来ないあなたが、シャルルに手を出されないから、シャルルだけは特別なのかと」
「大切に出来ないとはなんだ。聞き捨てならんな」
わずかにロトロアの口調が舌足らず。どうやらワインがそうさせている。

「ですから、恋愛が不得手だと」
「俺がシャルルに恋だの愛だの、か?お前、これだけ側にいて、どうして俺のことを理解してないか」
「はあ、いえ。その。自覚されていなくとも、シャルルのことを気にかけておられるかと」
ロトロアが黙った。
「シャルルのこと、大切に扱っておられるではないですか。傍から見ていれば、どう見ても貴方はシャルルに愛情を持っておられる」
「そう見えるのか」
「ええ。皆そう思っておりますよ」
ロトロアは黙って、リシャールの杯にワインを注いだ。
「あの」
「飲め」
「ですから」
「……そうか、そう見えるのか」
リシャールは諦め、勧められるままワインを口にした。
真実など、分からない。自分自身の気持ちすら、人は理解しきれないのだ。まして、他人からそれを想像したとして、一体何が分かるというのか。
リシャールは結局、自分の感覚でロトロアの行動を判断したに過ぎないのだ。
溜息をワイン色に染めて飲み込んだ。


パリの空は晴れていた。
風が強いせいか、噂で聞いた匂いも気にならない。
見たこともないくらいたくさんの家が、ひしめくように並んでいるのをシャルルは歓声を上げて見つめた。
「すごいな、すごい。パリだぞ、クウ。ロンフォルトも」
白イタチは、やはり嗅覚が鋭いのか、荷物の袋に逃げ込んでいた。袋の外からとんとんと軽く叩くと、抗議の意味か、がさがさと返事がある。
イタチと違い逃げ出せない馬は、鼻を鳴らすだけで。それが嬉しそうだと勘違いしたのか、シャルルは「後でパリの人参をたっぷり上げるからね」と。ロンフォルトにとって迷惑かもしれないことを口にする。
「はしゃぐなよ、シャルル」
脇でブロンノを駆っていたロトロアが面白そうに笑った。
「いいんだよ!初めてなんだからさ!ランの市場もビックリしたけど、パリはもっとすごいね。人が多くてさ」
「これでも普段よりは少ないんだぜ、シャルル。今は戦時だ。女子供は外に出ない」
「ええ?これで?」
シャルルは改めて、街の風景を見直した。確かに子供の姿は建物の窓から覗く顔だけで、通りにはいない。国王の行列を見送る人々の腰に、大なり小なり剣があるから、なるほど、町全体が警戒しているんだと分かる。

いつの間にかセーヌ川沿いを進んでいた。右手に川を見つけ、その先のシテ島がシャルルを否応なしに興奮させる。
建造中のノートルダム大聖堂は、まだ塔が半分出来たところだ。晴れた空に鳥が舞い、工事中の不気味なカタチのそれに停まる。
橋を渡れば、今度はパリを振り返る。川沿いにずっと並ぶ町並み。オレンジの屋根が眩しくてシャルルは目を細めた。
見渡せる平原の街というのは心地のいいものだ。

傍らの馬車には、今はルイに貰った馬をつなぎ、近衛騎士団の御者が操る。窓からロイも外を眺めていた。目が会えば、互いににっこりと笑った。
ああ、あと少しなんだ。
ロイの顔を見ていられるのも、声を聞けるのも。
シャルルは何度も瞬きして、にじんできそうな涙を誤魔化す。
匂いが気にならないのは、もしかして。泣いて鼻が詰まっているからかもしれない。
王宮の城門をくぐった。
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楓さん♪

私も行きたい~っパリっ!!!
がいせんも~~~~ん♪

と、残念ながら、シャルルの時代にはまだないのですが(笑
(余談ですがノートルダム大聖堂は作りかけです。)

シャルルのこと。確かに、変化ないなぁ、この子。
ちょっと、大人になったくらい?

ロトロアの心情かぁ~(うふふ
いつか、ええ、いつか明かされるかと思いますよ。
はい。
シャルルみたいに、「ロイが好きっ!」って言えるような素直な子はあんまり出てきませんね…そういえば。
さてさて。
パリ。
いろいろと始まるようでいて終わっていくようでもある。
楽しんでいただけるといいなぁ~。
でも、ご無理をせずに。
まず、ボルカノ、つぎに掌編小説。
そのあとくらいに時間があったらでいいのです~♪

いよいよ来ました。

パリですよパリ!がいせんもーーーん!をい
その大きさにはしゃぐシャルル。
でも、ロイといられるのも今日限り。
ああああ、複雑じゃないですか。シャルル。
昨夜のことも、ロトロアのことも、母親のことも。
周りの人たちの環境は少しずつ変わっていくのに、シャルルの事だけ何も変わらない。分からない。もどかしすぎるす!

しかしロトロア。
こいつだけはよく分からない。
本心がどこにあるのか。
一度でいいから「心からの叫び」というヤツを聞かせてもらいたいです。
最後の彼のため息、何だか意味深。

華々しいパリの街で、彼女の物語がどう大きく転換していくのか、とても楽しみにしながら、ゆっくり読み進めますね♪

藤宮さん(^∇^)

うふふ。
明らかになる想いがあるとして。
明らかになった時の影響を考えると。
ワクワクしちゃいます。
基本的に、現実の物事の真実より、
人がかかえる真の想いに
楽しみを見い出す作品です。
それがいつなのか、どんな結果を生み出すのか。
今はまだ秘密(^_-)-☆
藤宮さんのことだから、すでになんパターンか
予想図があるでしょうね(^∇^)
当たるかな…その辺りを楽しみつつ。
物語は終盤です。
また、じっくり楽しんでくださいね~(⌒▽⌒)

どうなんでしょう?

色々、ロトロアの背景が見えてきたようですねー。

というか、やっぱりシャルルちゃんは孤児……なのですか……?
もしかしたら、本当は!? とか思っていたのですが、うむむ・・・…。

そしてロトロアとリシャールさん。確かに仲の良い兄弟のようで、少し微笑ましいものを感じたり。

でも、やっぱりロトロアの真意はなかなか出てこない。
シャルルちゃんも含めた真意が明かされる日は来るのでしょうか。
……なんだか最後まで、はぐらかされそうな気もしますが(汗)

ああ、でも、もうパリということは、さよならなんでしょうか……。
もう少し、もう少しと思っていたのについに。

うう、切ないー。シャルルちゃん、頑張ってほしいです……。
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