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掌編小説:冬

さてさて。
初の一番乗り!?

今回のテーマは「冬」

いつもの通り、1000文字以内の掌編小説です♪


『冬』


このままでは勿体ないね。
そう言われた。

美術部の顧問、新井先生の隣で地下鉄の喧騒に揺られながら思い起こす。
新井先生は今年から芸大の講師になった。俺たち美術部も盛り上がり、芸大の新任講師作品展でのおまけ的な若年公募展にこぞって出品した。
俺の作品は評価され、展示会最終日に呼ばれたのだ。
その時、芸大の教授に言われたのだ。

このままでは勿体ない。
言葉の意味を考えると、
「僕には何が足りなくて、それを補うには何が必要なんでしょうか」
と問いたくなる。口を滑り落ちた言葉は新井先生にも届いたらしい。
「あの教授は自宅でも教えているらしい。一度会いに行ってみたらいい」
そう言ってくれた。

「教授に師事するとになると、費用が掛かりますよね」
俺の家は一般的な家庭だ。次男だから自由にしているだけだ。特別な期待を背負っているわけじゃないから、親の出資は見込めない。
先生も分かっていた。
「まずは道を歩いてみることだ。行き先はその後決めればいい。今、お前には歩き出すだけの力はあるんだ」
「歩き続けられるかは、僕次第ですか」
先生は頷いた。
「部活、続けられますか」
「分からん」

地下鉄はふわりと地上に浮上する。通学に地下鉄を使う俺は、この瞬間がいつも楽しみだった。
生き物が息を吹き返す、春の芽吹きを感じさせる。
けれど外は雪混りの雨だった。

「白い、絵を描きたいです。藤田嗣治みたいな生命感のある特別な白で」
「藤田がフランスに残したユキのように、一緒に女まで捨てるなよ」
見抜かれた気がして振り返ると先生は穏やかに笑っていた。
「海外じゃないんだぞ、お前は。考えすぎだ。玲ちゃんが可哀想だろ」

「でも。いいんですか。絵にのめり込んだら、玲を構ってやれなくなる」
「学校に戻れば会えるだろ、俺に聞くな。ほら着いたぞ。画家には生涯描き続けるモチーフがあるものだ。大作にならずとも、スケッチブックを占めている存在がな。そういうのは、大事だろ」

俺たちはホームに降りた。
夕暮れの空は薄暗く、濡れたタイルに反射した蛍光灯の光がやけにたくましく見える。
寒さに一つくしゃみをして俺は鼻をすすった。

「何があっても、必ず春は来る。耐えて見せろよ」
先生が背中を押した。
帰宅途中の学生が改札の前でたむろしていた。知った顔が数人、俺に手を振る。
玲もいた。

玲の華奢な手が、俺に向かって大きく振られた。
人の流れに逆らい、自動改札ですれ違う悲劇を全身で防ぐ。
俺を待ち受ける。




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楓さん♪

ありがとうございます!!

おお、いるか堂、でますか!!
方向性が違う?
楽しみです~~!!

今回はじわっと感じ取れるものを目指しました。
>新井先生の隣で地下鉄の喧騒に揺られながら思い起こす。

こういう文章、つい、書いてしまいます。でも、文法的にはどうなんだろうかとか。考えてしまいます(笑
喧騒に揺られる。国語としては間違っていますよね~。
雰囲気で表現してしまう、それを許してしまう日本語と日本人の感覚が好きです♪

そう、春は近づいています。
今は目に見えなくてもね♪

結果も見えない、その先の状況も想像できない。
けれど、めぐりくる季節と絶え間なく過ぎる時間を心の支えにして
今は進むしかない時も、人にはあるのかな。
そういう感覚は、季節で言うと冬なのだと、思います♪

めりくりです♪

やべっ

こんばんは。
遅ればせながら。汗
てか、やべ、僕もこの前の掌編小説で書いたいるか堂の別エピソードでもと考えてみたりしたのですが、かぶってた!笑
まあ、
僕の場合は時間がなくてプロットもなくて、やむなくあの坊さんに再登場願おうかと考えていただけで、らんららさんとは決定的に方向性が違うんですけどー!なおだめじゃん俺www

>新井先生の隣で地下鉄の喧騒に揺られながら思い起こす。
この一文です。
端的な言葉で風景を切り取る。それだけじゃなくて、そこにいる登場人物の心の動きや仕草もそれとなく伝える。そういう描写が大好物な僕にとって、この一文はたいへん美味にございますーーーぅ!←大奥(知らないか

あとは皆さんおっしゃられている冬から春への揺らぎって言うんですかね。桜の木もあといくらかすれば蕾をつけるのでしょうね。
素敵なお話でした。ありがとうございます♪

chachaさん♪

ありがとうございます!!

ぼんやりとしたイメージで書き始めて、長さもあまり意識せずに仕上げて、それから削りまくりました。
それで、最後、あの一文で終わることにしたんです。
描写のある中盤と表現の密度を変えてなるべくシンプルにして、切迫感というか。時間の経過の感覚を変化させて、瞬間を切り取ったような感じになるかなと。
(でも結局、中盤の描写を削るしかなくなって、違いは少なめになりました…^^;)

藤田嗣治さんのことは以前、雑誌で読んで知っていたので、使ってみました。
白=雪=冬、の連想を期待して♪
(読んでくれる方が、テーマを知った上で読んでいる、ということを利用してしまっていますが…^^)
しっかり深く読み解いてくださって、感謝です~♪

こういう冬か…

こんにちわです^^
冬をこういった形で表すとは…しかもちゃんと、季節の冬ともかけていて。
純粋に、初めの印象は「すごい」でした。

作中に出てくる藤田嗣治さん、調べました。
なるほど、こういった白を目指しているのか、尋くんは。とか。
ユキさんと玲ちゃんを一緒にするな、の意味もうんうんと頷いてみたり。
あれですね。新井先生のような人が傍にいれくれると、生徒はきっと未来を切り開いていける気がします。
やっぱり先生って重要ですよね。私も新井先生のような人と出会いたかった!^^

最後の「俺を待ち受ける」で締めくくられているのが、とっても好きです。
余計な飾りもなく、すとんと心に響く。その言葉に尋の想いや未来が凝縮されているようで…上手い!と拍手を送りました^^(届いてるかな~。笑

素敵な「冬」作品をありがとうございました!
私はまだ話すら浮かばず…今回はやばし、やばしです…@@;
あ、茉莉さんも参加!?賑やかになりそうですね~♪

茉莉さん♪

ありがとうございます!!
そう、そうなんです。こう、はっきりとしない胸の内と、季節、景色を重ねてみました♪
大きな起承転結もないけれど、尋くんの(あ、この中では名前出してない…笑)心情変化をそれに見立てました。
背中を押してくれる、存在。うん~大切です♪
きっと、玲ちゃんを迎える尋くん、めちゃめちゃ優しい顔してますね(笑

この二人、前回の掌編小説から登場していますが、様々なテーマに耐えられそうな二人なので(?)、今後もまた、書いてみたいと思います~♪
茉莉さん、今回は参加なのですね!
わ~いっ!楽しみです♪

No title

冬・・・風物詩としてとらえるのとまた違った意味でとらえるのかぁ・・・さすがだなぁらんららさんー・・・
はっ、余韻に浸ってボーっとしておりました。
冬の次には必ず春が来る、言うのは簡単かもしれないけど、心の葛藤って、なかなかぬぐえるものじゃなくて・・・そんな混沌とした様子がああ、「冬」とつながってるんだなぁ・・・なんてしみじみ余韻に浸っております。
うんうん、kazuさんも言われてる通り玲ちゃんの存在は春だっ^^
頑張れって背中を押してくれる春風だっ!
よし、これを励みに私も頑張るっ><
素敵なお話をありがとうございました!!

kazuさん♪

ありがとうございます!
「冬」というテーマ。

いろいろと考えたのだけど、「雪」だとか「クリスマス」だとか風物詩にしてしまうと厳密には「冬」ではないのかなとぐるぐる考えて。
漠然とした「冬」というものを描いてみました。

ほんとはクリスマスだし~二人でロマンチックにラブな感じでとおもったのだけど…そうなりませんでした(笑

kazuさんの読み、うん。その通り~読みが深いです!

次回は玲ちゃんサイドで挑戦してみたいかなと。
この二人でどれだけアレンジできるか、挑戦なのです~♪

こっ、この方は!

あの方じゃないですか♪
いえ、実は私も夏の人のその後を書いてたりするので、わぁ一緒♪、とドキドキしたわけでございます^^

耐え忍ぶ・冬。雪まじりの・冬。
いろいろな意味の”冬”が込められていて。
地下鉄から地上に出た春の芽吹きを感じさせるその瞬間、彼は教授に師事することを決めて一つの冬から抜け出せたけれど。
でも、絵にのめりこめば玲ちゃんを構えなくなるかもしれないという、冬がまだ続いていて。

でもきっと、彼は春に向けて歩いていけるとそう思いました。
冬を全身で阻止してくれる、玲ちゃんが彼を待っていてくれるのだから。
何度描いても飽きない存在の、玲ちゃんなんだから。
むしろ、玲ちゃんという名の春なのだ←!
頑張って耐え忍んで、その冬が終われば春が待っている!

って、かーなーり、自分的解釈です!
間違ってたらすみませんっ><

本当にすごいなぁと、思って。
一つの言葉で、幾通りもの意味を、その状況を話に組み込んでいて。
らんららさん、本当に凄いです。

うぁぁ、私も頑張るぞ!!
とても深いお話、ありがとうございました!
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