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『La croisade de l'ange 4:Paris』⑬

La croisade de l'ange Chapter 4 『Paris:天使の聖戦』

13

こんな格好でロイには会えないよ、こんな女みたいな。
あれは、いつの記憶だろう。初めてのスカートが気持ち悪くて、修道院を飛び出した。ロイが、水車小屋に。
シャルルは目を開けた。
聞きなれた少年の声に、かつてのロイを重ねた。
違うと心のどこかで分かっているけれど、気持ちが弾むのは仕方がない。
はうと息を一つ吐き捨てて、シャルルは目を開けた。
目の前には。
分かっていた。ジャンがこちらをのぞき込んでいた。
くるりと賢そうな瞳で、笑う。

「おはようございます、シャルル」
返事の代わりにシャルルは口を尖らせた。
「いくら元気な君でも、さすがに応えたみたいですね。もしかして、ロイ様の前でずっと我慢していたんですか」
何をだ。眉間のしわまで追加したところで、シャルルはぐんと起き上がった。
「あれ、大丈夫ですか。体調が悪いことを誰かに訴えるとか、相談するとかそういう思考がないんですね、君は。だからいつも目いっぱい我慢して倒れるんです」
首をかしげ、でも真剣にこちらを見つめる少年。その瞳が何かもの言いたげなのを感じて、シャルルはじろりとそれを睨み返した。それでもジャンは困ったように笑う。なにか後ろめたいことがあるのだ。
瞬時にそう感じ取り、シャルルは髪をかきあげてさらに睨みつけた。
「ジャン、僕らは親友だよな」
シャルルの一撃にジャンはあっさり降参する。
「すみません。僕、あの」
「ジャンはルイ九世のお気に入りで、この戦争が終われば正式にセネシャルの見習いとして陛下の側に置かれるそうだ」
代わりに説明したのはロトロアだ。はい、と弟分ジャンは兄貴分ロトロアに呼応して見せる。
「で、それじゃないだろ。何か僕に言わなきゃならないことがある、だろ」
シャルルが腕を組んで睨めば、ジャンは縮こまって溜息を吐く。
「そこは自分で言えよ。俺はその場にはいなかったしな」と、ロトロアが突き放し。
「あの。ええとロイ様はクリア・レギスで、ヘンリー三世陛下の伝令を果たして、今。その、地下牢に」
ジャンは結果だけをとにかく口にした。
「ち、地下牢だって!?」
シャルルは弾けるように立ち上がる。その伸ばした手の先はイタチ剣で。寸前でロトロアが腕をつかんだ。
「まて、どうするつもりだ、お前。理由も聞かず走っても意味はないぞ」
シャルルは全身で振り切り左手で剣をつかむと、怒鳴った。
「理由なんか要らない!地下牢がどんなところか、僕は知ってる!ロイが、そんなところにロイがいるなんてダメだよ!死んじゃう!」
助け出す!
ロトロアのわき腹にくるりと回し蹴りを放ち、慌ててよけるのを尻目に、シャルルは剣を抱えて飛び出した。
服装はあのドレスのまま。

廊下を走り抜けるシャルル。
後ろにロトロアとジャンがついてくる。
「待て、シャルル、馬鹿が!」
「あ、待ってください!!ロトロア様」
ジャンが懸命に追う。ロトロアはもちろん速いが、それに追いつかせないシャルルもすごい。ドレスの裾をまくったまま走るシャルルの後ろ姿は、時折目をそらしたくなるほどジャンの心をくすぐった。一人遅れ気味のジャンが二人に追いついたときには、シャルルは道を間違えたのか食糧庫の前の行き止まりで立ち往生。
「落ちつけ、シャルル」
獅子の子を追い詰めたロトロアは、なだめすかすように両手をあげた。
「地下牢はどこだよ!ロイは、病気なんだぞ」
咳き込む姿を思い浮かべ、シャルルは何度も瞬きする。
「教えて欲しければまず、部屋にもどれ」
「嫌だ!いやだよ!」
切なげなシャルルの声に、ジャンはぎゅ、と拳を握り締めた。シャルルは剣を抜いている。
あのパリの警備線で見た、寄り添うシャルルとロイ。ジャンの中に、二人は愛し合っているのだと印象付けた。

「なあ、シャルル、お前俺に剣を向けるのか?」
「なんで、ロイを護ってくれなかったんだよ!ヘンリー三世陛下に頼まれただろ!」
ロトロアは肩をすくめた。
「ヘンリー三世が俺にくれたのは馬車一つだ。ルイはランをくれたぜ」
そういう問題なのか。あきれて開いた口から言葉が浮かばないシャルル。その間を補うように。鈍い音と供にロトロアが倒れた。
「ジャン!?」
その向こうに鞘ごと剣を振り下ろしたジャンが。強張った表情で立っていた。
「お前、なんで!?」
「し、シャルル、いいからロイ様と一緒に逃げてください。陛下はロイを殺すつもりです。ずっと前から、ロイを憎んでいて」
シャルルの表情が引き締まった。
「知ってるよ。ジャン、ロイはルイに毒殺されかかったんだ。お前がくれた薬草をすり替えて」
「ええ!?」
「だから、だから。ロイのそばを離れたくないんだ!地下牢の場所を教えろ!」
「この先の突当たりを右に行くと階段があって、下りれば北西を担う塔の足元です。その下に地下牢があります。宮廷内の警備は厳しくないけど、代わりに城の周囲で軍隊を編制しています。ノルマンディー軍がパリ郊外の警備線に到着して国王軍とにらみ合っているという話です」
そこで少年は、いったん言葉を区切った。
ふと、小さく息を吐いて、「シャルル、お別れです。ここから先、僕は何もしてあげられません。だから、どうか、無事で」
「ジャンは。どうするんだ。逃がしたのがばれたら困らないか?」
シャルルに殴られたことにしますし、とジャンは笑った。
「僕はルイ九世陛下にお仕えします」
しばらく、間があった。シャルルが、今のジャンに言える言葉は少ない。
「わがままで、残酷だ」
「ええ。でも、お側にいて国が動くさまを見てしまったんです。一声ですべてが動き出す。国を治めるという意味を感じてしまったんです。それは、なんていうか。感動なんです。僕はルイ様のお側にいて、政に力を貸したいんです。もっといい国に、もっと皆が豊かになれるように」
「ルイの暴走を、止めるとか?」
「まあ、そういうことも。あるかもしれません」
ジャンはくりくりと目を輝かせていた。
いつか立派なセネシャルにと、頑張ってきたジャン。シャルルとは選ぶ道が、見ている視点が違うのだ。シャルルには目の前の一人が大切だけれど、ジャンは将来の国が大事なのだ。わずかに、別れも合わせて寂しさが生まれる。

親友は僕とは違う道を行く。

「じゃあ、だとしたらさ。ジャン、お前はこの国に必要な人間だな。僕はごめんだからさ。国なんかどうでもいいんだ。ロイを助ける」
「ええ。君らしいです。気をつけて」
「ああ。なんていうかさ。ジャン。お前に出会えて、よかったよ。いずれお前が活躍する噂が聞けるのを、楽しみにしてる」
ジャンのくるりとした大きな目が二度、瞬きした。穏やかな笑顔で、大人のふりをし続けて、いつかジャンは本物の大人になるんだろう。
「さようなら、シャルル」
シャルルはふわりと駆け出し、ジャンの脇をすり抜けた。その風、ランプに透けた金の髪、獅子の子のような身軽な姿。
ジャンは、廊下の先の階段に消えるシャルルを見送った。
そのすぐ後を追うように、白い獣が走っていくのを見つけ。ジャンは「頼むよ、クウ・クル」とつぶやいた。



地下。
じめじめする、あの独特な湿った空気。嫌なことを思い出しながら、シャルルは階段をゆっくり降りていった。削ったままの岩肌が残る壁、足元はかろうじて調えたと分かる程度の石段になっている。
それも、ところどころ壁から染み出る地下水でぬれていた。
セーヌ川が近いから、それかもしれない。シャルルはそんなことを考えながら、剣を腰に結わえ、ケープの下に隠した。牢の入り口には、きっと衛兵が立っている。

想像通り、二人の衛兵が長槍を片手にじっとしていた。扉は鉄格子になっている。その奥にまだ通路が続いているようで、ロイの姿を見つけることは出来ない。
壁にともされた松明の油の匂いが、かすかに届く。

衛兵二人はすでにシャルルの存在に気付いているようだが、なぜか槍を構えることもせず、じっと見ている。
なんだろう。
また一歩階段を降りようと無意識に歩を進め。シャルルは見事にドレスの裾を踏み付けた。
「わ!?」
すてん、と転ぶ。
さっきから気をつけながら下りてきたのに、衛兵が気になって失敗した。
「ああ、もう」
石段を二つほど滑り落ちた尻が、鈍く痛んだ。
足元をからかうようにぐるりと回るイタチを睨む。
「おい、大丈夫か、お前」
座り込んだまま見上げれば、衛兵の一人が笑いながらシャルルに手を差し出していた。

「何か用事か?女中がこんなところまで降りてくるなんて怖かっただろう」
優しげに笑う髭の男は、シャルルを助け起した。
ああ、そうか。この格好だから警戒されてない。
「す、すみません。ありがとうございます。あの、お気の毒です。こんなに優しい方たちなのに」
「え?」
髭の男は驚いて首をかしげた。
「よくない流行り病が宮廷内で見つかったんです。原因が今ここにいる囚人らしいというので。清めるために大聖堂から司祭様たちが来られます。お二人は多分病にかかっていると思いますので、そのまま大聖堂の中の施療院に引き取られるということで」
「お、俺たちが!?」
シャルルは神妙に頷いて見せた。
「身分の高い方々は、近寄れませんので私がお伝えに参りました。ここで私が司祭様たちをお出迎えします。あなた方は出来るだけ早く、大聖堂へ。途中誰かに声をかけられても、近づいてはダメですよ、あなた方のせいで誰かが死んでしまうかもしれないのだから。死に至る病ですが、あなた方も急げば間に合うかもしれません」
「ま、間に合うって、おい?間に合わなかったら、なんだよ」
シャルルはケープの裾に顔をうずめてみせる。
「それはそれは、ひどい亡くなり方だそうです。とても、私の口からは」
「そういえば、あの囚人、咳ばっかりしてなかったか」
「そうだ、してたぜ。おい、行くぞ!大聖堂で薬を貰うんだ」
お前、これが扉の鍵だ。
そういって髭の衛兵が、鍵束を投げてよこした。
二人は慌てふためいて階段を昇っていく。

「ばーか」
小さく呟いて、シャルルは扉を開ける。
ドレスも役に立つ。大体、男は女には気を抜く習性があるんだな。女をいつも馬鹿にしているからだ。
ふとアンの姿を浮かべた。施療院で病人の世話をするのは、シャルルたち孤児と身分の低い僧侶だけだ。結局、どんな教えを説いたとしても司祭たちだって死ぬのが怖いんだ。
なんだか腹立たしくなって、シャルルは手にした鍵束をジャラジャラと振り回しながら進んだ。低い天井、それに押しつぶされたみたいな空気。
「ロイ」
壁にあった松明を器ごと手に取るとランプ代わりにさらに進む。
足元を白い何かが走って、思わず声を上げかけた。
「なんだ、クウ・クルか。おいで、お前臭くなっちゃうぞ」
差し出された手に、イタチは飛び掛るようにしてよじ登る。
ケープの襟元に入り込んで落ち着くと、シャルルは耳元に温もりを感じながらさらに歩いていく。左右に鉄格子のはまった場所が並んでいるのに、人の気配はない。
と、耳元でクル・クルがもぞもぞと身じろぎした。
「え?」
襟から顔を出して、一点を見つめる。
その先にある牢に、シャルルは駆け寄った。
冷たい鉄格子。小さく咳き込む気配。暗がりに何も見えないから、松明を掲げてみる。
「ロイ?」
そっと囁く。何となく小声なのは。間違ったら、暗がりから恐ろしいものが飛び出してきそうな気がしたから。
咳の気配が途絶え、それから歩く靴音。暗がりの牢から近づいて、シャルルの照らした明かりの輪の中に、靴が、服が、そして。ロイが青い顔をして目の前に立った。
「どうして、ここに」
はあ、と。大げさにため息をつきながらシャルルは鍵からそれらしいのを探して、扉を開ける。
「いつも、どうして、から始まるよね。たまには有難うから始まんないかな」
「え、あ」
シャルルの言葉に、ロイは珍しく頬を赤くした。
「ほら、出て。一緒に逃げよう」
開いた扉から先に、シャルルは手を差し伸べる。一瞬延びたロイの手は、つなぐ寸前で躊躇した。
「何してるんだよ。行くよ!」
強引にそれを掴むと、ぐんと引っ張った。
「ま、待って、シャルル。君はもう私とは関係ないんだ、こんなところに来ちゃいけない」
「そういうの、まだ言うのか」
「ずっと側にはいられないって、言ったはずだよ」
「そうかもしれないけど、それは今じゃないよ」
「今だよ」
「どうして!助けに来たんだ!このままじゃ、殺されちゃうぞ」
「分かってる」
「じゃあ、来いよ!」
今のシャルルに遠慮なんかない。このまま逃げれば、きっとロトロアもジャンも、ブランシュ様も裏切ることになる。それでも助けたい。
「だめだよ。いいんだよ、ここで死んでも。ヘンリー三世陛下のお役に立てて、死ねるなら。意味があったと思える」
そういってまた、咳き込む。
掴んだ手がひどく冷たい。シャルルは強引に引っ張り出そうとするけれど、ロイは頑固に動こうとしない。
「僕は!そのヘンリー三世陛下にロイを護るように頼まれてるんだ!だから、一緒に逃げよう」
「ここでいい。私がここで死ねば、ヘンリー三世陛下は開戦の大義名分を得られる」
「だから!そんな犠牲、欲しくないってば!」
「シャルルには分からないよ!いいんだ、もう。だから。君は、ロトロアの側にいればいい。きっと、あの男なら君を幸せに出来る」

「馬鹿!僕は、ロイの側にいたいって言ってるんだ!ロイだって、僕がロンロンと一緒にいるのは嫌だって言っただろ!拗ねてないで、出て来いってば!」
シャルルは牢の中に入り込み、ロイの背中を押して外に出そうとした。
嫌がるロイと押し合いになって、足を滑らせバランスを崩す。
「わ」
ロイがよろめいて鉄格子に肩をぶつけた。そのまま、座り込んだ。石を並べただけの足元は、予想していたよりは乾燥していた。ざらざらとした感触にロイは手を二回叩いて汚れらしきを払った。
「わ、ごめん!大丈夫?痛くない?」
覗き込むシャルル。ロイは顔をそらそうとした。扉の前に置いた松明の明かりで、ロイの頬が白く光った。
「ロイ、泣いてるの?」
鉄格子に背中を預けたまま、ロイは座り込んだ。シャルルは抱きしめるように側にいる。
背けた頬、煤で少し汚れているから、余計に涙の跡が分かる。
「見ないで、ほしいよ。シャルル」
「ロイ」
「どこかで、期待していた自分がいた。お母様に、会えたら。無理だと分かっていても、もしかしたら。私の人生が。おかしくなってしまった人生が、元に戻るのかもしれないと。でも」
ロイはうつむいて、唇をかみ締めていた。シャルルもその側に膝をついた。
「もう、戻れるはずはないのに。素直になれない自分が嫌いだったり、お母様の言うとおり卑屈な性格でなかったら愛されていたかもしれないと後悔したり。真っ直ぐな君が羨ましい。私は、情けない人間だ」
「ロイ」
シャルルは目の前のうなだれる頭をギュと抱きしめた。
「ブランシュ様と、会ったんだ?」
こくんと、腕の中でロイが頷いた。
「優しく、してくれなかった?」
そんなことはない、と。首を横に振る。
「ちゃんと、理由を話してくれた?」
肯定を表すロイを、シャルルはさらにぎゅっと抱きしめなおした。
「でも、変えられなかった?」
ロイの返事は抱きしめ返す腕に込められる。
「お母様が、小さく見えたんだ。だから、助けて欲しいなんて言えなかった。あの人は最初から、何の力もない。何とか出来るなら、二年前シャンパーニュ伯に頼んで誘拐などさせない。ううん。最初から父上やクリア・レギスの決定を許さなかった。もし、彼女に力があったなら」
シャルルは黙って聞いていた。
「だから。縁を、切ろうと思った」
「それで、素直じゃないことを言った?」
こくんと頷くから。シャルルはその髪をくしゃとかき混ぜた。
「どうして、お母様は。私を救えないと分かっているのに、あんなふうに笑いかけて、愛しているって言えるのだろう」
「ロイは、言わなかったのか?」
「言ってはいけないと思う」
言ったら。ロイがブランシュに甘えて、お母さん何とかして、と。愛してると言ってしまったら。どうなったんだろう。
シャルルは泣いているブランシュを思い出した。
そう、きっと。ただ泣くだけなんだ。自分の無力をひたすら責めて。ロイの現実は何も変わらない。それが分かるから、ロイは自分からノルフェノで通そうとした。
「ロイは、優しいね。ほんとはお母さんのこと、大好きなんだろ」
ロイの肩が震えた。
シャルルの声も、いつの間にか涙声だ。
「ブランシュ様は、きっと。いつでも愛しているって、言うよ。だってさ、お母さんだから。ロイが、お母さんのこと大好きなように、あの人もロイのこと好きなんだ」
「それでも。側にいられない」
「うん。だから、ロイ。一緒にヘンリー三世のところに、行こう。そうだ、僕がロイの家族になってあげる!僕、家族って欲しかったんだ」
「シャルル、それは」
「なんだよ、おかしいかな?」
「結婚、して欲しいってこと?」
「え!?」

しばらく見詰め合った。
「ち、違う、けどっ、その、その」
「私には、ヘンリー三世陛下がお世話してくださった、婚約者がいるよ。それに。分かっていると思うけれど。多分、あまり長くは生きられない」
婚約者。その言葉はぎゅ、とシャルルの胸を押しつぶそうとする。でも。
「それでも!側にいたい、って。ダメかな。ねえ、ロイ」
だめかな。
うつむいたシャルルはぽたりと落ちる涙が、その瞬間だけ明かりに煌くのを見つめていた。涙でぼやける視界をぬぐった。
分かってる、身分が違う。結婚なんかできない。それでも、僕は。
「いいんだ、ロイが幸せならさ。僕を近衛騎士にしてくれよ!そうして、ずっと護ってやるんだ。ロイ、お願いだよ」
「それでシャルルは、幸せなの?それでいいのかい?」
「いいよ!自分が何のために生まれたかは、僕もよくわかんないけどさ。何のために生きるのかはよく知ってる。僕は、ロイのために生きたい」
「君がつらかったり傷ついたりするのは嫌なんだ。君が」
好きだから、と。ロイの小さな声が聞こえた。その時にはもう、ぎゅ、と抱きしめられていた。
「僕も大好きだよ、ずっと」
冷え切っていると思っていたロイの体が、こんなに温かい。
「ロイは温かいね」
「君がだよ」
顔を上げれば、目の前にロイの瞳。睫にはまだ涙が残っている。
「シャルル、本当にいいの?何もかもを、私以外のなにもかもを失うかもしれない」
シャルルはこくんと頷いた。

もともと、僕は何も持っていない。
ロイを探して、ロイを守って。生きていく、その目的以外には。

頬を包まれて、見上げたまま。シャルルはそれと気付いて眼を閉じる。
ロイの唇が、そっとシャルルに触れた。
キスは、これまでのどれとも違っていた。こんなにも胸が躍っているのに。頬が熱いのに。どの瞬間も逃さないように気持ちのすべてがロイに集中する。
髪を撫でられると心地よくて、シャルルはくふ、と喉の奥で鳴き声を上げる。
始まりと同じ優しさでそっと離れるとロイは静かに息をする。
「なんだか契約みたいだ」
シャルルがそう呟くと、ロイの瞳が細くなって、笑った。
「シャルル、君に会えてよかった」
「うん。側にいる、ロイを護る。クウが証人だよ」
「ありがとう」
後は。
そう、逃げるだけだ。
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楓さん♪

そう、リベンジです。
精巧なるか…ロンロンは…?

この逃避行、これを。描きたかったのですよね~。

シャルル、いいでしょ?可愛いでしょ?
ぺろぺろは問題ですが(笑
なでなでくらいなら許すかな…(誰が?

ロイもやっと、素直になれましたし♪
二人の逃避行、見守ってやってください♪

おふああああ

こんばんは。
すっごいいいですね、この回。
いやー、ちょっとうるっちゃいましたよ。

>自分が何のために生まれたかはよくわからないけど、何のために生きるのかはよく知ってる。

もうたまりません。
ペロペロしてあげたいです(キモい

そして再び逃げるんですね。
あの時敵わなかった、護れなかった約束を、今果たさないでいつ果たすのか。近衛兵にしてくれよ、泣き笑いの顔で言った(と思う)シャルル。君ならきっとロイを助け出せる。

ロンロン、今度は手伝え!!!

藤宮さん♪

はい~、ラブたっぷりです♪
ロイの気持ちを語れて、ほっとしていますよ~(^^)

逃避行…
どうなるか。
黙って見逃すはずのない方々が大勢いますから~。

見守ってやってください♪

逃避行……

やっと、心がつながった感じがします。

本当は、何かを変えたかったかもしれない。でも、そうするにはロイも、シャルルちゃんも無力で。

一緒に駆けだした先で待っているものが幸せだとは限らない。けれど、一緒にいられるならそれでも構わないのでしょうね。

ここから先は、誰の助けも期待できない場所なのでしょうが、二人は切り抜けられるのか。

たぶん、簡単には終わってくれないと思いますが……。
でも、ラブがたくさんー♪ 見ていて、微笑ましいです。しかし、それで済ませてしまうほど、みんな単純じゃないのですよね。

ああ……シャルルちゃん、どうなってしまうのか。
不安は残りますが、きっと頑張ってくれると信じています。
頑張れ、頑張って♪
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らんらら

Author:らんらら
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