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『La croisade de l'ange 4:Paris』⑫

La croisade de l'ange Chapter 4 『Paris:天使の聖戦』

12

クリア・レギス。
かつてはフランク王国の建国に尽力した諸侯の集まりであった。諸侯は更なる権力を求め互いに牽制しあうようになった。それが国王に疎まれ、今はより国王に近い存在、宮廷に勤める側近や主要な王領を任されるバイイ、大司教座を収める司教らなどで構成される。
世界の中心をパリとして、彼らは王国の繁栄のため、知恵を絞る。

王宮の奥の間。
ベルトランシェの先導に従って、ロイは白い狐の毛皮を肩にかけ扉の前に立った。
重い木製の扉には、鈍く光る鉄鋲が打ち込まれている。両側を守る衛兵は国王付の近衛兵。白い羽根飾りを胸元につけた二人の近衛兵が槍を構える。
ベルトランシェは「後悔、なさっておられませんか」と、小さく囁いた。
ロイはその顔をじっと見つめ。それからいつもの笑みを浮かべた。
「言いたいことを、はっきり言うのは気持ちがいいですね。シャルルがいつも元気な理由が分かりました」
そうですか。ベルトランシェがまた、面白げに目を細める。美しい近衛騎士団長は傍らの少年に断崖に立つ子羊を思った。震えながらも、しっかりとそこにある。
衛兵がわずかに開いた扉の隙間から、顔をのぞかせたのはジャン・ド・ジョワンヴィルだった。
「ジャン」
ベルトランシェのつぶやきと同時に、ロイも小さく口を開いた。
ジャンは「少々お待ちください」と頭を下げ、いったん扉を閉じさせた。
「ジャンはシャンパーニュの伝令ではありませんでしたか?クリア・レギスの会場にいるとは?」
ロイの声にベルトランシェはため息とともに振り返る。
「セジュールが気に入って、陛下のお側に付けたのでございます。陛下もご友人として扱うようにと、近いところに置かれております。ブランシュ様も承認されておりますから、いずれ正式に陛下の側近となられるでしょう」
そう、と。ロイが応え。ベルトランシェは扉の音に姿勢を正した。
「こちらに、どうぞ」
立派な丈の長い衣装を身に着けたジャンは、小さくなったセジュールのようでベルトランシェはかすかに肩をすくめた。陛下の側近となれば、摂政の近衛騎士団長であるベルトランシェと同等。陛下も面倒なことをする、と。席上のルイの背後に控えるセジュールに視線を送った。

細長い机を囲み、一番奥の正面にルイ九世。その左右を五人ずつ位の高い順に並んでいる。ブランシュはルイの隣に腰かけていた。
一斉に見つめる議場の面々に、ロイはゆっくりと膝をついてみせた。
それを見て目をそらすもの、じっと睨むように見下ろすもの。様々だ。ベルトランシェも同様に膝をついて挨拶しながら、傍らの少年に課せられた重圧を思っていた。
凪いだ湖を思わせる瞳、優雅な仕草。存在感のある佇まいはそうそう身につくものではない。王家の人間としての威風がロイの華奢な体を大きく見せていた。

見定めるように、ルイ九世は黙ってロイを見つめる。
少し、長い沈黙。
じっと頭を垂れたままのロイ。
ベルトランシェが、まだだろうかと。わずかに視線を国王に向けたとき。
「ノルフェノと、申したな。ヘンリー三世よりの書状、確かに受け取った。顔をあげなさい」
ルイの左隣に席を置く、ランス大司教だった。
ロイはゆっくりと顔を上げる。
気の毒そうに見つめるランス大司教の姿にわずかに目を留め。それからまた、ロイは遠い正面の弟を見つめた。ルイは明るい金髪を短くし、赤い上衣に狐の毛皮をかけている。腰の剣が重そうに揺れた。十二歳のルイには少し。大仰とも思える服装だ。大人が強引に着せるはずもないから、自らそれが、王の威厳を顕すと好んだのだろう。
決して快活で明るいというわけではないが、穏やかな中に負けず嫌いの内面がのぞく。
ロイに新しい毛皮が用意されれば、ルイはそれよりさらに希少な珍しい衣装を望んだ。自分が狩ったのだと、鹿皮のベストを自慢することもあった。
決して、ロイには真似のできないことだった。
「ノルフェノ、ヘンリー三世がノルマンディーを扇動している、ということと受け取った。それは明らかに宣戦布告であるうえ、お前は我らフランク王国を裏切った。恥を知れと言っても無理かもしれないが」
ルイ九世の言葉に大司教があわてて立ち上がりかける。
すぐ隣に座るセネシャルが、代弁するように口を開いた。
「恐れながら、陛下。この書状からそこまでは」
幾人かが深くうなずいた。
「いや、いつぞやのシャンパーニュと同じ。協力してほしければ所領をよこせ、そういうことだろう?そして我らは今シャンパーニュと手を結んだ。それも最高の形で。ノルフェノは、知らないだろけれど」
昨日のことだ。ロイが知るはずはなかった。
「シャンパーニュ、が」
それは素直に驚きの声だった。
幾人かの憐みに満ちた視線が注がれる。
「遅かったのだよ、ヘンリー三世は。我らはシャンパーニュの助けを得て、ブルターニュなどいくらでも蹴散らすことができる。もちろんヘンリー三世が操るノルマンディー軍もね」
ゆっくり見回すルイ九世に全員が口を閉ざした。議場の皆の視線を受けてブランシュが口を開いた。
「陛下、確かに今ヘンリー三世の申し出を受ける必要はありません。けれど、宣戦布告と受けるのは過剰な反応というものです。ロイに対しても裏切ったなどと。ロイは仕方なく協力したのだと、私は思います」
「母上、そのものはロイではありません。忘れたのですか?ここで、このクリア・レギスの席上で報告を受け、全会で承認した。兄上は九歳で亡くなった。あるいはそこにいるのが亡霊というのなら。死者がいるべき場所に戻ってもらう」
議場の全員が凍りついたように、剣の鞘をなでるルイを見つめた。
ブランシュはただうつむいて唇をかんでいた。
「いや、そうだ。お前はヘンリー三世の伝令。我がフランク王国にいやらしくも触手を伸ばす輩。無事に帰す必要はない。そうだろう、ジャン。今や、シャンパーニュは我らの側にある。フランドルもだ。ロトロア伯の機転で背後の憂いはない。ヘンリー三世への返答として、伝令の生首を届けるというのも古風でいいではないか」
覚悟の上とはいえ。
ロイが牙を向ける相手は国王という毛皮を着込み、権力を牙として持つ獣。静かに山野に溶け込み隠れていた雪上の白い野兎には対抗手段などない。
「陛下、それこそイングランドを敵に回すことになります。あまりにも残酷でございます」
その場の全員を代弁したのは、ランス大司教だった。
「ロイ様、どうかお考え直しください!貴方様がこれまで通りこの王宮で静かに暮らしてくださるなら平穏に済まされましょう。イングランドに踊らされ、王族同士がいがみ合うなど、ヘンリー三世公の思う壺です」
ロイはゆっくり立ち上がった。
「それは違います。私が自ら志願したのです。ヘンリー三世陛下は私の命を助け家族として受け入れてくれた。側に置き役目を与えてくださった。それはこの国にはないものです。私はヘンリー三世陛下のもとに帰ります」

ルイが「捕えよ」と。言葉に出して命じても、衛兵はすぐには動けない。がちゃがちゃと重い金属音を響かせルイは高さのある椅子を降りた。剣を、歩きながらゆっくりと抜き放つ。
ふう、と息を吐き。立ち上がったベルトランシェがロイの肩に手を置き、「どうか、お許しを」と囁きその両手を封じた。
ロイを抑える騎士、そこに黄金の剣を突き付ける、若い王。昼に差し掛かる明るい陽射しが窓から斜めに差しこみ、教会の宗教画のようだ。どこか現実味を失い、皆の思考は麻痺しているかのように静まる。
ロイは表情を変えなかった。
ただ、じっと。自分より少し背の高いルイを見つめていた。
「どうか、国王陛下!」
響く声は、ジャンだった。ジャンは議場の面々に体ごと振り返り、声を張り上げる。
「ヘンリー三世公とノルマンディーを敵に回すのでしたら、ロイ様を人質として残す方が得策ではないでしょうか!単なる伝令ではないのです。ヘンリー三世公はロイ様のために陛下の戴冠式に来られました。ロイ様のために黒馬車を貸しています。どのように役立つかは分かりませんが、殺すのはいつでも出来ます。しばらく生かしておく方が、賢明かと思います」
止められない内に、諌められない間にとジャンは言葉を続けた。
「陛下。人も物も、ただ排除するのでは意味がありません。どう捨てるのかが意味を持ちます。今ひとつ再考をお願い申し上げます」
ふむ、と。ルイは首をかしげる。ジャンは、今最もルイが素直に耳を傾ける相手。それは議場の誰もが知っていた。
「そうだな、お前はいつもよくものを考えているな。みすぼらしく牢獄につなぐのも、いいかもしれない」
小さく呟くと、ルイ九世は子供らしい笑みを浮かべた。
「分かった。ジャン。ヘンリー三世の軍はどちらにしてもパリに向かっているのだろう。今はそちらに目を向けるべきだな。ベル、それは地下にでも。いいか、間違っても天蓋付のベッドなど与えてはダメだよ。甲斐甲斐しく付き添う女性もだ。シャルルは、そうだね。私の世話をさせる。面白いし」
ぐ、とロイの肩に力がこもるのをベルトランシェは押さえつけた。
その様子がますますルイを喜ばせる。それが分かるから、口をつぐんだままロイは無理矢理静かに息を吐き出した。
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楓さん♪

ぬふ~(=^x^=)ルイ、恐いでしょ?
一方では敬虔な信者であり、教会には多大な貢献をした。
でも、いったん切れたら苛烈を極める。
二面性のあるルイ9世ですので、こんなふうに。
ジャンは仕方ないのです~史実として、ルイの忠臣だったので。
このあと、どうなって行くのか…
うむー、楓さんを叫ばせないといいのだけど(笑)

ぐおおお

やぱり……そういうことになるのか、このドエス国王め。
そして、摂政とは名ばかり、発言力のない母ブランシュ。
彼女がロイに言いはなった言葉は、さすがにこの僕でも腹に据えかねます。いつまでも言いなりでいるか弱い子供だと思うなと。
本来自分がいるべき場所だった。
そこにドエスの弟がいる。
兄に濡れ衣(?でもないか)を着せ、上から目線で罵倒する弟。
何この最悪な感じ悪さ。
「シャルルはは、そうだね。私の世話をさせる。面白いし」
キモッ!
ルイキモッ!をい

ロイがブランシュに会うまでとシャルルに言ったのは、つまりはこういう事態を予見してのことだったんですかね。

それにしてもジャン。本当にこんなドエス野郎の側近でいいの?てか、シャルル寝てる場合じゃないぞ!!!

藤宮さん(^∇^)

次回あたりから、少し沢山更新しちゃいます。
ロイとシャルル。
あまり苛めたくはないんですけどf^_^;)
いや、障害が多いほど恋は燃えるはず!←?

応援を胸に、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますψ(`∇´)ψ
藤宮さんの絵心をくすぐるシーンが目標♪

これから……

ロイとルイ……兄弟と言えど。
いや、兄弟だからこそ深い溝があるのか……。

ロイにとっては、試練とでもいえる場所。
そう簡単に済まされるとは思いませんでしたが、この展開は不安です。
ジャンが助けに入っていなければ、最悪の展開一直線でしたし。

ロイも、そしてシャルルちゃんにとっても、辛い展開が続いて……。

無事に、ここを乗り切れるのか。というより、シャルルちゃんはどうなってしまうのか。

一波乱だけでは終わらなそうで、今からドキドキしてしまいますー。
とにかくみんな頑張って! こっそりエールを送りながら、続きを待っています♪
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